走るナースプラクティショナー ~診断も治療もできる資格を持ち診療所の他に診療移動車に乗って街を走り診療しています~

カナダ、BC州でメンタルヘルス、薬物依存、ホームレス、貧困層の方々を診療しています。登場人物は全て仮名です。

アルコール依存を断ち切る薬

2016年05月08日 | 仕事
アルコールでも薬物でも依存症の治療の第一歩は本人が止めたいと強い意思を持つこと。
そして、ストレスに対する健康的な対処方法を学ぶこと。

依存症の人を依存物に手が届かない所に閉じ込めることが一番の治療だと思う人がいるが、それは大きな間違い。依存しなければならなかった理由があり、そこに治療の焦点を当てなければ、同じことの繰り返しになるのだ。

しかしアルコール依存症の治療で薬物を使うときもある。

昔、昔からあるのがAntabuse と言う薬。これを服用している間にアルコールを摂取すると激しい嘔気嘔吐に襲われる。その反応を経験して飲みたいと言う気持ちを減退させるもの。

最近(と言っても何十年) の薬は服用すると、アルコールを欲する気持ちが減退する薬だ。薬価が高く支払えない人が多いためあまり使われていない薬だ。

しかし以前に書いたようにアルコール依存が高額な医療費をもたらしている現実を受けて、期間限定で政府が治療費を負担することになった。条件はカウンセリングなどで積極的に健康的な対処療法を学んでいることだ。

彼は20代前半ですでにアルコール依存。職も住むところもなくした。治療施設に申し込みを入れて1ヶ月が過ぎる。毎日電話を入れなければならず、それはしている。しかし彼の酒への執着は変わらない。頭ではわかっているけどやめられないんだと言う。彼は家族に大勢のアルコール依存症がいて、そういう大人を見て育っている。遺伝因子も強いのだ。

鬱と不眠の治療もしている。アルコールを飲み続ける限り、鬱は改善しない。

治療施設の入所にはまだまだ時間がかかりそうだから、待っている間にカウンセラーによる治療を始めましょう、と伝えた。後者の薬による治療も話した。彼は今すぐにでも薬の内服を始めたいと言う。

ダメダメ、カウンセラーのセッションが始まるまでは処方しませんよ。やるからと言ってやらない人は沢山いますから。本気で止めたいと意思があれば、カウンセラーの予約を入れて、治療を受けることもできるはず。それを行動で証明できるまでお預けです。

だって、この彼過去1ヶ月の間に診察に来たのは2回。No Show (予約を入れておきながら現れない) が2回。不眠と鬱の薬はとっくにきれていても来なかったのだから、口約束は信じれません。


新しい公園に散歩に出かけました。日差しは夏です。

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