糖尿病患者の主な死因に関して新たな知見が示された。英・Imperial College London(School of Public Health)のJonathan Pearson-Stuttard氏らは、同国のプライマリケアデータベースから約31万人に及ぶ糖尿病患者のデータを抽出して疫学的解析を実施。2001~18年における糖尿病患者の主な死因はがんであったとLancet Diabetes Endocrinol(2021年2月4日オンライン版)で報告した。これまで糖尿病患者の主な死因は心血管疾患とされてきたが、近年は様相が異なり、がんが浮上していることが示された。
全死亡率は低下、原因別死亡率も認知症と肝疾患を除き低下
解析では、プライマリケアデータベースから抽出された2001~18年における糖尿病患者31万3,907人分のデータと英国国家統計局の死亡率データをリンク付けし、糖尿病有病率と発症率を算出するための母集団を形成した。
またポアソン回帰モデルを使用し、男性および女性の糖尿病患者群における年間の全死亡率と12項目の死亡原因(虚血性心疾患、脳卒中、その他循環器疾患、糖尿病関連がん、その他がん、腎疾患、肝疾患、呼吸器疾患、糖尿病、認知症、外傷、その他)別の死亡率を推定した。加えて、同じデータセットから年齢と性を1:1でマッチさせた非糖尿病者の集団を同定し、その死亡率を推計した。
解析の結果、2001年1月~18年10月にかけて、糖尿病患者群の全死亡率は男性で32%低下(1,000人・年当たりの患者数40.7人→27.8人)し、女性で31%低下(同42.7人→29.5人)していた。同期間に非糖尿病者群の死亡率も低下していた。死亡原因別に見ても、両群とも認知症と肝疾患を除いて低下していた。
がんによる死亡率の低下は非常に緩徐
ただし、こうした死亡率の低下傾向は疾患ごとに異なっていた。例えば、糖尿病患者群における心血管疾患(虚血性心疾患、脳卒中、その他循環器疾患)の1,000人・年当たり死亡者数は18.5人から7.5人と大幅に低下したものの、がん(糖尿病関連がん、その他がん)では10.5人から9.3人とわずかな低下にとどまり、両者の序列は逆転していた。
Pearson-Stuttard氏は「近年の医学的介入により、喫煙率や高血圧リスクなどが改善した影響から心血管疾患による死亡率は大幅に低下しており、その効果は特に糖尿病患者で大きかった」と説明。「対照的に、がんによる死亡率の低下は非常に緩徐であり、特に糖尿病患者ではその傾向が強い。今やがんは英国人、とりわけ糖尿病患者の主要な死因になった」と指摘している。
なお、糖尿病患者群と非糖尿病者群を比較すると、死亡率が高かったのは前者で認知症、肝疾患、呼吸器疾患であった。特に2018年時点の認知症による死亡リスクは、糖尿病患者群で非糖尿病者群の約2倍に上った(1,000人・年当たりの死亡者数はそれぞれ3.8人、1.8人)。
この点について、同氏らは「明確な関連性は示されていないが、糖尿病と認知症には喫煙や肥満、質の悪い食生活といった共通の増悪リスクが存在している」と補足している。
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