「宮澤賢治の食卓」
最終回は賢治の妹のトシさんが、亡くなるエピソードでした。小学校の国語で習った
『永決の朝』は、今でも暗証できるくらい胸に残って居ます。
賢治の気持ちが、このドラマを見ることで、あらためて強く実感できました。
トシは、自分の死後の賢治の
事を心配して、其のときが来たら、わたしてほしいと、兄の友人に頼みます。
案の定、トシの死を受け止められず落ち込む賢治。
トシは、24で逝ってしまった。教師を続けたかったのに病気で出来なかった。
トシは、何のために生まれてきたのか、トシの人生は惨めだったんじゃないか・・・
そう言う賢治に、友はトシに預かった手紙を渡します。
・・・・・・・・・・・・・
お兄様、お元気ですか。
詩や物語は作っていますか
あなたはいつか私を純粋だと言ってくださいましたね。
でも、それはまちがいです。私はいよいよ起き上がれなくなった今でさえ
あまたの欲望を捨てられずに居ます。
私は、教師をしてもっと生徒を教えたかった、もっと人様の役にたち、
あなたのように胸を張って生きてみたかった。
今一度、誰かを愛し、思い切り愛されてみたかった。
私はこんな小さな人間です。それでも、今こうして
人生を振り替えると不思議ですね、やっぱり幸せだった、
ああ、いい人生だったなあと心から思うのです。
それは多分あなたという兄が居てくれたから。
お兄様、
病床で過ごす事が多かった私にとってあなたは世界と繋がる窓でした
あなたの目を通して私はこの世界を見ておりました。
そんな私の人生は、おそらく他の誰にも劣らないほど、
深みと奥行きがあったと感じているのです。
だから、にっちゃ、生きてください。
夢を追いかけて下さい。
幸せを分かち合いたいと言う夢を追い続けてください。
あなたの夢は、私の夢でもあるのですから。
・・・・・・・・・・・