走るナースプラクティショナー ~診断も治療もできる資格を持ち診療所の他に診療移動車に乗って街を走り診療しています~

カナダ、BC州でメンタルヘルス、薬物依存、ホームレス、貧困層の方々を診療しています。登場人物は全て仮名です。

本来の姿

2020年05月25日 | 仕事
以前、APNの教育を受けたのに、修士を持っているのなら管理職を任せるわ、と実践より管理職へ流れてしまう事について書きました。私がよくここでAPNと書くのは高度実践看護師の事。日本で言えば専門看護師と診療看護師で書いています。

で、アメリカと違いカナダではCNS(日本で言う専門看護師)とNP(日本で言うなら診療看護師)は明確に2つの職種とされていて、高度実践看護のセオリー的な共通項はあっても実践の内容は別物です。超簡単に言えばCNSはEBPを実践に反映させる指導者で、NPは診療技術を持った臨床家。

と前置きが長くなりましたが、時折見聞きする、看護師の質の確保の役割を担っている診療看護師の活動を聞くと、私はんんんんんん〜と首を傾げてしまいます。

カナダではCNSはAPNでも看護師免許のみ。NPは看護師免許の上にNP免許を保持していなければなりません。以前書いたように絶対的医行為に当たる診断と治療をするからです。なのでNPはとても特殊な看護師の分類となります。

そしてカナダではCNEと呼ばれる看護教育を専門とする看護師も存在し、CNSと共同し手順書のアップデート、看護システム改革、教育全般を担っています。何故ならCNEもCNSも看護師だから看護師の臨床教育は看護師によって行われるのです。NPは臨床でも大学院でもNPの教育をする事はあっても看護師の教育はしません。診療ができる特殊な技術があるのですから、NPを看護師教育に使う事は、NPになるために費やした時間と費用と免許を無駄にさせるからです。日本では看護師のアセスメントスキルを上げるために、とも聞きますが、NPは絶対的医行為を行うための必要なアセスメント技術を持っており、看護師はそれを行う職種ではないので、NPレベルのアセスメントスキルを持つ必要はない。看護師は看護師として必要なアセスメントスキルがあれば良く、それはエキスパート看護師に学べば良いのです。

日本にはCNEやCNSがいない、もしくは機能していないのもよくわかります。だからと言って診療看護師を看護師教育に使うのは効率的な事なのでしょうか?いつも思うのですが日本の看護界はコストパフォーマンスを考えずに何となく物事を進める人が多いような気がします。もしくは診療看護師のポテンシャルを理解してないから、とりあえず的にしているのか?それとも診療看護師自体にビジョンが欠けているのか?

諸外国のように絶対的医行為をするために作られた職業ではないから、も理由にあると思います。しかし法律が変わらないから、と待っている間に本来の道筋から離れているところで満足していれば周りも次第に診療看護師の使命を誤解するのではないでしょうか?

環境因子によってやりたい事ができない時にしなければならない事は一時的に妥協策をしている旨を忘れない事です。そして環境因子を変えるためには何をするべきか活動を続けることです。そうでなければ周りに流され、本来の姿を見失う事は容易く起こってしまいますからね。新しい職業の開発期には一人一人の言動がその後の発展に強く影響を与えます。それを忘れないように。


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