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説明

摂食障害

2021-01-21 04:15:17 | DSM
摂食障害

危険な徴候

 摂食障害は早期に発見すれば予防できたりまたはもっと簡単に治療できます。次のような徴候のある人は摂食障害になるかもう既になっています。

 神経性無食症

短期間に著名な体重減少
やせ細ってもまだダイエットをする
ダイエットの目標体重に達してもまた新たな目標を作りダイエットを続ける
体重減少の目標に達しても自分の容貌に満足せず、肥えていると訴える
ダイエットグループから孤立して一人だけでダイエットをする事を好む
月々の生理がなくなる
食物に異常な興味を持つようになる
奇異な食行動の儀式化や少量の食物を食べる、たとえば、食物を小さく切り刻んだり、非常に小さな食物を食べる前にすべてその重量を測定する
隠れ喰いを始める
強迫的に運動をする
憂うつな状態が多くなる
むちゃ喰いをし下剤を使う
 

 大食症

むちゃ喰いを繰り返す(短時間に大量の食物をとる)
食物のからだからの排泄を繰り返す(無理矢理の嘔吐、下剤や利尿剤の使用)
ダイエットや運動ををしばしばするが体重は変わらないか増える
隠れ喰いをする
一気に大量に食べるが体重は増加しない
嘔吐をするために長い時間バスルームにはいる
薬物やアルコールの乱用がみられ、盗みを繰り返すこともある
憂うつな状態が多くなる
甲状腺が大きくなっていることがある
無理矢理の嘔吐のために手の甲に傷跡がある
 

危険なダイエット

 ダイエットは危険な流行です。健康のために医者の管理下にダイエットをしなければならない人もありますが、若い人がスタイルがよくなりたいためにするダイエットは不健康であるばかりか時には命の危険を伴うことがあります。ダイエットは2つの摂食障害’神経性無食欲症と大食症’の発症に大きな役割をはたします。十代の女性と女子大学生は特に危険です。摂食障害になる人の90%以上は若い女性です。

神経性無食症

 幸恵は16歳の時に神経性無食症になった。彼女は内気な努力家であり、誰にでも気に入られようと精いっぱいやっていた。しかし、彼女は特に男の子とはなかなかなじめなかった。幸恵は父から10ポンド痩せなかったら男の子とはデートなんかできないよと冗談で言われてから、執ようにダイエットを始めた。彼女はついには強制収容所の捕虜のようにやせ細ってもダイエットをやめようとせず、自分は痩せているとは決して思いませんでした。数ポンドもやせ衰える前に既に生理は止まっていました。無食症がひどくなるに従って食べ物にこだわり変な癖がでてきました。彼女は毎日自分が食べようとするものはすべて台所の秤で重さを計りました。硬いものは細かく切り刻んで、液体は数オンスの単位まで正確に計りました。その食べ物をいくつもの小さな包に分けきちんと1列に並べておいた。彼女は衰弱し疲労が明らかになっても熱心に運動を続けた。階段があるところは絶対にエレベーターに乗らなかった。誰も彼女が危険な状態まできているとは思わなかった。彼女の主治医はしかしついに入院治療を主張した。病院では十分に監視されていたが彼女はまだなおバスルームで何度も座ったり立ったり、膝の屈伸をして運動をした。彼女は数回入院を繰り返し、また外来で長い間個人精神療法と家族精神療法を受けこの問題は解決した。

 幸恵のような事例は稀なものではない。神経性無食症では標準の15%以上の体重減少が認められる。無食症の患者は恐ろしいほどの空腹の苦しみに襲われても、自分を飢餓状態にする。まだよく理解されていない理由で、彼らは体重が増えるのを恐れるのです。食物と体重は彼らのこだわりの的になります。無食症の患者は料理の献立表を集め、自分以外の人のためにおいしい食べ物を用意します。幸恵のように、おかしな食習慣が出現し、他人とともに食事をする事を拒み、不快な体重増加を嫌って激しい運動にふける。この病気の最も目だつところは、やせ衰えてしまってもまだ自分は太っていると思い続けることである。女性では生理がなくなり、男性ではインポテンツになる。

大食症

 清美は18歳の時大食症になった。幸恵と同じように、ダイエットを始めるようになってから彼女の風変わりな食行動が出現した。彼女も痩せるためにダイエットと運動をした。しかし、幸恵とは違って彼女は周期的に大量の食品をとり、自分で嘔吐することによって体重は正常に保っていた。

 清美はしばしばおこりっぽくなる状態と憂うつな状態がかわるがわる生じた。時に、彼女は衝動的に盗みをはたらくこともあった。また、アルコールを飲み過ぎることもあった。彼女はときどき数時間も食べ続けることもあった。

 彼女は食べることしか考えなかった。そして、自分でも自分の行動が理解できなかった。物事がうまく行かない時には無性に甘いものが欲しくなった。一度の数ポンドのキャンデイやケーキを気分が悪くなりお腹が痛くなるまで食べ続けた。そして罪悪観と嫌悪観に苛まれ、自分で嘔吐してしまうのであった。

 彼女は自分の食行動にたいへん悩んで、それを秘密にしていたが、ついに自殺企図という1つの大きな出来事により明らかになってしまった。幸いにもそれは成功せず、清美は病院で回復した。そして摂食障害クリニックに送られそこで集団療法を受けた。そこで彼女は大食症の人にとってとても重要な理解と援助を受けた。

 清美は体から食べ物を排出するために自分で嘔吐をしていたが、下剤や利尿剤を使う大食症の患者もいる。排出のためにどれもこれも使う患者もいる。神経性無食症の患者の約半数は大食をしたり食物を無理に体から排出したりする。このような患者は大食性神経性無食症といわれる。一方、摂食を専ら制限することにより体重をコントロールする患者を制限性無食症者という。

 個々の大食症患者は正常体重であるか、または気まぐれ喰いのために正常より肥えていることもある。この気まぐれ喰いは1週間に1~2回の頻度から1日に数回に及ぶことがある。このため、正常体重の大食症患者は何年も病気を隠し通すことができる。無食症と同じように典型的な大食症は思春期に発病する。しかし、多くの患者はその奇妙な食行動を恥じて、30代や40代になっても治療をしようとしない。しかし、この病気の危険なことが世の中に知られるになるにつれて受診する大食症患者は増加している。無食症と同じように、治療が早くなされればなされるほど、回復率はよい。

