当事務所では、積極的に無垢材をお勧めしていますが、強引な採用はしていません。
私が、個人的に無垢材のしっとりする触り心地(歩き心地)が大好きなので最初のご提案が無垢材になるんですけど、「無垢材の特徴」をお客様が、「好き」か「嫌い」か、「受け入れられる」か「られないか」を確認させていただいています。
と言うのも、お客様から「是非、無垢で」とお話を頂く場合があっても、会話を進めていくと、「汚れにくくて、傷が付きにくい無垢材で」というご要望の場合があるからです。
お客様のご要望は十分に理解できます。手入れが楽な住まいと言うのは、住宅に求められる当たり前の性能だと思います。
そこで、無垢材の中でもオークやナラ等は硬い木なので傷が付きにくい部類に入るんですが、ここで大事なのが、どの物差しで「汚れや傷」を気にしているかです。
お客様が無垢材の範囲で考えられているのか、それとも新建材並みの性能を無垢材に求めているのか。
大抵は後者です。また、傷が付きにくい=傷が付かないという事でもあるという事。
市場にも、無垢材にカッチカチのウレタン塗装がされた「自称無垢フロア材」があります。また、表面だけでなく、木の繊維の隙間にも樹脂を注入して、繊維が潰れないようにした超カッチカチのフロア材もあります。(私は、このフロア材を見ると、どうしても「人体の不思議展」を思い出してしまいます)
住宅に限らず、常に100%を求めるジャパンクオリティが常識になって、本来無垢がもつ特徴が否定されている様な気がします。
最初に書いたように、私が無垢材を好む理由はそのしっとりとする触り心地(歩き心地)です。これは、木の繊維の隙間の空気層が、人の熱や湿気を一時的に吸収するからしっとりするからで、逆に言えば、この空気層が潰れて傷になったり、空気層に汚れが詰まったりする訳です。
なので、この欠点をなくすために表面や繊維の隙間にウレタン系の塗装をしてしまうと、しっとりした触り心地は失われてしまいます。
よって、無垢材の特徴とは、欠点と表裏一体なので、「好き」か「嫌い」か「受け入れられる」か「られない」かの確認をさせていただいているのです。
また、新建材の方がメンテナンスは楽というイメージがあります。確かに最近は、あまりにもカッチカチ過ぎるので、ワックス不要のフロア材がありますが、通常のフロア材は、木の部分を保護する為の塗装部分を保護するためのワックスが定期的に必要になります。(ややこしや・・・)
それに対して無垢材の場合は、ある意味手入れのしようがないので、「放っとく」事になります。
厳密に語れば、桧などの油分の多い材を使用すると、その油が汚れをはじく機能を持っていたり、傷(打痕)についても、ある程度ならお湯を掛けるだけで戻ります。
但し、これも新建材と同じイメージは持たないでください。無垢材の特徴の範囲での話です。
だから、機能的な特徴を語ってマイナスイメージを払拭するよりは、傷や汚れを「あじ」と感じられる価値観を持っていただきたいんです。
お住まいになられてから1年が過ぎて、傷の付いていない新建材フロアを見た事がありません。傷が付きにくいはずの新建材フロアに傷が付いていると、やけに気になりますが、傷が付いて当たり前の無垢材のフロアでは、傷が付くたびに「またひとつ思い出が増えたな」位の構えで、変化を楽しんでいただきたいのです。
ちなみに、こちらが一般的な新建材のフロア材です。薄くスライスした木は繊維方向を直行させながら7枚折り重ねて、一番上はカッチカチに塗装してあります。
薄い板を折り重ねる特徴は、繊維の横方向に伸び縮みしない様になっているので、熱や湿度の影響によるフロア材同士の隙間や、フロア材そのものにひびが入りにくくなっています。
これを踏まえて当事務所では、実は無垢材のフロアではなく、板を3枚重ね合わせたフロア材をご提案しています。表面は、無塗装か薄くオイルを染み込ませている程度です。
このフロア材の特徴は、表面が無塗装の無垢材と同じ質感でありながら、断面が3層になっている事で、熱や湿度の影響を受けにくくなっている所です。
また、このサンプル材は常に窓際に置いているんですが、鉢植えを上に置いているので、日焼け跡がくっきりと出ています。
画像の鉢植えの手前がうっすらと白けていますが、そこがこのフロア材の最初の色です。
この日焼けする過程も「あじ」として楽しんでいただきたいのですが、この「程度」も、実際にお客様に見ていただかないと伝わらないと思うので、いつも、窓際に置いています。
以前、紹介したように、当事務所は床以外にも、ドアやテーブルも同じ材料で作ってあります。これは、手に触れる所をなるべく多く無垢の質感にしたかったから。
当然、よく触る所は汚れていますが、これも「あじ」かなと。私の生活記録みたいなもんです。
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