今月17日に実施予定のウクライナ大統領選挙の選挙戦も終盤に入りました。インターネットによる情報では、18人の立候補者のうち、現在のところトップを走るのは地域党党首のビクトル・ヤヌコービッチ元首相、それを追うのがユリア・ティモシェンコ首相、その他候補者はこの二人に大きく水をあけられています。特に、ビクトル・ユーシェンコ現大統領は、支持率も4%弱で今回の選挙では殆ど絶望的です。第1回目の選挙では、50%以上の得票率を取る候補はおらず、2回目でヤヌコービッチ元首相とティモシェンコ首相の決選投票が行われると予想されています。
一方、今回の大統領選挙に対して、ウクライナ国民は白けきっているとの報道もあります。5年前の選挙では、親欧米派(NATOとEUへの参加を目指す政治勢力)が混乱の中で勝利し、欧米の報道メディアからはオレンジ革命と持てはやされました。しかし、ユーシェンコ大統領やティモシェンコ首相ら親欧米派(オレンジ派)政権は、結果的にはNATOにもEUにも参加できず、一方でロシアとの関係悪化のため、国際市場に比べてかなり安い価格でロシアが供給していた天然ガスの料金を引き上げられることになりました。 さらに、一昨年に起こったリーマンショックによる経済悪化が追い打ちかけ、欧米からの投資が急速に引き上げられたためオレンジ政権下でのウクライナの経済は疲弊しきっています。現在、一般国民の賃金は下がり、しかし物価は上がり、都市部で失業者は増加し、治安は悪化する一方です。
多くのウクライナ国民が「誰が大統領になっても同じだ、もう誰も信用できない」、そんな気持ちに陥っています。一部の国民は、インターネットで自分の投票権を売りに出しているという報道もあります。
以上は、遠い遠い他国のお話で、日本には関係ないと思われるかもしれません。しかし、ウクライナが混乱して弱体化すると、相対的にロシアの政治力が強くなります。その結果、ロシアはその近隣諸国に強い態度を示し始め、特に、日本には強気になってきます。間違いなく北方領土問題の解決は困難となり、日本が北方領土を取り戻すことは殆ど不可能になるでしょう。一方で、石油や天然ガスが豊富なロシアはそれを手段に今以上に圧力外交を仕掛けて来ると思われます。
大半の日本人にはウクライナは遠い国で関心が持てないということを小生も理解しますが、その無関心さが結果的にロシアから見て日本を扱いやすい国にしているのです。