内科的合併症

 摂食障害の患者の約1割が死亡する。飢餓、心不全、自殺などがその原因となっている。

 無食欲症の内科的合併症は飢餓により生じる。心臓や脳といった活動の盛んな臓器を守るために、体はギヤーをローにします。生理は止まり、呼吸、脈拍、血圧は低下します。そして甲状腺機能も低下します。爪や髪の毛は脆くなり、皮膚は乾燥し黄色くなり、うぶ毛が生えます。体内の水分のバランスが崩れ便秘がおこり、皮下脂肪の減少により体温が低下し寒さに弱くなる。

 軽い貧血、関節の腫れ、筋肉の弱りも無食欲症の症状である。病気が進むと、骨粗しょう症(骨が薄くなる)、不整脈及び心不全が起こる。体重をコントロールするために食物を無理に体内から排出する患者は特に危険である。嘔吐を起こしたりや腸の運動を高めたり、尿の排泄を促進する薬を乱用すると心不全の危険性が高まる。

 飢餓とともに抑うつ、全身衰弱および食物に対する強迫観念も生じてくる。人格変化も起こる。攻撃性や怒りの爆発、そして社会からのひきこもりがみられる。そうして、無食欲症患者に特徴的な素直さに慣れていた周囲の人々を驚かす。

 気まぐれ喰いや強制的な食物の排出は正常体重の大食症者を危険な状態にします。気まぐれ喰いはまれに胃の破裂を起こします。また強制的な食物の排出は、カリウムのような体液中のミネラル成分を喪失させ心不全を起こします。致死的ではないが重症では、嘔吐するときに胃酸が歯の間を伝わり、嘔吐を引き起こすために喉の奥深くいれた指が押さえつけられ、その結果手の甲に般痕ができる。食道は炎症を起こし、唾液腺が腫れる。月経は不規則になり性的興味を失う。

 大食症の患者は自分はある種の食物(とりわけ炭水化物)の餌に引っかかっているので、その習慣に対して餌をやる必要があると述べる。この没頭する傾向は他の分野にも及んでいる。薬やアルコールの乱用、病的盗癖(強迫的盗癖)にまで及ぶ。多くの大食症患者は深刻な欝にかかる。そして衝動的な傾向が加わり、自殺の危険性が増加する。

摂食障害の原因

 摂食障害の原因を明らかにするために、性格、家族の背景、環境、無食欲症や大食症患者の生化学的な検査がなされた。よくあることであるが、研究すればするほどこの病気の原因は複雑になってくる。この病気の原因を探る研究の中で最も目を引くのは合併症の研究である。例えば、摂食障害の患者で見つかった生化学的な異常は、その異常な食習慣の結果かこのような病気になる体質的な弱さを示している。このようないろいろな因子が重なって摂食障害になり易い体質ができていくと考えられる。

性格のゆがみ

 大食症者と無食欲症者とは性格が違っているようである。大食症にかかる人は無食症者よりも衝動的で、アルコールや薬物の乱用が目だつ。無食欲症者は良いこ過ぎる傾向にある。彼らは従順で、自分の感情をコントロールでき、完全主義で、優等生で、そしてこまめに体を動かす。

 しかし、大食症者も無食欲症者も共通して自信と希望がなく、肥えることを極度におそれる(大食症者は気まぐれ喰いの間にダイエットをしきつい運動をする)。両疾患とも不安やストレスに対処していく過程に発生するように見える。大食者はスナックのような食物を大量にとる。これはストレスを和らげ安心感を得るための行動である。しかし気まぐれ喰いは罪悪感とうつ気分をもたらす。そして体内から強制的に食物を出すことによってのみ救われる。

 無食欲症者は特に炭水化物を中心とした食餌の制限をし、生活上のいろいろな場面で自分をコントロールしていると考えられる。他人の希望を大部分かなえるように行動してきたので、思春期に特有な問題に対処する方法を知らない。体重をコントロールすることは少なくともはじめのうちだけは2つのプラスの面を提供している。彼女は自分の体重をコントロールすることができることを他人に示し認めさせることができる。しかし、結局は彼女は実はどうにもならないひとであることを気づかせ、生命の危険な状態になるまでやせ細ってしまう。

家族的背景

 摂食障害は家族性に発症しているかにみえる。特に女性の血族者に起こりやすい。ある人達だけが摂食障害を起こしやすいという遺伝的な因子があると考えられている。場合によっては模倣行動が原因になる。神経性無食欲症や大食症のある家族とない家族を比較研究され、いくつかの違いが指摘されている。大食症の患者家族間にはには敵意が多く、一方、無食欲症患者家族は子供に対して暖かく支持的で”障害のない家庭”と考えられるが、夫婦間の問題は内在している。無食欲症の子供は自分達の問題に対処し解決していく能力のない家庭の避雷針の役割をはたしているという専門家もいます。しかし科学的にしっかりと基盤を持った研究がなされるまでは家族の問題について一般化したことは何もいえません。

 摂食障害はほとんどが中級~上級の家庭に発症しています。明らかに経済的社会的に上級であることが高い危険率と関係しています。国際的な研究でもこのことは明白です。摂食障害は工業先進国に極端に多く、第3世界では実質的にはほとんど有りません。この事実はこの病気の危険率を高める文化的な影響に対する疑問を提起します。貧しい人々の間では痩せていることなどは賛美することでは全くなく、飢餓状態などというものは誰も望む人は有りません。しかし、西洋の美術に描かれている理想的な女性は徐々に細くなっていきました。絵画の中の女性はゆっくりと体重を減らしていきました。画家達が痩身を理想化していったのかまたは時代の流行を追ったのかは定かでは有りません。

生化学:原因か結果か?

