今朝の日本農業新聞の朝刊。昨日、日比谷野外音楽堂で行われた4000人規模のTPP交渉参加反対
集会の記事が一面で載っています。我が家にとってもTPP交渉参加は大きな関心事です。連日ニュース
などで報道はされていますが、果たして一般の人たちにはどれほどこの危機感が伝わっているのでしょう。
私も会社員の頃は恥ずかしながら農業政策についてとか、自分に直接関係のないことだとピンとこなくて、
考えてみたこともありませんでした。でもミセスファーマーになり、自分で作物を育てるようになってから
農業に関してシロウトなりに分かった事がたくさんあります。
政府は一部品目を関税撤廃対象から除外することを条件に・・・と、交渉参加へ向けて舵取りをしている
ようですが、全ての農産品が守られなければ日本の農業はやがて崩壊してしまいます。おそらく消費者は
輸入野菜が今より安く買えるようになれば、その安値が当たり前になる。だから小売業者は国産品の価格
もそれに合わせなければ売れないと言って生産者から買い叩く・・・という流れになるでしょう。工業製品と
違い農畜産物の価格は市場(買い手)に一方的に決められている現状で、結局は生産者の収入だけが減る。
極端に言えば輸出できる作物を生産していない、日々の野菜などを作って生計を立てている農家にとっての
TPPとは、国が海外に工業製品を売るために自分たちが犠牲になることなんだな、と思ってしまうわけです。
肥料などの必要経費や労力は変らずに収入が減れば、農家を続けられなくなる人が続々出てくるでしょう。
農家が減れば日本の食糧自給率も今より更に下がる。ならば輸入品だけに頼っていて良いのでしょうか?
私はこんなに恐ろしいことは無いと思います・・・“もしも”のときにどうするの??畑は一度荒地になったら、
その後再び作物が育つようになるまでには何年もかかったりするのです。欲しい時に植え付ければすぐに
収穫できるわけじゃないのです。
そして消費者の人たちにこの機会に価格よりもっと考えて欲しいことは、輸入品の安全性についてです。
日本の安全基準は世界でもかなり厳しいほうだと思います。時々野菜から検出される残留農薬が基準値を
上回り全廃棄処分になったりすることがあり、それはそれでちょっと厳しすぎるのではなんて思うこともあり
ますが、そうやって国内の農産物にルールを設けて消費者の安全を守っているわけで、TPP参加となった
場合に関税撤廃だけでなくこの安全基準も国際ルールに“緩和”される事が懸念されているのです。どれ位
の農薬が人体に安全で、どこまで使うと安全ではないのかはハッキリ言ってわかりません。でも考えてみて
ください。たとえばブロッコリーをとっても、今でさえ輸入品のほうがずっと安い事がありますが、国産品より
輸送費などのコストもかかっているはずなのにあの価格で売っても利益があるという事は、海外の人件費
が日本より安いというだけではなく、大規模農場で大量生産されているからでしょう。でも店頭に並んでいる
ブロッコリーには虫一つ喰った跡がありません。それだけたっぷり薬を使っているということですよね。
新鮮で、安心・安全なものには多少虫食いがあってもかまわない、輸入品よりも2倍3倍の値段がついて
いても買うという消費者ばかりなら、日本の農家はこれからも野菜を作り続けることができるでしょう。でも、
このままいけば農産物の価格破壊が起こり、安全性は失われ、そして本当に国産品が必要になった時には
供給できないという状況になってしまいかねない・・・土いじりもしたことがない政治家の皆さんはちゃんと
そこのところを考えてくれているのでしょうか?取り返しのつかない決断を今しようとしているんですよ。
駆け出しながらも農業をやって生きる者としてこれだけは言いたいです・・・今後の日本の農業のあり方に
きちんと道筋を立てないままTPP交渉参加に突き進むことには、ミセスファーマーは断固反対です!