走るナースプラクティショナー ~診断も治療もできる資格を持ち診療所の他に診療移動車に乗って街を走り診療しています~

カナダ、BC州でメンタルヘルス、薬物依存、ホームレス、貧困層の方々を診療しています。登場人物は全て仮名です。

報告の義務と守秘義務

2016年08月20日 | 仕事
以前にも書きましたが、プロとして働くときはプロの団体に属していなければなりません。で、そこにはプロとして働く事に関する疑問や相談ができるようになっています。カナダで働くようになって14年。初めてそのサービスを受ける事にしました。

患者の1人が仕事中に飲酒をするようになりました。1:1でお家でケアをする仕事です。患者は寝ているから気づかないと言うのがその人のいいわけです。その上お酒は患者の持ち物から盗んだもの。何度も繰り返しています。それほどこの人はアルコール依存が酷いという証でこれは正真正銘の病気です。

私はプロですから義務というものがあります。患者に対して、所属しているプロの団体に対して、雇い主に対して、そしてヘルスケアとして公共に対する義務もあります。

私の患者の患者の事が心配です。患者が子供の場合、私には守秘義務を超えて報告する義務が生まれますが、高齢者の場合はその人の病状によってです。先日の診察ではそこまで聞き出せませんでした。患者は2週間後に再診予定です。その際に見極めようとは思っているけど、それまでに何かあったらどうしようと思うのです。

仕事中に飲酒なんてとんでもない!盗難も犯罪!何を躊躇しているの?!と思う方もいるかもしれませんが、私には守秘義務もあるのです。誰に危害を与える状況でないのに、報告をすると守秘義務に背いた事になります。そしてコントロールできない酒への依存を打ち明けてくれた患者との信頼関係も失ってしまう事になります。

しかし、例えば私の患者の患者が夜介助が必要で、でも私の患者が酔っ払ってて、介助がいい加減で私の患者の患者が怪我をした場合、依存を知っていた私に責任が問われる可能性もあるのです。

サポートの医師に相談しましたが、難しいケースと言われ、プロの団体のコンサルタントに相談する事にしたのです。とても親身になって聞いてくれました。その人も難しいケースだわね〜と仲間に相談してから返答してくれました。

カナダの医療訴訟専門の法律家へ相談する事になりました。それと同時に雇用主の法律家に相談する事も勧められました。私の仕事に関する保険はふた口あって、最初に使われるのは雇用主のもの。そして次がプロ団体のもの。だから雇用主の法律家に現時点での事を相談するのが筋とか。

ここまで言ってもらえると安心できるというもの。法律的に報告義務があるかどうかは現時点ではっきりしていないけれど倫理的な報告義務はあるかもしれない。そこから起きた疑問。アメリカほど訴訟ケースは酷くありませんが、訴訟は訴訟。起こらないとは誰も保証してくれません。訴訟が如何の斯うの言う前に、私の判断ミスで誰かが怪我することになるなんて考えるだけでも嫌です。なのでこう言うサービスがある事に感謝しました。医療関連の仕事に高いプロ意識と自覚が生まれると言うのもそういうサービスがあるからかもしれません。



もう一輪咲きました!

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