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ある日カッパ姉ちゃんとカメラおじさんの家に一匹の子犬がやってきた。
日々のうつろいの発見と冒険を胸に生きていこう!

こちら、自由が丘ペット探偵局-10-

2008年05月16日 | 投稿連載
   こちら、自由が丘ペット探偵局 作者 古海めぐみ
          10 
 テレビドラマにおじいちゃん役で出ているシワシワでぶよぶよの不精ひげの
俳優が昔映画のすらりとした二枚目俳優だったなんてよく聞くが、まさかあの
半次郎じいちゃんがモテたなんて思っても見なかった。
春は、上田祐二と大井町線の等々力駅で別れて、線路沿いのフェンスに停めて
いた自転車のワイヤーキーを外しながら、半次郎の優しかったケンタッキー
おじさんの顔と想像でしかないピカピカに輝く青年半次郎の顔とを思い浮かべ
てガスライトでのマスターの言い振りを思い出していた。
花屋のツルさんだって知らないことをあのマスターは知っている。
おそらくおじいちゃんのモテた話なんてほんの一部のことかもしれないけれど、
でも、私の知らないおじいちゃんを知っている。
私は、おじいさんのことも小学生のときパキスタンにコンバットカメラマン
として行ったきりで帰って来ないお父さんのことも、高校卒業してアメリカの
大学に入学した年に再婚して軽井沢でペンションをはじめた母親の本当の気持
ちも何一つ知らない。自分の父の顔だってアルバムを開かないと最近思い出せ
なくなっている。私は何も知らない。
それでも私は私のことで精一杯だった。撮影のテクニックから奨学金のために
クリアしなければならない英語の物理や社会学の論文試験までこの五年間は、
後ろを振り返る余裕さえなかった。
この自由が丘で祖父の遺産でカメラ店を出しても今日をこなしていくのが
やっとで今家族のことを言われても受容するだけで自分なりに悲しんだり喜ん
だりする余分なノリシロがないんだなあ、と思う。
それに何より自分には上田祐二や犬飼健太さんやイエローストーンで出会った
動物学者マリア・ワタナベ教授ら親切にしてくれる人々がいる。少しクセは
あるけどこの人たちと心が通じ合っているだけでも自分はしあわせだと思わな
くちゃいけない。
春は、商店街ののぼり坂を自転車を走らせながら自分自身に言い聞かせた。
 四月の夜風が、サイクリングフレームに跨ってペダルをこいでいるとひん
やりとしてまだマフラーが欲しいような冷え込みだった。
春の住むマンションは、駅から環八を間に跨いでちょうど山をひとつ登って
降りたところにあって、自転車がないと帰るのがちょっと億劫になる
ロケーションだった。
去年帰国して住み出したときは、トボトボと坂を歩いて二十分強かかって
いたのが自転車を飛ばすと五分で帰り着くので今年に入ってからずっと
自転車を使っているが、ただひとつ夕方早く帰えれたりする時に、
環八の真下に流れている緑したたる等々力渓谷の木道を歩けないのが残念
なことだった。
 だからいつも春は、環八の交差点を渡るとできるだけ渓谷の森にある
等々力不動寄りの暗い道を通った。少しでも森の空気に触れたかった。
今日も春は、同じコースを走っていた。
右側沿道を葉桜が被いかぶさる下り坂の道をスピードを出して春が漕い
でいると、左脇に駐車していた黒いミニワゴン車が目に入った。
そして春が追い越すとそっと動き出していつの間にか春の自転車の後を
ついて来ているのを感じた。
春は、ふり返らず面倒なのでスピードを落して車を先にやり過ごそう
とした。車は、プゥーとクラクションを鳴らして春を追い越し、走り
去るかと思ったその瞬間、速度をゆるめて春の自転車の斜め前に急に並走
して行く手をふさいだ。春は、慌ててブレーキをかけたが避けきれず沿道
の森に自転車ごと突っ込んだ。
次の瞬間春は、菜の花のきついむせ返る匂いにつつまれ、黄色い花弁のつぶ
れた緑の茎と畑の土を首に感じて耳の裏と土の間をトカゲが走って逃げて
いくのを見た。
ちょうど柔らかい菜の花畑に飛び込んだので大きな怪我はしなかったが、
春の足が自転車のフレームシャフトにハマってすぐに起き上がれなかった。
黄色い花粉が舞う畑の中で悪戦苦闘して足をやっとフレームから抜いて立ち
上がろうとしたそのとき、春の目の前に大きな若い男の姿が立ちはだかった。
春は、薄暗い雑木林に囲まれた畑の中で声も出せずに、反射的に畑の斜面へ逃げ
ようとしたがバールのようなもので男に足をはらわれた。
一瞬痛いと感じて次ぎに春の体のすべての感覚が消えたようにコントロールが利かなく
なって菜の花の中へ倒れこんだ。男はシューティングゲームの慣れた連射のような
速さでシャツのはだけた春を羽交い絞めにした。
春は、首筋にハッカガムの匂いを感じた。
静かにしろっ。低い声がぬるい息になった。
そしてバールが徐々に春の細い首に食い込んできた。
ああああああー!男が叫んだ。
春の黒いシャツから白い胸にかけて血が垂れてきた。
うううっとケモノの唸り声がした。

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マックカフェ~シーちゃんのおやつ手帖46

2008年05月16日 | 味わい探訪
恵比寿ガーデンプレイス内にあるマックカフェのメニュー、
どうぶつパン2種類です。
製造はフジパンで、どちらも顔型が可愛いですが、
かなり甘いのでお子様向きかも・・・。
甘いパンだけでなく、動物型の辛いパン~例えばパンダ顔の
肉まんみたいなものとか~もあるといいなと思います。
コメント (2)
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