 婦人の無食欲症の最初の徴候の1つは毎月ある生理がなくなることです。これはホルモンのアンバランスがこの病気に関係していることを示しています。しかし、無月経は明かな体重減少に先立って生じます。摂食障害が先かホルモンのアンバランスが先かは明かではありません。さらに複雑な原因か結果という疑問は、生理はいつもではないがしばしば体重が回復してから出現することです。また無月経は体重の正常な過食症の婦人にも見られます。そして、男性の無食欲症患者では男性ホルモンの減少やインポテンツがみられます。それ故、体重、食習慣、ホルモン産生といった三者間に何らかの関係があり、科学者が挑戦している魅力的で複雑なテーマです。

 摂食障害をよりよく理解するために、この病気の生化学的な異常が研究されています。最近では、中枢神経とホルモン系に関係した神経内分泌系に焦点が絞られています。複雑で微妙なバランスのフィードバック系によって神経内分泌系は、性機能、成長、食欲と消化、睡眠、心腎臓系、情動、思考、記憶、言葉を変えていえば心と体を調節している。この病気ではこの調節機構が高度に傷害されている。

 ホルモンの産生に大きな役割をはたしている脳内の化学メッセンジャー(神経伝達物質)の研究に多くの科学者が取り組んでいる。神経性無食症でも過食症でもある種の神経伝達物質のレベルが異常であることは驚くことではない。たとえば、セロトニンという神経伝達物質は過食症、気分障害、衝動的行為のある患者では低下している。セロトニン濃度低下は、過食症患者の衝動性、欲うつ症状、および炭水化物のとんだ食品を過食する行動と関係している。問題は摂食障害の引き金になる原因は何かということである。神経伝達の異常なのか、食行動なのか、遺伝子なのか、または環境なのか?神経性無食症患者の脊髄液においては、脳内に自然に存在する麻薬物質であるベーターエンドルフィンや神経伝達物質であるノルエピネフィリンの濃度が低下している。体重が回復してきている神経性無食症の患者でもノルエピフィリンの濃度が低いので、この神経伝達物質の異常は体重の減少に先行しており、おそらく摂食障害の遺伝的素質に関係していると考えられる。他方、同じ様な生化学的異常が神経性無食症患者に特徴的な低炭水化物・高蛋白性の飢餓や同時に存在する欲うつ気分においても見られる。

 うつ病と摂食障害の関係についても近年よく研究され始めた。摂食障害の患者はうつ病になっていることが多い。うつ病が摂食障害の引き金になっているのではないかとかんがえる科学者もいる。確かに両者の間には生化学的異常の類似性が高い。セロトニンやノルエピネフィリンの濃度低下がうつ病と関係している。そしてうつ病の薬である抗うつ薬が摂食障害、とくに過食症の患者に効果がある。そして、ストレスに反応して分泌されるホルモンであるコルチゾールが両者で正常者よりも高い。

 コルチゾールについての研究がとりわけうつ病で多くなされている。うつ病や摂食障害にみられる過剰なコルチゾールの分泌は視床下部あたりの脳内の機能が関係していることが突き止められている。視床下部は多くの身体機能をコントロールしている。ホルモン分泌、体温、水・電解質バランス、糖・脂肪代謝が調節されている。視床下部の機能と摂食障害の問題は関連していることは容易に理解できる。問題はどちらが原因で結果かである。長期のストレス状態が神経伝達物質やホルモンのアンバランスを引き起こし摂食障害が起こってくると考えられている。

治療

 特に体重減少によって摂食障害が疑われたら、第一にすべきことは体重減少を引き起こす他の病気を除外するための徹底的な内科的な検査である。神経性無食症の診断がなされたならばすぐ治療が開始されなければならない。あいにく多くの患者も家族もこの病気をたいへん重篤でも否定する傾向がある。神経性無食症の患者を治療に持ち込むことも治療を継続することもたいへん難しい問題である。

 過食症の患者を治療することもたいへん複雑な問題が絡んでいる。無食症の患者より過食症の患者は治療をたやすく受ける傾向にはあるが、症状がすぐよくならないと多くの患者は葛藤に耐える力が弱く治療から離れたがる。

 どのような場合にも治療は重要であり早ければ早いほど良いということが強調され過ぎることはない。異常な食行動が長く続けば続くほど、この病気を克服し身体的な影響をなくすることが困難になる。症例により長期の治療が必要となる。

 治療者がまずしなければならないことは患者が内科的に危険な状態かどうか入院が必要かどうかを決定することである。大部分の患者は外来治療を受けるが、容態により入院治療の方が安全なことがある。重篤で急速な体重減少、重症の代謝障害、高度のうつ状態または自殺の危険性、頻回な気まぐれ喰いと嘔吐、または精神病の合併は入院の指針となる。

 摂食障害では情動的な問題と身体症状の複雑な絡み合いがあり、各分野の専門家による高度な治療が必要となる。理想的には、内科医、栄養学者、個人または集団精神療法家、家族精神療法家、向精神薬の専門家である医師すなわち精神薬理学者が必要である。

 内科医が医学的な合併症の治療をし、栄養士がダイエットと食品の内容について相談を受けるとよい。摂食障害の治療はそれに合併する代謝障害によりたいへん難しくなる。最近の研究によれば、一部の無食症患者は低体重の時だけでなく体重を回復してからも過食症患者に比べて体重を保持していくためには30~50%余分にカロリーをとる必要があるということである。他方、過食症患者が同じ体重を維持していくには同じ年齢性の正常対照者の75%のカロリーでよいこともわかっている。このように、同じ体重を維持していくにしても、無食症患者は余分のカロリーが必要であり、過食症患者は少なくてすむ。

 次に述べることは摂食障害の患者にとっても治療者にとっても大切なことである。カロリーをとることは無食症患者がまさに避けたいと願うことである。たとえその患者は体重を増加させなければならない状況でもカロリー摂取を避けなければならないと思ってしまうのです。しかし、彼女は正常な生活ができるようになるためには体重を回復しなければならないのです。他方、過食症患者は、同じ体重年齢の普通の人がとっても肥えることはないカロリーで肥えてしまうことを納得できることがおおいようです。

 摂食障害の患者の面倒を見ているといろいろな問題に直面します。その問題の底には情緒的な問題が潜んでいることが明らかになります。そして精神療法が必要になります。患者は自分の病気を理解しそれに立ち向かっていくためには、精神科医、心理学者、それとそのほかの種々な精神保険関係者のいろいろな治療を受けて心理的なサポートを受ける必要があります。過食症患者には集団精神療法が有効です。彼らは自分達の気まぐれ喰い行動が自分だけではないことを知りたいへん救われます。グループに参加することによって同じ問題を抱えている人たちを助けたり反対にたすけられたりすることができます。

 もし患者の情動的な問題が家庭問題と関わりがあるならば、個人または集団精神療法にさらに家族療法を加えると効果があがる。家族療法家は患者の摂食障害の原因となっていると考えられる家庭状況を理解させ変更することを助長する。

 行動療法、個人精神療法、それに家族療法を合わせて行うことが最も効果的である。これはまず体重増加を必要とするやせ衰えた無食症患者の治療には特に効果的です。行動療法家は食行動の変更に治療の焦点を合わせます。それは好ましい行動に対して報償を与えるかまたはそれをモデルとして行動させます。認知・行動療法家は摂食障害と関係があるゆがんだ融通のきかない思考パターンを変更するように治療を進めます。

