あああああ、救われたと思った日。
彼女を2度診察した。両方麻薬依存の治療薬を始めたいと。しかし2度も毎日の服用の薬局へ来ず、再診にも来なかった。そんな彼女についてお役所のお偉いさんから連絡をもらう。2日後に母親のところへ行けるように列車の切符をアレンジしたから麻薬依存の治療薬を処方して欲しい。ちゃんと列車に乗り、薬もその時に渡すから、と。
彼女のOATチョイスはメサドン。効果的な容量に持って行くには数週間かかります。2日で出来ることではありません。しかしこのお役人は脅してきます。
目的地に着くまで列車の行程は5日間(カナダはでっかいですからね。西海岸から東に向かうとこんなもんです。彼女はパスポートがないので飛行機の載せられないと)。旅行中に麻薬の退薬症状で苦しむ。そうなれば、この計画が失敗する可能性も、と。
処方できるのは初期処方の容量のみ。それ以上はどんなに脅そうとできません。それでもないよりマシだとお役人は言います。
しかしこれは大ごと。彼女の事をよく知らないし、信頼できるような行動は一度も見たことがない。誰が彼女が5日分の薬を一気飲みしてオーバードース(OD)しないと保証してくれるんだ?彼女の不注意で麻薬が他の人の手に渡りその人がODしないと?空き瓶を不注意に残し他の乗客、特に子供が口に入れてODしたら???それほどメサドンは少量で致死量に至る危険性の高い薬。それを信用できない彼女の手に渡せる?
しかし母親の元へ帰してあげたい。彼女に出来るだけのことはしたい。もちろん私だって思いはあります。しかしこれは危険性が高すぎる、、、自分なりに危険性とハームリダクションの面ではどうか?と色々考えた。彼女の立場で、そして自分の立場も。なにせ上記の事が起これば免許を取り上げられる可能性はとても高い、、、、
で、こちらを通して薬物依存の医師に相談する。絶対処方してはダメと言われた。他者の意見を聞くとかっちり自分の気持ちが固まる。
おかげで患者に押されても、お役所の人にひつこく押されても、きっぱり断る事が出来た。次は計画を立てている時から、受診できるようにサポートしてください、と伝えた。他人の不完全な計画の尻拭いで自分の免許を危険にさらすのは賢い行動とは言えませんから。退薬症状は苦しい症状ですが、それから死に至ことはありません。しかしメサドンの誤飲は死に至ります。密室列車の5日間がミステリー旅行になってもらっては困ります。お役人さんも良い勉強になったでしょう。
良かったー。相談しておいて。