なな色メール 

シュタイナーの勉強会の仲間と始めたニュースレター。ブログでもその一部をご紹介していきたいと思います。

あなたの認知特性は?自分の脳の個性を知ってみませんか?

2012年11月01日 | S.S.
 小さなお子さんたちの認知の状態について把握し、発達を支援することに取り組んでいます。それぞれのお子さんの認知力を知ることは、支援のかなめとなるくらい重要ですが、この「認知」ということば、聞いたことがあっても正確な意味はわからない方も多いのではないでしょうか。ウィキペディアによると「心理学における認知とは、人間などが外界にある対象を知覚した上で、それが何であるかを判断したり解釈したりする過程のことをいう」と説明されています。

 認知とは、私たちが外界を知覚し、頭の中で理解し、行動していく過程のことです。各人がそれぞれ入力しやすい得意な知覚力(五感のうち視覚と聴覚が特に重要)から入力したものを、脳内で得意な処理しやすいルートで処理し(理解、整理、記憶)、得意な方法で表現するというのが私たちが日々行っている認知行動。入力、処理過程、表現の各段階で、得意不得意があり、それが各人の個性となって現れると言ったらわかりやすいでしょうか?例えば絵が上手な人は、同じものを見ていても詳細まで見え、それを記憶にとどめ、再現する表現力に優れています。また細かい部分まで見たことを記憶し的確に言葉で表現できる人は、頼もしい目撃者となれる人です。私が仕事で関わっているお子さんたちは、認知過程のどこかで躓いていると推測されています。そこで、私たちは躓いているところを探りながら、発達全体を促す努力をしています。
     
 一般人の認知特性をパターンに分けて説明している本と出会いました。著者は、小児科医。小児神経の専門医として肢体不自由児や発達障碍児の臨床に携わっています。子どもたちの認知に関わる仕事をしている著者が、専門家として持っている知識を一般人の認知特性の分析に応用した本で、人を6つのパターンに分けています。専門的に見れば、パターンわけの判断テストは判断材料が少し大雑把ですが、今までにない面白い個性の見方を提示してくれています。

 『医師のつくった「頭のよさ」テスト 認知特性から見た6つのパターン』 本田 真美著
                             2012年  光文社新書

① カツオくんが描けるアーティスト系 視覚優位者・写真(カメラアイ)タイプ
② どんな人の顔も見分けられるエキスパート 視覚優位者・三次元映像タイプ
③ イメージをすぐに言葉にできるファンタジスト 言語優位者・言語映像タイプ
④ わかりやすくノートにまとめる達人 言語優位者・言語抽象タイプ
⑤ オヤジでなくてもダジャレ上手 聴覚優位者・聴覚言語タイプ
⑥ 英語の発音もすばらしい絶対音感タイプ 聴覚優位者・聴覚&音タイプ
番外編 レストランの味が再現できる職人 身体感覚優位者

 著者は、認知特性を視覚・言語・聴覚の3種類に大きく分け、それぞれをさらに2つにわけて全部で6パターンにしていました。さっそく、家族全員のテストをしてみました。結果は、それぞれの個性の違いが理解できるものでした。夫は④⑤、私は②③、娘は②③④、息子は②③⑤です。

 夫は言語優位・言語抽象タイプと聴覚優位・聴覚言語タイプを兼ね備えていました。聴覚情報処理が得意で、かつ言語を抽象化させて操作できるタイプです。夫は、ドラマが大好き。会話を聞いて楽しみます。耳から入ってきた情報を理解する力が高く、ドラマの筋もどんどん読んでいきます。逆にテレビがついていると電話で話ができません。耳からの情報が多すぎると、処理ができないのだそうです。夫は抽象的な文章を読んで理解する力もあるので、研究者や翻訳業はあっていると思います。

 私は、視覚優位・三次元映像タイプと言語優位・言語映像タイプでした。昔からすぐに妄想の世界に入ると言われる私。何かを見るとすぐに他のイメージを連想してしまうのですが、これは私が入ってくる情報を頭の中でイメージ理解しやすいためのようです。写真にコメントを付けて書いていくブログは、私に合った表現方法なのかなとこの分析を見て思いました。私は、夫など言語を継次処理して理解する人から、話が飛ぶと言われますが、私には話題の展開が、画像の切り替えでしかないので話題が飛ぶとは思えないのかも知れませんね。

 娘は、私に似て画像イメージの連想が得意なタイプですが、夫と同じように言語操作力も高いので、ことばで説明するのが上手です。この分析によれば建築だけでなく、人とコミュニケーションしながら進める仕事も出来るかも知れません。