 摂食障害の患者にはしばしばよくうつ状態が伴います。もしこのような状態が有れば、抗うつ薬の投与は効果があります。抑うつ状態がひどくなくても投薬はしばしばおかなわれます。しかし、科学的な対照研究がなされた薬物は多くありません。現在効果が確かめられている薬物は、過食症に対してはデシプラミン、イミプラミン、フェネルジンです。無食症患者に対して効果のある薬物は、アミトリプチリン、抗ヒスタミン剤であるサイプロヘプタジンです。投薬は医師の処方により十分管理されたもとでなければしてはいけません。

Obsessive–compulsive disorder

2021-01-21 03:05:34 | DSM
2021-01-03 12:09:19
2021-01-21 03:05:34 読了
Cinéma[modifier | modifier le code]
Le film Pour le pire et pour le meilleur nous montre Jack Nicholson dans le rôle d'un écrivain asocial atteint de TOC.
Le film Trust me met en scène un personnage violent souffrant de TOC : il s'agit du père du héros, un ancien militaire obsédé par le rangement et la propreté.
Dans le film Les Associés, Nicolas Cage, en proie à des troubles obsessionnels, doit ouvrir et fermer une porte trois fois de suite avant de pouvoir la franchir.
Le film Aviator évoque l'histoire vraie d'Howard Hughes. Une attention particulière est portée aux rituels de Hughes, notamment le lavage des mains, et à sa peur obsessionnelle des microbes, ce qui l'a conduit à finir ses jours dans un isolement complet.
Le film Sans mobile apparent nous présente l'inspecteur Caracalla, qui n'arrête pas de se laver les mains (le rôle est tenu par Jean-Louis Trintignant).
Le film américain L'Incroyable Destin de Harold Crick, sorti en 2007, raconte l'histoire du personnage éponyme qui est atteint de TOC et ne peut s'empêcher de tout compter.
Le film espagnol Toc toc, sorti en 2018, est une comédie où l'on voit six patients atteints de TOC qui, attendant l'arrivée de leur psychiatre, doivent supporter les manies des cinq autres et tenter de se comprendre.
Le film danois The House That Jack Built, de Lars Von Trier, met en scène Jack, un meurtrier atteint de TOC, surnommé "Mister Sophistication".
Théâtre[modifier | modifier le code]
La pièce de théâtre Toc toc de Laurent Baffie : six patients sont dans la salle d'attente d'un neuro-psychiatre à la renommée internationale, spécialiste du traitement des TOC. Il ne consulte en France qu'une fois tous les deux ou trois ans, et ne voit jamais le même patient deux fois. Coprolalie, arithmomanie, nosophobie, TOC de vérification, palilalie... les TOC s'entassent, se bousculent et se mélangent dans le cabinet du docteur.
La pièce TOC d'Augustin d'Ollone.
La pièce Pièces de Philippe Minyana, parue en 2001 puis retravaillée par l'auteur pour le metteur en scène Laurent Brethome en 2012 sous le titre TAC. Le personnage principal, TAC, est un homme atteint de syllogomanie (ou « Trouble d'Accumulation Compulsive »), dont l'histoire s'inspire d'un fait divers réel.
Chanson[modifier | modifier le code]
Justin Timberlake, ainsi que les rappeurs Lomepal et Nf ont dit dans une interview qu'ils étaient atteint de TOC68.
Joey Ramone, le chanteur des Ramones, était atteint du syndrome de TOC, ainsi que du syndrome de Marfan.
Télévision[modifier | modifier le code]
La série télévisée Monk, met en scène Adrian Monk, un détective souffrant de troubles obsessionnels compulsifs. Ce trouble psychologique lui a coûté son poste de détective à la brigade criminelle de la police de San Francisco. À la suite du meurtre de sa femme, Monk est traumatisé et il développe une centaine de phobies, notamment des microbes, du vide, de la foule et de nombreuses autres choses, ce qui ne facilite pas ses enquêtes.
Dans la série télévisée Esprits criminels, l'épisode 2 de la saison 1, intitulé Par feu et par flammes (titre original : Compulsion), met en scène les agissements d'une jeune étudiante pyromane atteinte de TOC centrés sur le symbolisme du chiffre 3. Dans l'épisode 22 de la saison 2 intitulé Morts anonymes (tire original : Legacy), le jeune inspecteur de police qui vient demander de l'aide à l'équipe des profileurs est lui aussi atteint de TOC (tout doit être parfaitement rangé et symétrique), ainsi que le diagnostique lui-même l'agent spécial Aaron Hotchner.
Dans la saison 3 de la série Scrubs apparaît, le temps de quelques épisodes, le docteur Kevin Casey. Ce médecin souffre de plusieurs TOC. Il ressent le besoin de recommencer son entrée dans l'hôpital qu'il juge ratée. Il répète continuellement son nom quand il se concentre. Il a la phobie des microbes, se lave les mains pendant des heures après une intervention et lave ensuite le savon. Il refuse par ailleurs d'utiliser les toilettes de l'hôpital, préférant rentrer chez lui quand le besoin s'en fait sentir.
Dans le téléfilm diffusé sur TF1, Le Monsieur d'en face, le personnage d'Yves Rénier est atteint de TOC. Il est surtout obsédé par le rangement et ne sort jamais de chez lui.
Dans le cinquième épisode de la saison 5 de la série NCIS : Enquêtes spéciales intitulé La veuve noire, Nikki Jardine (Susan Kelechi Watson) souffre de légers troubles obsessionnels compulsifs. Elle a notamment peur de la contamination et doit tout laver ; de plus, elle ne supporte aucun contact direct avec une personne.
Dans la série télévisée Glee, Emma Pilsbury, la psychologue scolaire, souffre de troubles obsessionnels compulsifs manifestés par un besoin récurrent de nettoyer bien que les objets ne soient pas visiblement sales.
Dans la série télévisée Bones l'épisode 22 de la saison 5 « La Fuite en avant » concerne un amasseur agoraphobe.
Dans la série télévisée The Big Bang Theory, le personnage de Sheldon Cooper présente certains symptômes de ce trouble, notamment sa manière de frapper à la porte, ou encore sa phobie des germes qui le pousse à prendre des précautions exagérées concernant sa propreté.
Dans la série télévisée Girls, à la fin de la saison 2, le personnage d'Hannah souffre de TOC. Elle se met alors à tout compter jusqu'à 8 et son comportement devient alors presque dangereux lorsque, pour se purifier, elle s'enfonce un coton-tige dans l'oreille.
Dans la série Pretty Little Liars, Spencer se comporte parfois comme si elle était atteinte de TOC.

