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新潟市の住宅設計事務所ネイティブディメンションズ=狭小住宅や小さい家、構造計算、高気密高断熱が好きな建築士のブログ

意匠から生まれる構造設計

2022-01-08 20:12:42 | 建築構造
見学会も残すところあと一日となりました。
皆さん、もうご覧になられましたか。
チャンスは明日だけです。
是非遊びに来てください。

見学会会場では説明する必要もないお話ですが、今回一番の肝になっている部分が今日の記事です。

このお住まいはご実家の敷地内に建っているんですが、とにかく立派なお庭がちょうど真南にあって、それを眺めながら住みたいという、ご要望を聞くまえから「でしょうねぇ」としか言いようがない条件でした。

私と佐藤さんで、これは2階リビングにするしかないでしょと意見が一致したのは言うまでもない話。
バルコニーを設けることで足元から景色を俯瞰することができますし、バルコニーの床が下の通路の目隠しにもなります。
いい眺めでしょ。
春夏秋冬すべてたのしめます。

で、写真の通りうまくいったんですが、これを実現させるための過程が今日のお話し。

一番最初のご提案前にまとめたプランがこんな感じでした。

2階はワンルームのLDKのみ。
南側に斜めのバルコニー。
これで12坪

この案で耐震等級3を目指した構造計算をするとNGになりました。


右の表の文字が読みにくいですが、耐力壁が不足しています。
左の図を見ていただくと、緑の〇が重心で、その上に青い〇があります。青い〇は壁の強さを表す剛心と言われるもの。

重心の上に剛心があるので、重心よりも下のエリアに耐力壁を追加する必要があります。

でも、重心より下のエリアって南側のことで、お庭を眺めるための大きな開口が欲しいし、内部に耐力壁を設けたらワンルームの良さが薄れてしまいます。

これ以上耐力壁を増やさずに耐震等級3をクリアするにはどうしたらいいんでしょうか。

私のブログを読み込んでいる方はなんとなくお気づきかもしれません。

そう。私が構造関係の記事を書くときに必ず出てくるキーワードが「偏心率」。
つまり、バランスです。

このプランは重心と剛心が離れてしまっているのが、そもそもの原因なんです。
耐力壁が不足しているのが直接的な原因ではありません。

単純に重心よりも下のエリアに耐力壁を追加することで、重心剛心を近づけることができるのですが、そんなことをしたら先ほど述べた理由の通り意匠的に台無しになっちゃうので、

私がしたことは、
北側にもバルコニーを付けたしました。

こうすることで、北と南のバランスが「やじろべえ」のように釣り合おうとするんです。

このプランで再度構造計算をすると、
見事、NGが消えました。

最初のプランから耐力壁の量や質は一切変えていません。
北側にバルコニーを足すことで、重心剛心に近づいたのが分かります。
無駄に耐力壁を増やすことなく、
キッチンのごみの仮置き場だったり、バルコニー下にエコキュートやエアコンの室外機を置いて、雨・雪が直接当たりにくいようにする

ありがたい機能(北側バルコニー)を付け加えることで耐震等級3をクリアさせました。

構造計算なのに、構造じゃなくて意匠で構造をクリアする。
なんのこっちゃよく分からない言葉になっちゃいましたが、

この作業が時間にしてスタープラチナ並みの0.5秒ほど。

じゃなくて、

1回目のご提案前の出来事。

設計に理由があるとプランはみるみるスマートになります。
無事、素敵なワンルーム型のLDKが出来上がりました。
コンパクトですが、余計な壁のないすっきりとしたお部屋で、広いお庭を眺めると、とっても広く感じられます。

お庭を眺めたくなったでしょ。
明日お待ちしてますね。

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