モウズイカの裏庭2

秋田在・リタイア老人の花と山歩きの記録です。

月山の花図鑑(1)初夏編

2024年07月06日 | 月山/花と山容

(本記事は旧ホームページの古い記事をブログ用に復刻したものである。)

東北には花の名山が多い。敢えて優劣をつけるならば、
世界的にも他の山では見られない
固有種が無茶苦茶多い点で、
東の横綱は早池峰山だろう(後になり秋田駒ヶ岳を入れなかった点を反省)。

対する西の横綱は、鳥海山か月山か迷ったが、個人的には月山とした。

肘折温泉入り口付近から望んだ月山。2018/05/27



理由は花の種類数、量がとにかく多い点。

また(朝日飯豊のように)難儀しなくても、多くの花が見られる点も評価の重要な要素だ。
いくら珍しい花が有ると言っても、

一般登山道からはみ出した場所とか立入禁止エリアだとしたら、
それは絵に描いた餅のようなものだ。

本図鑑は、そういった月山のそれも一般的な登山コースである
羽黒コースと姥沢コースを主体に、湯殿山コースと石跳川流域の一部、
そして弥陀ヶ原木道に限定して見られる草花と低木を扱っている。
掲載順は便宜上、開花が早いものからとしたが、
果実や紅葉が顕著な一部の植物はそれが見られる時期にも再登場させている。

なお植物名の同定にあたっては、既存の高山植物関係の図鑑以外に、
伝説的名著、土井信夫・著、「月山の花」(文化出版局)(絶版)をおおいに参考にさせて頂いた。

それでも間違いはあるかもしれない。正確な名前をご存知、
あるいは正確な情報をお持ちの方は遠慮なくご指摘をお願いしたい。


【初夏の花】

年によって幅があるが、概ね六月から七月中旬までに咲き出す花たちを扱ってみた。

ただし開花時期は種類によって、また場所によって、大きな幅がある。
例えば、ミヤマクロユリやミヤマシオガマのように、
特定の限られた期間にだけ、判で押したように咲くものもあれば、

ハクサンイチゲのように、六月上旬から咲き出し、
七月には終わったかと思うと、ダラダラと晩夏や秋に二度咲きするものもある。

雪田に特有なヒナザクラなどは、六月だろうが、九月だろうが、
生育地の雪が融けさえすれば、フレッシュな気分で咲き出すので、こうなると始末に終えない。

ハクサンイチゲの群生。2015/06/07



ハクサンイチゲ。
咲き出したばかりの姿。
2015/06/07  
 


(右上)ミヤマクロユリ

右隣に咲く地味な花はタカネクロスゲだろうか。2015/07/05


クロユリ(厳密にはミヤマクロユリ)は月山の名花、看板のように思われているが、最近はとても少なくなった。
その理由は盗難や生育地への踏み込みなど人為的なものかと思っていたら、
意外にもネズミの食害によるものらしい。

なお生育場所は山頂神社の西側エリアに限られていることから、
本来の自生ではなく、近世に修験者などが他の高山から移植したものではないかとの説もある。

東北では、クロユリのある山は極めて少なく、他には焼石岳や飯豊山くらい。
ただし簡単には見つからない場所のようなので、

一般人が簡単にクロユリに会える場所としても、月山の生育地での早期回復を祈っている。

手持ち写真の中に、いっぱい咲いていた頃のものが数枚有った。
その写真をラストの頁に並べているので、興味のある方はどうぞ。⇒ こちら

ミヤマシオガマ 2015/07/05



初夏の月山のもうひとつの愉しみは、色鮮やかなミヤマシオガマの存在だ。

この花は東北では、早池峰山、羽後朝日岳、焼石岳、船形山、そしてこの月山だけと聞く。
後出のヨツバシオガマとの区別は開花時期、葉の形や付き方、花の形だ。
早池峰山山頂部ではミヤマシオガマとヨツバシオガマが混生シーンがあるが、
月山では生育場所が微妙に異なり、
開花はヨツバシオガマが遅いので混生シーンは見たことが無い。

ミヤマウスユキソウ(ヒナウスユキソウ) 2020/06/22



ミヤマウスユキソウ(ヒナウスユキソウ)もエリア限定色の強い植物で、東北地方の高山のみ。

奥羽山系では秋田駒ヶ岳のみ、日本海側は鳥海山から月山、朝日連峰、飯豊連峰まで。
群生規模の大きさでは朝日連峰には敵わないが、

月山はそれに次ぐくらいの規模ではないかと思っている。

ミヤマキンバイ 2020/06/22



ホソバイワベンケイ 2015/07/05



ヤマガラシ(ミヤマガラシ) 
2015/07/05
 
 

(右上)ウズラバハクサンチドリ 2016/07/16


月山にはふつうのハクサンチドリの他に、葉にウズラのような斑点の入ったものもよく見かける。
斑点が薄いなど、中間的なものもあり、ハクサンチドリとの線引きは難しいが、
花付きはやや疎らで丈が低い傾向があるように思う。