強迫性障害 読了

2021-01-21 02:14:46 | DSM
読了 厚生労働省
2021-01-21 02:14:24
強迫性障害は、かつては不安障害の一種と考えられていました。しかしながら現在では、「とらわれ」と「くり返し行動」を特徴とした病気で、不安障害とは異質の病気と考えられています。

2020-12-28 07:04:34
強迫性障害(Obsessive-Compulsive Disorder; OCD)は不安障害の一型で、その病態は、強迫観念と強迫行為に特徴づけられます。

強迫観念は無意味ないし不適切、侵入的と判断され、無視や抑制しようとしてもこころから離れない思考や衝動およびイメージなどで、強迫行為はおもに強迫観念に伴って高まる不安を緩和および打ち消すための行為で、そのばかばかしさや、過剰であることを自ら認識してやめたいと思いつつも、駆り立てられる様に行う行為です。
具体的には、トイレのたびに「手の汚れ」を強く感じ、それをまき散らす不安から執拗に手洗いを続けたり、泥棒や火事の心配から、外出前に施錠やガス栓の確認を切りがなく繰り返したりします。
フロイトに始まる精神分析の中では、「強迫神経症」として精神分析的・心理学的見地から研究や臨床の対象とされ、精神力動論による成因理解がなされてきました。しかし1960年代以降は神経生物学的観点からの成因や病態の解明が進展し、さらにはSSRI(セロトニン再取り込み阻害薬)や認知行動療法の有効性が検証されるにつれ、神経症概念の範疇では捉えきれなくなってきました。このため、1980年に改訂されたアメリカ精神医学会の診断基準であるDSM-III において疾患名は「強迫性障害」に変更され、操作的診断基準によって疾患概念が明確化されました。
以後の研究では、とくに精神病理や病因、脳機能、治療など多角的観点から強迫性障害の多様性が注目され、強迫性障害を均一的疾患とみなすことの限界が明白となっています。そのため、DSM-IVでは持続的に症状の不合理性に関する「洞察に乏しいもの」が、WHOが定める診断基準のICD-10では「強迫思考を主とするもの」「強迫行為(強迫儀式)を主とするもの」および「両者が混合するもの」というサブタイプがそれぞれ採用され、治療法選択や予後判定の基準として試行されています。
患者数

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1960年以前、強迫性障害の一般人口中の有病率は、0.05%程度と考えられていましたが1)、DSM-IIIで操作的診断基準が導入されて以降、これに準拠する信頼性の高い診断を行う為の構造化面接法が開発され、疫学研究が進展し、データに変化がみられます。

たとえば、1980-1983年にかけ実施されたアメリカ国立精神衛生研究所が作成したDiagnostic Interview Schedule (DIS)2)によるNational Epidemiological Catchment Area Surveyでは、強迫性障害は、恐怖症や物質関連性障害、うつ病などに次いで高率に見られ、6ヶ月有病率は16%、その生涯有病率は2.5%と報告されています3,4)。Weissmanらが4大陸(プエルトリコ、カナダ、米国、ドイツ、台湾、韓国、ニュージーランド)で行ったDISによる国際的疫学調査では、12ヶ月有病率は1.1-1.8%、生涯有病率は1.9-2.5%と、それぞれ0.4%、0.7%の台湾を除けば、大きな地域差を認めませんでした5)。それ以外の国や地域でも、DISで診断したDSM-IIIの強迫性障害の生涯有病率は概して2%程度で、その出現に関しては宗教や経済面の相違など社会文化的背景による影響は少ないものと考えられました5,6)。
その後、国際比較診断用構造化面接(Composite International Diagnostic Interview; CIDI)が様々な国や地域、文化圏に対応しうる面接法として開発されました7)。このDSM-IV版を用いた様々な地域の疫学調査によれは、一般人口中の生涯有病率は0.5-2.0%であり、地域差はDSM-IIIの場合と同様に少ないことがわかっています8)。一方、DSM-IIIに準拠した場合に比べて、DSM-IVでの有病率は、おおむね低率の傾向にあります。さらに強迫性障害の診断閾値に達しない程度(閾値下)の強迫症状を有するものが、一般にも相当数いることが指摘されていますが6,9)、強迫症状の重症度は経過中しばしば変動することから、この中に、一時的に診断域に達する場合があるものと考えられます。この様に、従来報告されている強迫性障害の有病率では、

1) 適用される診断基準や閾値
2) 調査方法(面接法や評価者の熟練度、調査手段(対面式か電話かなど))に加え、
3)対象者の構成(年齢、性別など)
4) 強迫症状の特性(症状や重症度の時間的変遷)

などの影響も考慮しなくてはなりません10,11)。

我が国での患者数と有病率

我が国においては、一般人口中の強迫性障害の有病率に関するデータは多くはありません。大学生424名中のDSM-III-Rの強迫性障害を有する割合は、1.7%とされています12)。また約4,100名の一般住民を対象とした、川上による「こころの健康についての疫学調査」(世界精神保健日本調査)では、強迫性障害の有病率は明らかではありませんが、不安障害全体の生涯有病率は9.2%でした13)。一方、東京、大阪、京都の三つの大学付属病院における精神科総初診患者さんのうち強迫性障害の割合は、0.51-1.37%とされています14)。同様に近畿圏の大学付属病院8施設を含む9つの総合病院精神科において調査した結果では、総初診中の強迫性障害患者さんの割合は、1.75-3.82%でした15,16)。これらは、フランスでの精神科外来患者を対象とした調査において17)、強迫性障害患者さんの割合が9.2%であったのに比べてきわめて低率といえます。このことからは、我が国では、強迫性障害の患者さん自体が少ないか、または強迫性障害患者の精神科受診率がいまだ低率であるかの可能性などが推測されます。この点、川上の研究によれば、過去12カ月間に何らかの精神障害を経験した方の約17%、いずれかの不安障害では約19%程度しか、医療機関などを受診・相談していませんでした13)。この受診率は、米国や欧州の多くの国々に比べるとかなり低く、さらに不安障害患者が選択した受診先は半数以上が一般医であり、精神科は約7%に留まっていることも明らかになっています。すなわち我が国では、重症でありながら受診行動に至っていないものも相当数いて、加えて精神科を受診することへの躊躇も、依然強いものと考えられます。この様に、現在のところ、我が国の一般人口中における強迫性障害患者数や有病率の確かなデータは見られませんが、おおむね欧米と同様に1-2%程度、すなわち50-100人に1人、日本の総人口に換算すれば、100万人強の強迫性障害患者の存在が推定されます。
原因・発症の要因

