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ある日カッパ姉ちゃんとカメラおじさんの家に一匹の子犬がやってきた。
日々のうつろいの発見と冒険を胸に生きていこう!

こちら、自由が丘ペット探偵局-8-

2008年05月02日 | 投稿連載
 こちら、自由が丘ペット探偵局 作者 古海めぐみ
         8
 上田祐二は、色あせたYAZAWAと書かれた大きな
スポーツタオルに身を包んで、赤いSABUから降りて
くると、濡れたパンツから水を滴らせながら、駐車場を
まっすぐに横切って子供服店キッズローブの裏口へ
入っていった。
まるでトムとジェリーのマンガで間抜けなトムがまんま
と隠れたと思いきや、ブルドッグのお巡りさんに見つか
るときみたいにたっぷり水を含んだ祐二のスニーカーの
足跡スタンプがアスファルト地面にきれいに車から裏口
まで残されていて、いまブルドックのお巡りさんが来た
らすぐに祐二は捕まってしまうだろう。

「またウソばっかり。」
「本当だって。なんで作り話しなきゃなんないのよ。」
ロッカールームから新しいワイシャツで出てきた上田祐二
にスタイリストのサチは、長い八重歯を剥いて噛み付いた。
「すぐ帰るとか言って全然帰って来ないんだもの。会計士
の坂本さん、あきれて帰りました。」
「あの犬さえいなければ、すぐに帰れたんだって。
本当なんだよ。」
シャワーで濡れた髪の毛をYAZAWAタオルでゴシゴシ
拭いて祐二は、少しムッとしてつい大きな声になった。
「・・・・・」
さすがのサチもそれ以上追求できなかった。
「あのー、店長さん。その犬ってどんなの?」
「耳が立っててさ。大きさはシバぐらいで茶色なんだけ
ど背中が黒かった・・・」
十九才の由美は、初めてディズニーランドに行った子供
みたいに生き生きとした目で祐二の話を聞いていた。
「とにかく子犬なんだけど筋肉がものすごいんだよ。」
「それ、甲斐犬じゃないノ?」
「カイケン・・・」
祐二とサチが声をそろえて発音した。
「もしかしたらカワカミ犬かもしれないヨ。」
「カワカミケン・・・」
今度は、祐二ひとりが繰り返した。
「そんなにジャンプ力があるのは、カワカミケンだヨ。
きっと。田舎で飼ってる人いたもん。」
「由美ちゃん、犬詳しいんだね。」
「ただ好きなだけヨ・・・」
「あんな獰猛というか、はげしいというか、野性味たっ
ぷりの犬ってはじめてだよ。やっぱり野犬かな。」
「野犬なんて東京にいるの?」
サチは、YAZAWAタオルを祐二から貰い受けて由美
に仕立て室の洗濯機に持っていくように指示を出した。
「今日の汚れ物といっしょに洗濯機に入れといて。」
「はいヨ。」
由美が出ていくと、祐二は、お客様相談コーナーの椅子
にどっかと腰を下ろした。
そしてメモ用紙にさらさらと絵を描きだした。
その鉛筆を握った祐二の手は、ついさっきの動物を追い
かけた興奮をしっかりと覚えているように力強さと熱と
に漲っていた。
 しばらくしてサチがコーヒーを持って祐二のテーブル
にやってくると、そこに犬の絵が描かれていた。
「あれ。これどこかで見たような・・・」
祐二の前にコーヒーカップを置いてサチが考え込んだ。
「へえ。うめいな。店長。絵。」
由美がレジカウンターから覗き込んだ。
「いや。こんな感じの犬だったんだ・・・」
と祐二が言い終わらないうちにサチが思い出した。
「それ。さっき来たファックスで見た!」
「ああ。ホント似てる。」
由美は、レジカウンターからファクス用紙を取り上げた。
「何?」
祐二が立ち上がって用紙を手に取った。
「自由が丘ペット探偵事務所の・・・」
サチが説明した。
「耳が立って、茶褐色、筋肉質ー。ナナ。6ヵ月、
迷子犬・・・・」
「健太さんの、手配写真か。まあ、似てるといえば
似てるけど・・・」
と祐二が窓の明るいところへファッス用紙を持って行って
自分のメモ犬と見比べて陽にかざした。
急にドンドンドンとはげしくガラス窓を叩く音がした。
びっくりしてサチも由美も祐二も表を見た。
ニヤリと笑って割れるかと思うぐらいガラスを叩いていた
のは、そのファックスの張本人。犬飼健太だった。
「センパイ?」
祐二が呟く間もなく、健太は、店内に入ってきた。
「よお。色男。サウナ行ってメカしちゃって。美女と
ディナーでも行くのかな。」
「いやあ。先輩。」
「なんか、この頃新米カメラ店のデカパイとうまく
やってるらしいじゃん。」
「春ちゃんは、幼馴染ですから・・」
「半額券の補助出して涙ぐましい援護射撃。」
「いいでしょ。」
クスクスとサチと由美の殺し笑いが漏れた。
「またポスター貼ってほしいんだ。」
健太は、由美ちゃんにチラシを渡してソファに座ると、
祐二のコーヒーをゴクリと飲んだ。
「由美ちゃん、まだ続いてるの。こんな店よりタレント
事務所に入ったら・・・」
「そんな、また健太さん。冗談ばかり・・ヨ」
「お笑いのー。」
「チェー。なんだヨ。」
健太がぐうーと由美ちゃんの顔に親指を立てた。
サチがふっと吹いて、由美の手からチラシを取り上げて
健太に報告した。
「このチラシのワンちゃんに店長が今日遭ったって。」
「ええ?ホントかよ。」
驚いて健太が祐二の顔を覗き込んだ。
「うん。よく似てる。」
「バカやろう。それを早く言えってー」
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神楽坂ペコちゃん焼き~シーちゃんのおやつ手帖44

2008年05月02日 | 味わい探訪
フジの連続ドラマ「拝啓、父上様」の舞台にもなり、
若い人が訪れることも多くなった神楽坂。
日仏学院やカナルカフェなど、お洒落なロケーションに事欠きません。
そんな神楽坂で売られているスイーツの代表が、ペコちゃん焼きです☆
形が可愛いだけでなく、安価で美味しい…言うことなし!

コメント (2)
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