走るナースプラクティショナー ~診断も治療もできる資格を持ち診療所の他に診療移動車に乗って街を走り診療しています~

カナダ、BC州でメンタルヘルス、薬物依存、ホームレス、貧困層の方々を診療しています。登場人物は全て仮名です。

受け入れがたい事実

2016年09月09日 | 仕事
年をとったり、病気や怪我で運転できない時がやってくる。一時的ではなく永遠にだ。車が人間社会の一部になって何年。車の生活に慣れている人は、車なしの生活が想像できますか?車を運転することは許されませんと伝えられたら、まるで死の宣告を受けたかのような反応を示す人は多いものです。しかし、貴方を守るため、そして社会を守るため医療者として伝えなければならないことなのです。

今日もそれをしました。70代後半の彼の免許の更新時期がやってきました。運転局からの手紙には4月に交差点で事故を起こしたことが書かれていました。アクセルとブレーキの踏み間違えとギアがわからなくなって前の車に2度衝突です。免許局からの手紙には普通の身体検査の他にも認知度を調べる検査をするように書かれていました。よく使われるのがMMSEとかMoCA。両方とも軽度から中度の認知症を診断するのに役立つテストです。MoCAの方がセンシティビティが少し高いのでそちらを好んで使います。

で、彼の結果は13/30。正常が26点以上なのでかなり低い結果になりました。しかし彼は体は丈夫なんだと言います。運転には色々な頭の機能が必要です。目からの情報を処理して反応しなかればならないのです。ゆっくり説明しました。

事故以来運転していない彼。運転はしないほうがいいとわかっていたからです。しかし第三者に言われるのは全く違うというもの。彼の悲しみが痛いほど伝わってきました。結局彼は受け止めてくれました。車を売らないとね、保険代が浮くな!と。

彼にとって今日は本当に辛い1日になったことでしょう。私も辛かった!





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