走るナースプラクティショナー ~診断も治療もできる資格を持ち診療所の他に診療移動車に乗って街を走り診療しています~

カナダ、BC州でメンタルヘルス、薬物依存、ホームレス、貧困層の方々を診療しています。登場人物は全て仮名です。

親の権利と放棄

2019年09月12日 | 仕事
昨日の続き

彼はアルコール依存で家も失ってしまい、その上元妻に暴力を振るった為親権を失くしました。失くしたと言っても子供と元妻の安全の為の一次的な措置で条件を満たせば、子供の面会を観察下で行い、次第に時間を延長し、観察なしでも可能かどうか審査され、次第に子供との時間を自由に持てるようになります。

しかしお酒がなかなか辞められなかった彼は、面会時間をすっぽかしたり親権取り戻しの逆方向へ向かってしまいました。

元妻も薬物依存が悪化し、住処をなくし彼女も親権を失くしました。子供は一次的にフォスターと呼ばれる、政府と契約がある大人に預けられます。この期間に政府は両親に更生を勧めたり親を中心にケアプランを立てたりします。フォスターが子供を気に入り、一次的ではなく永久的に預かりたいと申し出ている場合、親が親権を取り戻す可能性が非常に低そうな場合、法的に養子縁組に進む場合があります。

久しぶりに診察に来た彼。アルコールを遂に断ち規則正しい生活を送りつつあると言う。ストレスに感じている事はないですか?と聞くと。借金の催促。養育費の取り立てがうるさい。子供はとっくに養子へ出したのに過去の取り分をグチグチと。

え?養子縁組を決意されたんですか?

決意も何も俺には烙印が押されているんだ!と言う。

彼に養子縁組は法的措置で、貴方は親としてのそのプロセスに関与する権利があるんですよ。貴方の知らないうちにプロセスが終わったりはしませんよ、と話す。

あ、分厚い封筒が来たんだ。開けてもないけど。それに親父やお袋のところにも何度も電話が来ているらしい。

それですよ!何も連絡を入れないと放棄したと取られますよ、と伝える。子供の為と思うのか、それとも自分自身に烙印を押してトライしないのか、、、きっと私の患者の多くがこうして親権を放棄してしまうんだろうな、と思った。

子供の安全はもうちろん第1ですが親へのサポートも親子のユニットを継続していくためには必要な事だとしみじみ思いざるをえない日だった。



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