「(半島出身者に)差別的な待遇がされていた場所は確認されなかった。出身が違ってもフェアな条件でともに働き、子育てをし、生活をしていた場所だと感じる。右も左も関係ない。根拠をもって元島民の名誉の回復に取り組んでいく」
護る会の代表を務める青山繁晴参院議員は6日、視察後の産経新聞の取材にこう強調した。
この日、護る会の8人の衆参議員は長崎市の職員らの案内で、普段は立ち入り禁止の場所も含めて島内を視察した。軍艦島を巡る不当な主張に対し、往時の生活ぶりを体感することで、史料や証言など一次資料を基にした反論を充実させる狙いがある。地下の共同浴場や島に唯一あった小中学校の校舎や総合病院、高台の神社の跡地などを巡った。
視察後には、長崎港などで複数の元島民から戦時中や戦争直後の暮らしぶりも聞いた。
軍艦島は良質な石炭の採炭地で知られ、明治期から海底炭鉱として栄えたが、エネルギーの主役が石炭から石油に代わると、昭和49年に閉山し、無人島となった。脚光を浴びる機会は少なくなったが、平成27年に「明治日本の産業革命遺産」の構成施設の一つとして、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界文化遺産の登録を果たす。元島民の悲願でもあった。
軍艦島に関する韓国の絵本には、朝鮮半島出身の子供を収監するための牢獄が登場するが、護る会の視察でも、そうした痕跡は確認されなかった。青山氏は「酔っ払いの反省部屋としての『牢屋』があったとは聞くが、特定の出身者のためのものではない」と語った。
護る会がこの時期に現地視察を行った背景には、遺産の発信拠点である「産業遺産情報センター」(東京・新宿)が年度末に展示内容の改装を予定しており、韓国政府の反論が強まる可能性があるからだ。
また、同会は昭和30年にNHKが放送した番組「緑なき島」の坑内映像に疑義が生じている問題についても、今国会でNHK側を追及する方針を決めている。番組の映像は韓国メディアなどに「朝鮮人が差別待遇を受けていた」とする論拠を補完する使われ方をされている。
同会の山田宏参院議員は「小さい島でぎゅうぎゅう詰めになり、内地出身者と半島出身者が力を合わせて、暮らしていたのだろう。(半島出身者への待遇で)差別があった証拠もない。現場の空気感が分かったので、国会での質問に生かしていきたい」と述べ、不当な主張をただしていく考えを示した。
護る会のメンバーは、軍艦島の視察に合わせ、閉山前の活況を紹介する観光施設「軍艦島ミュージアム」(同市松が枝町)を見学し、地元メディアなどに記者会見も行っていた。(奥原慎平)