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ある日カッパ姉ちゃんとカメラおじさんの家に一匹の子犬がやってきた。
日々のうつろいの発見と冒険を胸に生きていこう!

こちら、自由が丘ペット探偵局-11-

2008年05月23日 | 投稿連載
  こちら、自由が丘ペット探偵局 作者 古海めぐみ
           11
息ができなくなって春の両手が首にめり込んだバールを握りしめて激しく
もがいていると、菜の花とは違うナマ臭い匂いがしてうううっとケモノの
唸り声を春は確かに聞いた。
次の瞬間。男はバールを投げ出すと狂ったように暴れ出して、春の体が急
に自由になった。
春が立ち上がって目にしたものは、野犬に腕を噛まれて逃げ惑っている長身
の男の姿だった。春の胸に垂れた血は、その男のものだった。
野犬は腕から離れると、男と対峙してはげしく吠え立てた。
まるでオオカミのような長く鋭い牙とブルーに輝く三角の瞳を恐ろしく光らせてー。
野生の本当の姿というのは、こういう緊張感一色に一瞬にして塗りつぶされる
動物の意志の力を言うのだろうか。夜闇の乱れた黄色い菜の花畑が死という
ものの恐怖に隅から隅までひんやりと支配されている。
男は、咄嗟にバールを拾おうとすると野犬の牙に阻まれて慌てて車の方へ走り去った。
春は、畑をごろりと転がってぐちゃぐちゃになった菜の花の折れ曲がった茎の
ジャングルジムの隙間から恐る恐る格闘の現場を覗いた。
沿道の並木の間に黒い筋肉隆々の野犬が一匹立っていた。ちょうど男のミニワゴン
車が走り去るときヘッドライドがその野犬の全身を闇の中で煌々と浮かび上がらせた。
それは、誰が見ても野犬というより精悍で威厳に満ちた若いオオカミだった。
春は、強力な磁石に引き寄せられたようにそのオオカミを見つめた。
おそらくほんの一瞬車の光に照らされて、すぐに闇の中へ姿を消したのが現実
なのだろうが春の心の印画紙には、その凛々しい野生の生き物の姿が深く焼き
ついて何時までも残った。
あれは、何?
あの、私を救ってくれた若いオオカミは、何者?
春は、泥を振り払い立ち上がって、生まれて初めて本能というものに触れて涙が
溢れてくるのをどうすることもできなかった。
* * *
 次の日。二子玉川の住宅街で32才の飲食店勤務の女性がミニワゴン車に
乗った暴漢に襲われて怪我をしたというニュースが流れた。
犯行時間からすると、春が襲われた三時間後の深夜二時だった。金品を盗られた
という訳でもなく強姦されたというものでもなかった。ただバールで首を絞めて、
女性の長い首に噛みついたり舐めたりしたというものだった。
だから新聞やテレビだと小さな地方ニュースでしか扱われなかったが、春が多摩川
署に被害届けを出したときに、応対した刑事に三ヶ月前に大田区でも中学生の
女の子がやはりバールを持った男に首を舐められたと聞かされて、同じ連続犯の
仕業の可能性が高いと言われた。それから春のシャツについた犯人の血を採取する
ということで警察に提出することになった。帰り際廊下で見送っていたその刑事
が甲高い声で春を呼び止めた。
「ちょっとそのまま。振り返らないで。」
春は、何なのかわからず前を向いたまま立ち止まった。
「あなた、首が長いですね。・・襲われた人はみんなきれいな長い首をしてる。」
「はあ?」
春が自分の首を触りながら、何か言おうとすると刑事は、両手を振って、どうぞ気に
せず行かれてください。有難うございました。と春を送り出した。
 午後遅いカメラ店の開店になって、シャッターが三時過ぎに開けられた。
「ナンだ。そりゃ。首の長い女性ばかり襲う変態か。」
右足を引きずる春をカメラ店の待合ソファに座らせて上田祐二が言った。
「でも怖かった。まだバールで打たれた右足のフクラハギが痣になって痛むもん。」
「いや、だから昨日ぼくが家まで春ちゃんを車で送ればよかったんだ。自転車を駅に
置いてても無理でも送ればよかった・・・」
「私が自転車があるからいいって言ったから仕方なかったよ。まさかあんな男に会う
なんて思ってもみなかったんだもの。」
「いや。悪かったね。ぼくの方が・・・」
「いや、そんなことないよ。」
「それにしても首ナメ変態野郎、捕まえたらただじゃおかないっ。」
「でもあのオオカミがいたから助かったのよ。私。」
「そう、そう。さっきから聞いてるけど、それって何?犬?」
「あんなきれいで凛々しい犬なんて見たことない。きっとオオカミよ。」
「オ、オオカミ?」
「まだ若かったけど、イエローストーンで見たシンリンオオカミに近かった。」
「日本にオオカミが放し飼いでウロチョロしてるワケないじゃん。」
「ううん。あれ、絶対犬じゃないわ。」
「またまた、春ちゃんったら・・」
と瞳を輝かせている春を受け流してカバンから迷子犬のポスターを取り出した。
「これ、健太さんに頼まれたんだよ。どっか貼ってぇ。」
「・・・・・・」
「どうしたん?」
「これ!これよ!」
「何が?」
「このポスターの犬に似てる。私を助けてくれたオオカミ。」
「えええー。」
ビックリしてポスターを蛍光灯にかざして祐二は、見た。

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にゃんどれーぬ~シーちゃんのおやつ手帖47

2008年05月23日 | 味わい探訪
こちらのお菓子、製造は名古屋の会社ですが、購入したのは谷中の
ねんねこ家というお店です。
かわいい猫グッズのお店で、猫の置物やオリジナルのイラスト入り
バッグやTシャツを始めとして、今回の猫型マドレーヌや最中なども
販売しています。
店内では喫茶も出来て、運が良ければ店飼いの猫にも会えますよ☆
コメント (2)
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