近頃Kindleで色々と本を買うようになり、
昔持っていた本で、今は手元にないものについても、
気が向いたときに買いなおしている。
先日購入したのは、1983年に伝奇ホラーの名手である菊地秀行氏が書いた、
「吸血鬼ハンター”D”」だ。
この本を読んだのは、中学生時代だったと思う。
世界観に引き込まれるように、一気に読まされてしまった。
あの頃、菊地氏の作品を手当たり次第に読んだ記憶があるが、
40年経った今も続く吸血鬼ハンターDの1作目は、
今読み返しても本当に面白い。
眉目秀麗で剣の達人、吸血鬼である「貴族」たちも恐れる「ダンピール」である”D"と、
彼の左手に宿る謎の生命体である”人面疽”という設定は、
この1作目から既に確立されているが、
何より惹きつけられるのは、人間にとって恐怖の対象である吸血鬼たちが、
すでに繁栄の最盛期を過ぎて、緩慢な滅びの時代を迎えているという世界観だ。
生きることに飽き、自らが築き上げた超文明の痕跡を残しながら、
人間に取って代わられようとしている吸血鬼たち。
”D”が対峙するのは、種族としての衰退に抗おうとする、一握りの「貴族」という構図は、
この「吸血鬼ハンター”D"」というシリーズにほぼ共通しており、
敵である「貴族」たちの滅びの悲哀が、作品の大きな魅力になっている。
近頃は、こういう伝奇ホラーとしての「吸血鬼もの」はほとんど見かけなくなったが、
菊地氏には1作でも多く、世に”D"が活躍するストーリーを送り出していただきたい。