チングルマ 2016/07/16



イワカガミ 2015/06/07



イワウメ 
2015/06/07



いずれも代表的な高山植物。
チングルマやイワカガミは多いが、イワウメは月山では比較的少ないように感じる。
岩壁の場所を登山道が走っていないせいもあるだろう。

ヒナザクラ 2016/07/16
   


(右上)ミツバノバイカオウレン(コシジオウレン) 2015/07/05



ミツバノバイカオウレン(コシジオウレン)は、秋田県から石川県にかけての日本海側高山限定の花だ。

ヒナザクラ同様、雪田地帯に特有で、開花は生育地の雪が融け次第。
よって真夏以降に咲くものも見かける。

なお月山には近縁のミツバオウレンも豊富に見られる。

シラネアオイ 2015/06/07  
 


(右上)エゾイチゲ(ヒロハヒメイチゲ) 2015/06/07


エゾイチゲは北海道に多いアネモネの一種だが、本州では何故か月山にだけ分布するようだ。
なお月山には近縁のヒメイチゲも見られる。

キヌガサソウ(装束場付近にて) 2016/07/16



キヌガサソウは以前なら登山道沿いのあちこちで見られたが、最近は減って来た。
温暖化の影響でササに圧迫されたのか、理由はわからない。


ゴゼンタチバナ 2015/07/05
 
 

(右上)ツガザクラ 2015/07/05


アオノツガザクラ 2015/07/05



ツガザクラの仲間は、月山には三種類ある。
量的に多いのは、アオノツガザクラで、初夏から盛夏にかけての長期間、どこかしらで咲いている。
ツガザクラは山頂部で僅かに見られるだけで、
(北アルプスで見かけたものよりは)丈や花がとても小さい。

エゾツガザクラは月山が南限と言われる。
こちらも量は少なく、姥沢コースの限られた場所でしか見られない。
北海道のものに較べると、花色が淡い。

エゾツガザクラ(エゾノツガザクラ) 2016/07/16
 


(右上)ハクサンシャクナゲ 2015/07/05


ウラジロヨウラク 2016/07/16



マルバシモツケ 2015/07/05
 

(右上)ミヤマホツツジ 2016/07/16

マルバシモツケやミヤマホツツジは場所により、八月以降も咲いている。

比較的開花時期の早いものでは他に
ショウジョウバカマ、ミネザクラ、ハクサンハタザオ、コバイケイソウなども見ているが、写真は省略。


月山の花図鑑(2)盛夏編」へ続く。

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カテゴリー「鳥海山/祓川」の目次

2024年07月06日 | 鳥海山/祓川

(記事の配列は訪ねた年に関係なく、月日の順に並べ、降順とした。)

深まる秋の鳥海山康新道往復・後編。(2019年10月16日)

深まる秋の鳥海山康新道往復・前編。(2019年10月16日)

New 2023年10月14日、鳥海山北面紀行(4)

New 2023年10月14日、鳥海山北面紀行(3)

New 2023年10月14日、鳥海山北面紀行(2)

New 2023年10月14日、鳥海山北面紀行(1)

鳥海山・祓川斜面で紅葉狩り(2021年10月10日)

鳥海山祓川ルートは紅葉してるかな。後編。(2022年10月9日)

鳥海山祓川ルートは紅葉してるかな。前編。(2022年10月9日)

秋の日に急遽、また鳥海山。(2021年9月29日)

紅葉の鳥海山康新道。後編。(2015年9月27日)

紅葉の鳥海山康新道。前編。(2015年9月27日)

終日晴天、鳥海山山頂まで。後編(2021年9月20日)

終日晴天、鳥海山山頂まで。前編(2021年9月20日)

鳥海山祓川周辺の花(2022年9月5日)

鳥海山祓川ルート途中挫折(2022年9月5日)

New 晩夏の鳥海山祓川ルート3(2023年8月30日)

New 晩夏の鳥海山祓川ルート2(2023年8月30日)

New 晩夏の鳥海山祓川ルート1(2023年8月30日)

晩夏の鳥海山・祓川から。3(2021年8月17日)

晩夏の鳥海山・祓川から。2(2021年8月17日)

晩夏の鳥海山・祓川から。1(2021年8月17日)

久しぶりの鳥海山、ただし途中まで。後編。(2013年8月11日)

久しぶりの鳥海山、ただし途中まで。前編。(2013年8月11日)

チョウカイフスマを見に鳥海山へ。2(2015年7月11日)

チョウカイフスマを見に鳥海山へ。1(2015年7月11日)

New 晩春の鳥海山祓川(2024年5月26日)



2015/07/11 康新道からツートップ(左・七高山、右・新山)を望む。



2019/10/16 康新道から稲倉岳を望む。



2015/07/11 御田の雪渓を下る。


以上。

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