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で、「つぐみ」ですよ、「つぐみ」。
グリム童話集の初版は、いまから 200 年以上前に発刊され、その後は版を重ねるごとに中身が削除されたり別の話に置き換えられたりして、いま我々が手にする「グリム童話集」といわれるものは、第7版に相当するものだそうです。
となると、「初版には載っていたが後で削られた作品群」が、どうしても気になります。
探してみると、近所の図書館にありましたよ、「グリム童話集『初版』の和訳本」が。
借りて読んでみて、削られた理由がよくわかりました。つまらないか、すでに他の人が紹介している作品に酷似している、この2点です。意外にも「残酷すぎて削られた」ものは、少なかったですね。
今回の「つぐみ」は、原題を「すぐに金持ちになった仕立て屋の話」といい、ハードカバーでたった4ページの小品です。
主人公がつぐみを拾うところから始まり、村のすべてが主人公のものになるところで終わります。
これだけでは単なる「人がたくさん死ぬわらしべ長者」にすぎず、おもしろくも何ともない。
そこで「わらしべ」のエピソードだけを借りて、ゼロから物語を書き直しました。つぐみを「ヌシ」にしたのも、主人公がひとりになって以降の話も、すべて私のアイデアです。
はっきりいって「私の作品」といっても過言ではありません。
さすがにそれはできないので、「原作」でも「原案」でもなく「出典」というあいまいなタイトルにしましたけどね。
そしてこの話にはもうひとつ、致命的な欠陥があります。
ちょっと長いけれど、そのまま引用しますね。
↓ここから↓ここから↓
仕立て屋は、みんなが家にいるかどうか、まず窓から中をのぞきました。すると太った坊主が兄さんのおかみさんとならんで食卓についているのが見えました。食卓には焼肉とぶどう酒の瓶が一本のっていました。ドアをノックして仕立て屋が中に入ろうとすると、奥さんは坊主を慌てて櫃に追い込んで、焼肉をオーブンに入れ、ぶどう酒をベッドにしまいこむのが見えました。いよいよ仕立て屋は家へ入っていき、兄さんとおかみさんにあいさつをすると、坊主が隠れている櫃の上に腰を下ろしました。
(白水社「グリム童話集初版」全4巻のうち2巻より)
↑ここまで↑ここまで↑
ね、元の物語では主人公が兄の家に入った時点で、兄は在宅だったのです。ならばなぜ、おかみさんが坊主や料理を隠す必要があったのでしょうか?
しかも兄は櫃(「つぐみ」の中では長持)の中に坊主が隠れているのを見ているはずです。
ならばなぜ、つぐみと交換することを了承したのでしょうか?
これは原書のドイツ語の時点で間違って書かれているのか、あるいは日本語訳の時点で派手に誤訳したのか、現時点ではわかりません(ドイツ語の初版を入手する必要がある)。
いずれにせよ物語としては取り返しのつかないほどの間違いです。もし原書が間違っていたのなら、2版以降で削除されたのも無理のない話だと合点がいきます。
こんな欠陥品を、曲がりなりにも読める(聴ける)ようにした私は、偉い。
誰も褒めてくれないから自分で褒めます。
あーすっきりした。