もじもじ猫日記

好きなこといっぱいと、ありふれない日常

「家族を想うとき」

2020-01-20 23:30:28 | 映画
2020.1.7

今年一本目。

そもそも
職歴からも要領が良くないことをみてとれるのこの父親は
どうやってこの仕事にたどり着いたのだろう?
個人事業主という聞こえの良さとは正反対のひとつ幾らの宅配ドライバー。
冷酷無比と呼ばれることに躊躇しないボス
殺気立った朝の職場
車を買うために売り払った妻の車
自分次第で稼げるという、蜘蛛の糸ひとすじ程の希望にしがみついたのだろうか。

仕事に使う足を失くした妻は
訪問介護先にバスで通うしかなく
移動の時間は賃金に換算されないうえ
訪問先の人々に淡々と接することが出来ず契約時間をオーバーし
子供と過ごす時間が無くなってしまう。

父親は
かつて手にしていた自分達の家を買うことができれば
元の家族に戻れると信じることで自分を支えているようだが
それがとてつもない枷になっている。

思春期の息子との諍いが増えたことも
賢い娘が無表情になってゆくのも
妻との口喧嘩が頻繁になったのも
取り戻したいものの為と新たに始めた仕事のせいだ。
逆恨みの暴力にさらされたのも。

制裁金を要求するボスの冷酷さと人を人と思わない無慈悲さを持たない者は
はいずりまわって生きてゆくしかないのか?

今ほど通販が普及していない昭和に
知り合いがお歳暮の配送を仕事にした時も条件がほぼ同じだが
携帯電話も電子機器も無い時代だったので
追い立てられ方が全く違うのだろう。

ケン・ローチは現実をそのまま見せるから
逃げ場が無くて辛いのだ。
自分もここに描かれる階層に属するから。
コメント
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