走るナースプラクティショナー ~診断も治療もできる資格を持ち診療所の他に診療移動車に乗って街を走り診療しています~

カナダ、BC州でメンタルヘルス、薬物依存、ホームレス、貧困層の方々を診療しています。登場人物は全て仮名です。

刑罰の意味

2016年10月07日 | 仕事
昨日参加したのは司法が行う勉強会。と言ってもメンタルヘルス関係。なので司法に限らずメンタルヘルス系の様々な分野の人たちが参加していた。面白いのは分野が変わると同じお題でも視点が変わるという事。刺激的な半日でした。

中でも感銘を受けたのがこの方。11歳の時に警察官である父親が家に侵入した泥棒と格闘になり死亡。大人になり彼女は加害者との面会を願った。父を奪った人。しかしどんな人なのか知りたかったからだ。そして知ったのは加害者が加害者になるまでの歴史。この経験が彼女を大きく変えたのだ。今、彼女はrestorative justice の分野で大きなうねりを作り出している。

restorative justice はグーグル訳によると修復的司法。なんやねん?!って訳が出てきました。加害者のリハビリの一環のようなもので、法廷で下された罰を受けるのではなく、加害者との被害者(個人やコミュニティー)双方の承諾があった場合、面会する事で加害者は被害者から真の罪の意味を知り、被害者は加害者を知る事で加害者も同じ人間であることを知る。お互いが前向きになれる。そんな司法のやり方だ。

彼女は加害者が小さい頃から愛のない環境で育った若者だった事を知った。家に侵入した時は処方薬と違法薬の影響で正常な精神状態でなかった事、少額のお金が必要で押し入った事などを知った。勇気のいる事であったが、面会した事で24年間のつっかえが取れて行ったそうだ。

彼女は言う、今、社会では被害者は苦しみ悲しみを背負っていて、加害者はモンスターと言う固定概念が定着している。その構図で加害者を刑で罰しても、その後に加害者が変わるかどうかはわからない。変わらないほうが多いかもしれない。しかしrestorative justice では罪の真の意味を知る事で加害者が更正できるのではないか。そして彼女自身被害者である事から解放(ちょっと言い過ぎかも)されたような経験ができたと。だから被害者側にも効果があると彼女は信じている。

テレビドラマで出所した後、殺してしまった方のお墓参りに行くシーン。罪の重さを理解して後悔する姿だ。それは刑を受けたからなのか、それとも罪を認識したからなのか?どちらかと言うと後者であろう。極端な言い方をすれば刑を受けても罪の認識がない人は変わらない。そういう事だ。認識するためには刑よりもrestorative justice が効果的ではないか?という事だ。

しかしそれにはとてつもない勇気と労力が被害者側に必要で、簡単ではない。今後どうなるか注目したいと思った。



ブッシュキャンプ地もハロウィンの飾り付けが始まりました。。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。