5月26日、参院本会議で介護保険法「改正」案が参議院本会議で強行採決され成立しました。
更なる負担増
今回の改定でまず、「現役並み所得(年収単身340万円以上、夫婦463万円以上)の人の介護保険利用料が3割になります。
全利用者の3%(全国で12万人)が該当します。
厚労省は医療と介護の負担の公平性を強調しましたが、今後は政令で所得水準を変更する事が可能で、医療と同じ3割負担が際限なく広がることが懸念されます。
また、介護給付金への総報酬割の導入が段階的に行われ、40歳から64歳までの第2号被保険者の負担が変わります。
協会けんぽへ導入していた国庫負担を段階的に廃止し、大企業が加入している健保組合等の負担に付け替えるものです。
2017年度予算で社会保障費の自然増6400億円を5000億円に1400億円削減するためのです。
利用料の3割負担は総報酬割と引き換えに導入されました。
「介護医療院」の創設 患者押し流す受け皿
2013年に決定された「地域医療構想」で高齢化のピーク2025年へ病床機能の再編・削減が進められています(134・7万床→119万床へ削減)。
介護療養病床(6.1万床)は2017年度末までに全廃する予定でしたがこれを2023年度まで延期しその受け皿として「介護医療院」が創設されます。
その内容は①「生活の場としての機能を兼ね備え、②日常的に長期療養のための医療ケアが必要な重介護者を受入れ、③ターミナルケアや看取りも対応するというものですが詳細は不明です。
病院や診療所が従来の名称をそのまま使用し移行してもよいとされています。
2017年3月の厚労省調査でも介護療養病床の85%が「在宅支援体制不備」や「治療中」で「退院が困難」という状況です。介護療養病床廃止の受け皿となり得るのか疑問です。
要介護認定率引き下げ推進か? 自治体に「財政支援」
2017年4月からすべての自治体で要支援1・2の訪問介護・通所介護が「総合事業」(安上りサービス)に移行されました。
しかしほとんどの自治体が該当する受け皿を確立できず現行サービスを実施しています。 その状況の下で介護保険からの「卒業」や、要介護認定率を引き下げた自治体に財政的な支援(調整交付金の傾斜的配分など)を行う仕組みをつくります。
各自治体に「自立」(介護保険からの卒業・給付削減)を恒常的に競わせる仕組みづくりです。これについては5月23日の参議院厚生労働委員会でも、全国に先駆けて「総合事業」が実施された三重県桑名市の「地域生活応援会議」のもとで、「介護保険から卒業させられたが、自立に至るのはわずかで受け入れ先がない。追跡調査では「卒業者の10・6%が死亡」という深刻な実態が語られており、こうした方向を進めていいのかきわめて疑問です。
「共生型サービス」の創設 障害者福祉との統合
2016年7月15日、「地域包括ケアの深化・地域共生社会の実現」へ、「我が事・丸ごと『地域共生社会』実現本部」が設置されました。
そのもとで「地域のあらゆる住民が役割を持ち支え合いながら自分らしく活躍できる地域コミュニテイを育成」するという、「共生型サービス」の創設が、介護保険法「改正」法案とともに提出されました。
制度・分野ごとの縦割りや「支え手」「受け手」という関係を超えて地域住民や地域の多様な主体が「我が事」として参画し、人と人、人と資源が世代や分野を超えて「丸ごと」つながることで住民一人一人の暮らしと生きがい、地域を共に作っていく社会の実現を目指すといいます。
社会保障の縮小・解体への新たな枠組み
これは厚労大臣自らが発言しているように「我が国の社会保障の基本は自助・互助・共助でありそれができないときはじめて公助がある」という言葉と相まって、公的に保障するべき支援を住民の活動(互助)に移し替えるものです。まさに公的福祉・社会保障の縮小・解体に向かう新たな政策枠組みです。
これにより障害児・者と高齢者サービスを合体させ「共生型サービス事業所」として一体的なサービスの提供が可能となります。
65歳以上の障害者の「介護保険優先適用原則の堅持・強化で介護保険と障害者施策との実質的な「統合」です。
法案は強行採決されましたが実施への具体化は各保険者(区市町村)です。厚労省は国会審議で「2015年度の改定(2割負担の導入など)の影響調査を行うと答弁しています。
負担増での生活困窮、「総合事業」への移行で新たな負担や要介護状態の悪化、事業所の閉鎖など地域の実態を把握し、地方自治法第1条「住民の福祉の増進を図ることを基本として、地域における行政を自主的かつ総合的に実施する役割を広く担う」自治体の役割を発揮し、悪政の防波堤となるよう論戦を進めていく決意です。