最近読み終わった本のことを書こう。
小説『戸村飯店青春100連発』は、映画化もされた2019年の本屋大賞受賞作『そして、バトンは渡された』を書いた、
大阪出身の小説家・瀬尾まいこ氏が、2008年に世に送り出した、二人の兄弟を主人公とした小説だ。
大阪は住之江にある、昔ながらの中華料理店『戸村飯店』、
ここには長男ヘイスケ、次男コウスケの2人の兄弟がいる。
ヘイスケは昔から要領がいい子どもと言われ、頭の回転も速いイケメンだが、
実は大阪の下町の空気が苦手で父親とはソリが合わず、高校を卒業したら家から出ていきたいと思っている。
一方で1歳下のコウスケは勉強は苦手だが、真っすぐな性格で、店の手伝いも積極的にこなし、常連さんのウケもいい。
阪神タイガースの大ファンで、高校では自分自身も弱小野球部で活躍している。
コウスケからすると、店を継ごういう素振りも見せず、とっとと東京へ出て行ってしまおうとしている兄ヘイスケが理解できず、
『戸村飯店』は高校を卒業したら自分が継いでいくしかないか、
それにしてもヘイスケはなんて身勝手な奴だ、と常々苦々しく思っている、
どちらかというと仲の悪い兄弟関係だ。
高校を卒業したヘイスケは、かねてからの計画通り東京で独り暮らしを始めるが、
将来は小説で身を立てようか、と思い入学した専門学校はひと月で辞めてしまい、近所のカフェ『RAKU』でのアルバイトで生計を立てていく。
実のところ、コウスケからはヘラヘラした奴と思われていたヘイスケは、彼は彼なりに屈折した人生を送っていた。
陽気で誰とでも打ち解けられる弟コウスケと比べ、
理解力の速さから周りを達観的に観てしまうヘイスケは、
自分の思いをなかなか周囲に伝えられないまま、大阪での日々を過ごしてきた。
本当は父親の中華料理店にも興味があったし、阪神タイガースも好きだったヘイスケだったが、
周りから『あいつは店を継ぐ気がない』『あいつは野球に興味が無いからな』と思われてしまうと、
自分自身をそういった枠に嵌めてしまう人間だった。
『戸村飯店青春100連発』は、章ごとにヘイスケとコウスケの2人による1人称視点を切り替えながら話が進む。
2人が何を考えながら日々を送り、成長していくのか、
読み手は彼らの内心の吐露を読み取ることで、兄弟の内面を理解していくのである。
後半、高校卒業を迎え、卒業後は『戸村飯店』を継ぐ気でいたコウスケに一大転機が生まれる。
ここから、東京と大阪で離れて暮らしている兄弟の関係が大きく変わってくる。
果たしてヘイスケとコウスケは自分たちの生き方を見つけていけるのか、
著者・瀬尾まいこの、終始一貫して優しく、登場人物一人一人に寄り添った描写は、
内面の描写の多いこの小説も、一気にエンディングまで読み進ませてしまう。
『そして、バトンは渡された』は、暗くなりがちな設定を、幸福感一杯で終わらせてくれた傑作だが、
この『戸村飯店青春100連発』も、ハッピーエンドに向けて突っ走る素晴らしい作品だ。
子ども時代、兄弟姉妹との関係に何か複雑な気持ちを抱く人は多いと思う。
俺様自身は、読んでいるうちに兄ヘイスケに感情移入してしまったが、
弟コウスケに共感する読み手もきっと多いはずだ。
あの頃、窮屈な気持ちを抱えて日々を過ごしていた思い出のある人に、是非ともお勧めしたい。
小説『戸村飯店青春100連発』は、映画化もされた2019年の本屋大賞受賞作『そして、バトンは渡された』を書いた、
大阪出身の小説家・瀬尾まいこ氏が、2008年に世に送り出した、二人の兄弟を主人公とした小説だ。
大阪は住之江にある、昔ながらの中華料理店『戸村飯店』、
ここには長男ヘイスケ、次男コウスケの2人の兄弟がいる。
ヘイスケは昔から要領がいい子どもと言われ、頭の回転も速いイケメンだが、
実は大阪の下町の空気が苦手で父親とはソリが合わず、高校を卒業したら家から出ていきたいと思っている。
一方で1歳下のコウスケは勉強は苦手だが、真っすぐな性格で、店の手伝いも積極的にこなし、常連さんのウケもいい。
阪神タイガースの大ファンで、高校では自分自身も弱小野球部で活躍している。
コウスケからすると、店を継ごういう素振りも見せず、とっとと東京へ出て行ってしまおうとしている兄ヘイスケが理解できず、
『戸村飯店』は高校を卒業したら自分が継いでいくしかないか、
それにしてもヘイスケはなんて身勝手な奴だ、と常々苦々しく思っている、
どちらかというと仲の悪い兄弟関係だ。
高校を卒業したヘイスケは、かねてからの計画通り東京で独り暮らしを始めるが、
将来は小説で身を立てようか、と思い入学した専門学校はひと月で辞めてしまい、近所のカフェ『RAKU』でのアルバイトで生計を立てていく。
実のところ、コウスケからはヘラヘラした奴と思われていたヘイスケは、彼は彼なりに屈折した人生を送っていた。
陽気で誰とでも打ち解けられる弟コウスケと比べ、
理解力の速さから周りを達観的に観てしまうヘイスケは、
自分の思いをなかなか周囲に伝えられないまま、大阪での日々を過ごしてきた。
本当は父親の中華料理店にも興味があったし、阪神タイガースも好きだったヘイスケだったが、
周りから『あいつは店を継ぐ気がない』『あいつは野球に興味が無いからな』と思われてしまうと、
自分自身をそういった枠に嵌めてしまう人間だった。
『戸村飯店青春100連発』は、章ごとにヘイスケとコウスケの2人による1人称視点を切り替えながら話が進む。
2人が何を考えながら日々を送り、成長していくのか、
読み手は彼らの内心の吐露を読み取ることで、兄弟の内面を理解していくのである。
後半、高校卒業を迎え、卒業後は『戸村飯店』を継ぐ気でいたコウスケに一大転機が生まれる。
ここから、東京と大阪で離れて暮らしている兄弟の関係が大きく変わってくる。
果たしてヘイスケとコウスケは自分たちの生き方を見つけていけるのか、
著者・瀬尾まいこの、終始一貫して優しく、登場人物一人一人に寄り添った描写は、
内面の描写の多いこの小説も、一気にエンディングまで読み進ませてしまう。
『そして、バトンは渡された』は、暗くなりがちな設定を、幸福感一杯で終わらせてくれた傑作だが、
この『戸村飯店青春100連発』も、ハッピーエンドに向けて突っ走る素晴らしい作品だ。
子ども時代、兄弟姉妹との関係に何か複雑な気持ちを抱く人は多いと思う。
俺様自身は、読んでいるうちに兄ヘイスケに感情移入してしまったが、
弟コウスケに共感する読み手もきっと多いはずだ。
あの頃、窮屈な気持ちを抱えて日々を過ごしていた思い出のある人に、是非ともお勧めしたい。