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強迫性障害では、その原因や発症に関わる特異的な要因は、いまだ特定されていません。

しかし、不況や新型インフルエンザの流行など、不安が増大しやすい現代の社会情勢では、自らを、あるいは大事なものを守ろうとする過度の防衛反応として、強迫的思考や行動が誘発されやすい可能性があります。また多くの患者さんが、対人関係や仕事上のストレス、妊娠・出産などのライフ・イベントが、発症契機となります。これらと、何らかの脆弱性要因、たとえば神経生物学的、あるいは性格など心理的要因との相互作用を介し、発症に至るものと考えられます。この様な強迫性障害に「なりやすい要因」とされているものには、次の様なものがあります。

強迫性パーソナリティー

精神分析理論に基づいた「強迫神経症」の概念では、その発現は肛門期という発達段階への固着と退行によるものと解釈されます。倹約、頑固、几帳面、責任感といった、いわゆる強迫性格についても、同様の精神分析的解釈がなされ、これが「強迫神経症」と連続的で、その発症の基礎性格をなすと考えられます。しかしDSM-III以降のcomorbidity study(併存症研究)では、極端な強迫性格と一貫する強迫性人格障害(obsessive-compulsive personality disorder; OCPD)は、ほかの性格傾向よりは強迫性障害発症に関係しうるが、必ずしも必要条件ではなく、両者の特異的関連性は否定的と結論付けられました18)。一方、OCPDを構成するいくつかの人格要因の中でも、完全主義や細目へのこだわり、溜め込みなどは、ほかの不安障害(神経症性障害)と比較し、強迫性障害に顕著でした19)。さらに完全主義をより詳細に検討した場合、「ミスへの過度のとらわれ」や「自身の行動への疑い」など、その一部の精神病理では、強迫性障害との特異的関連を認め、中でも洗浄強迫に比べ確認強迫でより高度でした20)。この様に少なくとも完全主義など、OCPDを構成する一部の精神病理は、強迫性障害の発症に関連する可能性がありますが、それが強迫性障害全般にわたるというよりは、対称性や正確性の追求、それによる確認、整理整頓、保存などの強迫症状を特徴とするものに、より特異的に関与するものと推測されます。

遺伝、あるいは家族性要因

強迫性障害において、これらの病因的関与を裏付ける十分かつ一貫した知見は、いまだ得られていません。しかし健常者を対象としたいくつかの家族研究では、強迫性障害患者さんの第一親等親族において、診断閾値に達しない程度、すなわち著しい苦痛や機能障害を伴わないものを含めた強迫性障害の罹病率、さらには不安障害全般の危険率がより高度であったとされます21)。とくに若年発症例では、家系内集積性がより明らかな傾向であり、発症における遺伝要因の比重が高まる可能性が考えられます22,23)。また強迫性障害とチック障害、あるいはトウレット症候群とは、家族性、遺伝学的相互関連が推定されています24)。すなわち、これらの障害をもつ患者さんの親族には、強迫性障害が高率にみられ、同様に強迫性障害の親族には、チック障害などの出現が高率とされています25,26)。この傾向は、患者さんが若年発症であるほど顕著であり、とくに18歳未満の発症では、それ以降に発症した患者さんに比し、親族における閾値上ないし閾値下強迫性障害の発病危険率が、約2倍であったとされます。一方遺伝子研究では、最近のゲノムワイド関連解析により、強迫性障害自体、若年例、ないし保存症状の疾患感受性遺伝子の報告もなされていますが27-29)、いまだ知見は乏しく特異的遺伝子の解明は十分なされていません。

感染症、神経精神疾患との関連性

強迫性障害では、パーキンソン病、トウレット、シデナム舞踏病など、大脳基底核におけるドーパミン系機能異常を伴う神経精神疾患との関連性が指摘されています21)。また児童期のA群β-溶血連鎖球菌感染症による上気道感染はリウマチ熱を合併し、その後期症状として、舞踏様運動とともに、高率に強迫症状を呈します。この感染に伴う異常な自己免疫反応による線条体の形態的、機能的異常を介し、小児期強迫性障害やチック障害などの急性発症に病因的役割を担うことが推定されています30)。この様に、神経免疫機能と強迫性障害との間には何らかの関連が推定されますが、この感染が、常に強迫性障害の誘因になるわけではなく、その機序や特異性などについては今後の検討が待たれます。

その他

その他、強迫性障害における神経生物学的病態として、脳形態的特徴や神経回路、神経化学システムに関するものがあります。これらには、強迫性障害出現に伴い二次的に出現するものも含まれるが、たとえば前頭葉や基底核領域の損傷が、強迫性障害発症に先行することもあり、また強迫性障害患者さんの脳形態学的画像研究では、淡蒼球や両側尾状核の体積減少など基底核の形態学的変化を、おもに若年例を中心に認められます31)。神経回路の中では、「皮質‐線条体‐視床‐皮質」回路が注目され、神経化学的には、セロトニン、さらにはドーパミン神経系の機能異常の関与が明らかにされています。
症状

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強迫症状には様々な内容があり、通常それぞれ関連の強い強迫観念‐強迫行為の組み合わせとなっています。

しかし中には、性的なイメージなど純粋に強迫観念のみ出現する場合や、強迫行為(儀式行為)を主としてこれを裏付ける強迫観念が明確でない場合もあります。強迫症状の内容と、本邦の強迫性障害患者さんにおける出現頻度を表1に示します。汚染/洗浄、確認などの症状が最も高率で、欧米とほぼ一貫した傾向であり、強迫症状の出現様式において社会文化的影響は少ないものと考えられます。

表1 強迫症状の内容と頻度

汚染の心配-掃除や洗浄 40-45%
人や自分を傷つける心配(攻撃的-確認) 30%
正確性の追求-確認や儀式行為 30%
数字へのこだわり-数を数える 15%
対称性へのこだわり(魔術的思考)-儀式行為 10%
無用なものへのこだわり-保存 5-10%
その他 20%
強迫症状の中で、汚染/洗浄、確認に関するものの具体例を示します。