 息子は色々な認知特性を同時に持っているようです。小さい頃パズルやブロック遊びが得意だったのは視覚優位だからでしょう。耳から入った言葉やメロディーを記憶できるので、音楽を聴くことが好きで、パソコンで色々な音楽をダウンロードしています。また、英語のリスニングや音読も好きです。数学や物理が得意で、高校に入り理系であることがはっきりしてきました。夫や娘のようにことばで上手に説明する力は持っていないかも知れませんが、違う力で人と関わってもらいたいなと思っています。 
 
 実は認知特性は、さまざまな個別の能力により形作られていきます。その能力とは一体何でしょうか?認知の処理の過程で働く個別の力と言えば分りやすいかもしれません。人間には、さまざまな能力があるのですが、先の本を参考にしながら見ていきたいと思います。

・ワーキングメモリー(記憶) 例:眼鏡をどこに置いたか忘れてしまわないか?
 今行ったことを覚えている短期記憶と昔のことを覚えている長期記憶に分けられます。
 記憶ができる量には個人差があり、記憶力は知的な活動に大きな影響を与えます。
・言語操作力 例:文字を読み間違えたりしないか?順序よく物事を説明できるか? 
 言語能力は「読む」「聞く」「書く」「話す」の4つの力から成り立ちます。4つがバランスよく発達していることが理想ですが、得意不得意があります。何故そうなのかについて、自分の特性について分析することで、豊かなコミュニケーション力を身に着けられるかも知れません。 
・数操作力 例:分数が得意だったか?
 いわゆる数の操作能力。数を頭の中で操作する抽象的な思考力が必要になります。
・推論力 例:なぞなぞやクイズが得意か?
 与えられた情報を順序良く論理的に考える力です。問題解決に必要な力だと思います。
 ことばだけでなく、目で見た情報からも推論する力を持つことが問題解決には重要です。
・空間認知力 例:パズルが得意か?
 平面、立体の形を把握して操作する力です。パズルだけでなく、学習面では左右がわかる、行 
 をとばさず文章を読む、きれいな字を書く、地図を見ながら目的地に着く、弁当のおかずを上手に詰めるなど実際的な場面でも求められる力です。
・視覚認知力 例:似た漢字でも間違いなく覚えられたか?
 細部まで注意集中して見落とさない力、一度に多くの情報を見る力、違いに気づく観察力など目で見る力のことです。
・聴覚認知力 例:救急車のサイレンがどこから来るかわかるか?
 音が聞こえるだけでは、聞こえることにはなりません。音に注意を向け、聞こえてくる音や話 
 の内容を理解する力も重要です。必要な音だけを聞いて、いらない音を遮断するのも大事な聴覚認知力です。
・処理能力 例:決まった時間に仕事を終わらせられるか?
 言語を介さずに作業をこなしていく力のことです。同じ事柄をスピーディーにミスなく繰り返し作業していく能力です。視覚認知、聴覚認知、手先の巧緻性、記憶などさまざまな力が土台となって処理の力を伸ばしていきます。
・手先の巧緻性 例:スピーディーにきれいな字が書けるか?
 手先の器用さの力です。持って生まれた力だけでなく、経験や訓練により伸びる力です。

 以上の力は知能テストで測れるものです。心理学の世界では、これらの力を分析しながら、弱いところを伸ばし、強いところを生かして、個々人の社会適応の支援を行っています。しかし、人の能力ってこれだけではないとも思えますね。知能テストが測れる範囲は、人間の精神活動の一部であることを前提に分析していくことが大事かなと思います。本に紹介されていた知能テストでは測れない能力について挙げてみます。

・身体全体を使う運動能力(粗大運動能力)
・問題へ対応能力(柔軟性)
・決まったパターンで行動しているか否か(秩序性)
・新しいアイデアをだせるか否か(創造性)
・社会の中で周りの人と良い関係が築けるか否か(社会性)
・熟慮せずに思いつきで衝動的に行動するか否か(衝動性)
・整理整頓の力(遂行能力)
・コツコツと続ける力(継続性)
・決まった時間内にどう行動するか(時間感覚)
・課題を一気に仕上げる力(課題遂行集中力)

 私は、胆汁質で「衝動性」があります。直したい自分の個性です。でも課題を一気に仕上げる遂行集中力は、ある方だと思います。「行動力」と「衝動性」は裏表の関係かも知れません。

 この本の分類テストは、大雑把で、これだけで判断してしまってよいかなと思うものもあります。しかし、私の家族で見た限りでは、納得できる結果が出ました。私にとっては、自分の視覚イメージ優位を説明してもらえたのは、私の突飛な発言を家族に理解してもらうのに良かったように思います。皆さんもこのテストにトライしてみませんか。自分や周りの人の特性を知ることで、常日頃理解しえなかったことを、認め合えるきっかけになるかも知れませんよ。

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