走るナースプラクティショナー ~診断も治療もできる資格を持ち診療所の他に診療移動車に乗って街を走り診療しています~

カナダ、BC州でメンタルヘルス、薬物依存、ホームレス、貧困層の方々を診療しています。登場人物は全て仮名です。

引っかかる

2016年10月01日 | 仕事
久しぶりに再診にきた彼。引っ越しをしたので結構不便な所からバスを乗り継いできてくれている。それ程私に会う価値があるとか。

嬉しいことを言ってくれるじゃん!そして褒めちぎりが始まる。自分のことをケア(思ってくれるとか心配してくれているとか)してくれているのが良くわかる。話も聞いてくれるし診察も説明もきっちりしてくれる。

こう言われると嬉しいもの。難しい患者と呼ばれる人だって、こっちが一生懸命すればそれは必ず伝わるんだ。良かった頑張って、と思った。

そして次に彼は言う。麻薬の処方が欲しいと。抗炎症剤は効かなかった。やっぱり麻薬が必要だと。

彼は慢性的な疼痛が身体中あちこちに。アルコールを含む薬物依存もある。そして過去には酷いトラウマの経験が。コーピングスキルは乏しく、薬物依存が彼の術だ。

麻薬を処方しない理由を告げると、彼の態度はガラリと変わる。どうしてわかってくれないんだ。大量に出してくれとは言っていない。少しだけ出してくれさえすれば良いんだ!それじゃあ他の医者の所に行く!

ゼロとゼロ意外には大きな差があるのだ。他の医者へ行ってもきっと同じ。私だけがこの方針で診療しているのではなく、すべてのプライマリーケアプロバイダーがこの方向ですから。

そうやって出し渋るからストリートドラッグに手を出すんだよ!そうして大勢の人間が死んでいるのに、そこはおかしいと思わないのか?!

だからオピオイドリプレイスメントセラピー(ORT)を勧めてるんです!統計からもあなたがおっしゃることはわかっているからORTを積極的に勧めています。そうしますか?

麻薬依存のリハビリ後にオーバードースで死ぬケースが多いし逆戻りする確率もかなり高い。なので管理下で行われるORTに切り替えて長年をかけて減量する方法が勧められている。依存のリハビリは長くても3ヶ月。麻薬の依存は3ヶ月で解決できるような問題ではないのだ。

ORTに使われるにはメサドン、サボキソン、そして最近はハイドロモルヒネも加えられた。毎日薬局へ行かなければならず首輪をされているようで嫌だ、と嫌う人が多い。自分はそんなものはなくても止めることが出来ると言い切る人も多い。しかしリラプス(元に戻る)する人の方がずっと多いのだ。

全く、、、褒めちぎれば私が言うことを聞くとでも思ったのか、、、、そんな手に引っかかって少しでも喜んだ自分がバカに思えた。この人の言うことを素直に喜べる日はいつなんだろう?



昨夜はかき揚げが食べたくなり、珍しく揚げ物をした。あげた先からつまみ食いが始まってしまいましたが、、、、エビと玉ねぎ、ヤム芋と家で採れた枝豆のかき揚げでした。豆腐のチャンプルーとパプリカの和え物。フルーツぽんちょがデザートでした。美味しい食事は元気の素です。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。