汚染/洗浄
例) トイレの後、なかなかきれいになった気になれず、手洗いやシャワーを繰り返してしまう。
例) 公共のもの(たとえばつり革など)にさわると、ウイルスなどの感染が心配となり、何度も手を洗う。
確認
例) 自分の不注意で火事を起こしたり、泥棒に入られたりすることを心配して、ガス栓や玄関、窓などが正確に閉まっているかの確認をくりかえす。
例) 運転中、誰かを誤って轢かなかったか、または歩いていて子供や老人とすれ違った時に、転ばせたり、ケガをさせていないかを心配し、ひき返したりして何度も確認する。
多くの場合、強迫性障害患者さんは初診時には強迫症状に強い苦痛を感じており、無視したり抑制したり、止めようと努力していたり、少なくともその意志を示すが、不安に強くとらわれ、無視や行為を中断するなど制御や抵抗が難しい状態にいます。または不安に圧倒され、抵抗しようと思う余裕すらない状態にいることもあります。このため、多くの場合は、不安が引き起こされる状況を避け(回避)、さらに約1/3では、確認を強要したり保証を繰り返し要求したりして、しばしば家族など周囲を症状に巻き込んでいます。
強迫性障害患者さんでは、ほかの精神障害の併存をしばしば認めます。中でもうつ病が最も多く、初診時の約30%では併存が認められ、そしてその生涯有病率は70%程度とされます15,16, 32, 33)。これは強迫性障害発症後二次的に出現することが一般的であり33)、うつ病を伴う強迫性障害患者中、64-85%では強迫性障害の発症が先行していたというデータがあります15,16)。すなわち、強迫性障害患者さんに見られるうつ病、あるいは抑うつ状態の大半は、強迫性障害により生じる精神的葛藤や疲労、日常や社会生活上の機能的問題などと関連し出現するものと考えられます。
治療法

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強迫性障害の主要な治療は、SSRIを主とした薬物、および認知行動療法です。

さらに病気自体や治療および対処などについて、患者さんや家族などに十分な理解をうながす心理教育は、治療的動機づけを高めかつ周囲からの一貫した支持を得て安定的治療環境を構築するうえで重要です(表2)。

表2 強迫性障害治療の概要

DSM-IV によるOCDの診断と評価

心理教育
症状の患者や家族の理解を高め、治療意志を強化する

薬物療法
クロミプラミン(アナフラニ-ル):50-250 mg/日
フルボキサミン(ルボックス、デプロメール):50-250 mg
パロキセチン(パキシル) :10-50 mg/日

認知行動療法
曝露反応妨害法

個々の患者さんの治療は、症状の特性や精神病理、治療的動機づけの程度などを考慮し選択します。薬物療法と認知行動療法にはそれぞれメリット・デメリットがあり、たとえば薬物は、導入や継続が容易で即効性が期待される反面十分な反応が得られない割合が比較的高く、副作用や中断時の再発が問題となります。一方認知行動療法は、より有効性が高く効果の持続性や再発予防に優れますが、導入やアドヒアランスには、患者さんの状態や動機づけの程度などが大きく関わり、その効果は治療者の経験や技量にも影響されやすいという問題があります。実地臨床の多くでは、うつ病の併存などで認知行動療法は当初困難であり、薬物を先行させ、治療的動機づけを強化確認後、認知行動療法に導入するといった併用療法が一般的です。

薬物療法
薬物療法の第一選択は、強迫性障害の保険適応を有しているSSRI(フルボキサミン、パロキセチン)、あるいはクロミプラミン(アナフラニ―ル)などの強力なセロトニン(5-HT)再取り込み阻害作用をもつ抗うつ薬です。SSRIの副作用は、三環系などほかの抗うつ薬に比し軽度で、より安全性に優れるが、吐き気や不安増強などを一過性に認めることがあります。長期投与の場合、性機能低下などに注意します。以下に処方例を示します。

処方例
下記のいずれかを、効果や副作用を確認しつつ漸増し、維持用量を決定する。

1) デプロメール錠、またはルボックス錠(50mg) 1-5錠 分1-3
2) パキシル錠(10mg) 2-5錠 分1-2
3) アナフラニ-ル錠(25mg) 2-10錠 分1-3(保険適用外)

これらの効果が不十分な場合、診断の再確認など原因を検討して治療法を再考する。薬物療法では、ほかのSSRIへの変更、SSRIに少量の抗精神病薬を付加投与する方法などを試みる34)。また観念のみ認める場合、認知的歪みや洞察の修正、治療的動機づけの強化などが必要な場合などでは認知療法が、心理・社会的、人格的要因などの関与が考えられる場合では家族療法などほかの精神療法が、それぞれ有効となる。以下に処方例を示す。

処方例
下記の4)-7)は、いずれも保険適用外ではあるが、処方例1)か、2)のいずれかに追加投与することが試され有効性が検証されている。処方例4)の場合、クロミプラミン(アナフラニ-ル)の血中濃度が数倍に上昇する為、心電図などで副作用に十分注意する。

4) アナフラニ-ル錠(25mg) 1-2錠 分1-2(保険適用外)
5) リスパダ-ル錠(1mg) 1-3錠 分1-3(保険適用外)
6) ジプレキサ錠(2.5mg) 1-2錠 分1-2(保険適用外)
7) セロクエル錠(25mg) 2-4錠 分1-3(保険適用外)

最近では、エビリファイ(アリピプラゾール)を付加投与する方法の有効性も報告されている。

認知行動療法(表3)
曝露反応妨害法を用いることが多く、これまで恐れ回避していたことに直面化し(曝露法)、不安を軽減する為の強迫行為をあえてしないこと(反応妨害法)を継続的に練習します。その効果には、洞察や治療的動機づけの程度が影響する為、予めこれらを評価し適応を判断します。導入時には行動分析が重要であり、症状がどの様な場面や刺激により出現し、どの様な観念が生じて不安になるか、どの様な行為や回避を伴い、家族など周囲の巻き込みはあるか、日常や社会生活への影響はどの程度かなどを明確にして、治療目標を具体的に決めます。課題設定は、通常不安階層表(ヒエラルキー)の不安値の低いものから順次行うが、患者さんがいちばん治したいもの、生活や社会的機能に関連し治療効果を実感しやすいものなどを、優先させる場合もあります。当初はおおむね治療者主導ですが、自ら課題を考え、問題を分析し解決する方法を模索するなど、徐々に自己制御へ移行することが重要です。

表3 曝露反応妨害法の進め方

1 先行刺激と観念、不安、行為の行動分析
2 対象とする症状や治療目標の明確化
3 症状を止めやすいと思う順番に難易度をつけて、不安階層表を作成
4 難易度の低い課題から開始する。この際、どの様な方法で、どの様に考えて、またいかに回避せず挑戦していくかなどを、治療者と十分に話し合い実行を約束する。
5 ホームワークとセルフ・モニタリング
6 課題が達成できれば、より難易度の高い課題に進み、達成困難な場合には、その原因を検討し修正していく。当初は動機づけや支持、説明など、治療者主導で進めることが多い。しかし患者自身が課題を考え、自分の問題を分析し、反省と理解のうえで、修正したり解決する方法を模索したりするなど、徐々に自己制御に向けていく。

経過

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強迫性障害患者さんの治療予後を長期的にfollow-upした研究はいまだ多くありません。

我々の研究では、上述した心理教育、薬物療法、そして認知行動療法を組み合わせた治療を一年間継続した場合の強迫性障害患者さんの平均改善率、すなわちYale-Brown Obsessive-Compulsive Scaleで評価した重症度得点の減少率はおおむね50%程度でした。この中で薬物療法に関しては、従来、SSRIなど第一選択の抗うつ薬に中等度以上の反応性を示す患者さんの割合は約50%と考えられています。薬物療法に対する反応性の予測因子としては、

1)男性でとくに早発例
2)罹病期間が長期
3)対称性へのこだわり/儀式行為、物の溜めこみ、性的、宗教的などの純粋強迫観念などの強迫症状
4)症状に関する奇異な信念や魔術的思考の存在
5)全般性不安障害、あるいは全般性に特定される社交恐怖の併存
6)チック障害との関連性
7)統合失調型人格障害の併存

などがあり、これらの要素を認めた場合はSSRIに対する抵抗性が予想されます35)。最近では、SSRI抵抗性の患者さんの1/3~1/2に対しては非定型抗精神病薬などの付加投与が有効と考えられています。しかし一旦薬物が奏効しても、自己中断などで服薬が途絶えた場合落ち着きのなさや悪心などSSRIの離脱症状に注意を要するとともに、再発率が70~90%と高率であることから十分な服薬アドヒアランスが維持されるよう配慮することも大切です。また治療により強迫症状が改善した場合、どの様に薬物の減量・中止を図るかについて、いまだ統一された見解には至っていません。一般的に、有効な薬物療法を1-2年間は継続することが必要とされ、減量する場合、状態を観察しながら緩やかなペースで、具体的には1-2カ月かけ10-25%を減量する程度が推奨されています36)。

一方、認知行動療法については前述したように、その導入やアドヒアランスには、患者さんの状態や動機付けの程度などが大きく関わってきます。もしプログラムの継続・完了が達成されれば、60-90%に何らかの改善をもたらし、そのうち75%では、その有効性が長期的に維持され、さらに薬物療法のみの場合に比べ、高い再発防止効果が期待できます。すなわち、いずれ薬物を減量していく場合でも、認知行動療法を予め学習し、曝露(不安の対象や状況への直面)、そして反応妨害(強迫行為の制御)を維持できれば、不安の増大や症状の再燃は、かなり予防できるものと考えられます。
患者さんへのアドバイス

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研究の状況

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現行の強迫性障害治療に個々の患者さんが示す反応性や、奏効する、あるいは必要となる治療法は決して一律ではありません。

すなわち、近年、症候学的、精神病理学的特徴、及び成因や病態生理、さらには有効な治療法やその反応性など多角的観点から、強迫性障害内の多様性が支持され、これを現行の単一的、均質的診断カテゴリーとしてとらえることの限界が明らかとなりつつあります。これを説明する為の次元的分類法として症状軸(symptom dimension)があります37,38)。これは、

1) contamination/washing & cleaning (汚染/洗浄)
2) symmetry/ ordering & repeating rituals (対称性/整頓・繰り返される儀式行為)
3) forbidden (aggressive) thoughts/ checking (禁断的(攻撃的)思考/確認)
4) hoarding(保存)

などの各dimensionにより構成されます。この症状構造は、社会文化的背景や年齢などの影響を受けずおおむね安定的であることから37,39)、それぞれの発現に、本質的で特異的神経生物学的機序が介在している可能性が示唆されています。これをふまえ、symptom dimensionを基準とした、個々に適用する治療法の合理的選択が試行されています。たとえば、汚染/洗浄や禁断的思考/確認などのdimensionが優勢であれば、SSRIや認知行動療法など定型的治療の適応となり、これにある程度反応するものと予測されます。一方、対称性/整頓・繰り返される儀式行為dimensionは、若年発症やチック障害などとの関連性が強く、ドーパミン系機能異常のより密接な関与が推定されています。実際、これが高度であれば、SSRIへの抵抗性が予測されますが、非定型抗精神病薬の付加投与はしばしば有効です。またこのタイプでは、何かを完全に、対称的に、または正確性を追求するがあまり、ある行為を儀式的、常同的に繰り返し、思う様に完了するまで行動できなくなる状態、すなわち強迫性緩慢を呈することも少なくありません。この様な患者さんに対する認知行動療法では、かたくなで非機能的な認知パターンの修正がしばしば必要となり、行動療法では曝露反応妨害法以外の技法、たとえばシェイピングやモデリング、ペーシング、儀式短縮化訓練などが推奨されています。同様に保存dimensionが高度であれば、しばしば強迫的保存(溜め込み)症 (compulsive hoarding) と呼ばれる状態を示します。この自我親和的特性から、不合理性の洞察を明確に有する場合は少なく、まずは認知面に対する直接的治療介入がしばしば必要となります。さらに、多くの場合はSSRIなどの薬物や定型的な認知行動療法に抵抗性であり、非定型抗精神病薬などの付加的治療に対してもその反応性は十分とはいえません。最近では、保存症状に特化した認知行動療法プログラムが提唱されています。この様に、symptom dimensionなど、ある臨床的指標を基準として、治療反応性を予測するとともに、個々に有効な治療法をより的確に選択し実行していくことが、今後の重要な課題といえます。しかしながら、より妥当で実用的な分類基準の必要性とともに、現行の治療オプションの限界や問題点も明らかで、今後、エンド・フェノタイプといった成因、あるいは発現機序、サブタイプの解明などがより進展して、強迫性障害の病態仮説にも新たな展開や見直しが加えられ、更なる治療法の提言、開発などが進められるものと期待されます。

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