東京新聞
2014年12月19日 朝刊

経済産業省は十八日、太陽光や風力などを利用する再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度の方向を転換し、電力会社が買い取り量を制御しやすくする新しいルールを決めた。再生エネの普及や拡大に対する制約が強まる一方で、同省は古くなった原発を建て替えて残す道を模索している。安倍政権は衆院選後、急速に原発推進にかじを切っている。
新たなルールは十九日から実施するパブリックコメント(意見公募)を経て、来年一月中旬をめどに施行する方針。特に、太陽光発電への制約が強まる。電力会社が出力を遠隔でコントロールできるようになり、買い取り量も無制限に抑えられるようになる。
再生エネは現在、九州電など大手電力五社が買い取り手続きを中断、融資を受けて設備を着工したのに中断した再生エネ事業者もいる。新ルールになると、業者が不利な条件をのめば買い取ってもらえる道が開けるため、設備が無駄に終わることはない。
しかし、経産省と電力各社が示した再生エネの受け入れ可能量は、現実とかけ離れている。原発の再稼働のめどは立っていないのに、国は震災前の原発の稼働状況を前提に、受け入れ可能量を試算している。
経産省は省令で、原発でつくる電力は太陽光や風力より優先して使うと規定している。このため原発の稼働割合を増やすと、再生エネが入る余地は減る。
さらに、同省は古くなった原発の建て替えを模索している。原子力政策について議論する有識者会議の「原子力小委員会」では新増設や建て替えを求める意見があり、来年から議論を本格化する構えだ。
再生エネ問題に詳しい関西大システム理工学部の安田陽(よう)准教授は「ドイツやフランスでは、原発は最優先ではなく出力抑制の対象になっており、日本でも原発を抑えた場合にどれだけ再生エネを受け入れられるかという試算はするべきだ」と指摘する。
太陽光発電所を設置・運営する東京都内の事業者は「国が原発や再生エネを増やしたいのか減らしたいのか分からず、身動きをとりづらい」と不信感を漏らしている。
◆見直し案のポイント
一、電力会社が発電事業者に発電量の抑制を要請できる上限を年三十日から拡大
一、発電量抑制の要請単位を一日から一時間に細分化
一、発電量の抑制対象を五百キロワット未満の設備にも拡大。一般住宅の設備には配慮
一、来年四月以降、電力会社の買い取り価格決定を「接続申込時」から「接続契約時」に変更
一、電力会社は、予定通りに発電を始めない悪質な業者との契約解除が可能
2014年12月19日 朝刊

経済産業省は十八日、太陽光や風力などを利用する再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度の方向を転換し、電力会社が買い取り量を制御しやすくする新しいルールを決めた。再生エネの普及や拡大に対する制約が強まる一方で、同省は古くなった原発を建て替えて残す道を模索している。安倍政権は衆院選後、急速に原発推進にかじを切っている。
新たなルールは十九日から実施するパブリックコメント(意見公募)を経て、来年一月中旬をめどに施行する方針。特に、太陽光発電への制約が強まる。電力会社が出力を遠隔でコントロールできるようになり、買い取り量も無制限に抑えられるようになる。
再生エネは現在、九州電など大手電力五社が買い取り手続きを中断、融資を受けて設備を着工したのに中断した再生エネ事業者もいる。新ルールになると、業者が不利な条件をのめば買い取ってもらえる道が開けるため、設備が無駄に終わることはない。
しかし、経産省と電力各社が示した再生エネの受け入れ可能量は、現実とかけ離れている。原発の再稼働のめどは立っていないのに、国は震災前の原発の稼働状況を前提に、受け入れ可能量を試算している。
経産省は省令で、原発でつくる電力は太陽光や風力より優先して使うと規定している。このため原発の稼働割合を増やすと、再生エネが入る余地は減る。
さらに、同省は古くなった原発の建て替えを模索している。原子力政策について議論する有識者会議の「原子力小委員会」では新増設や建て替えを求める意見があり、来年から議論を本格化する構えだ。
再生エネ問題に詳しい関西大システム理工学部の安田陽(よう)准教授は「ドイツやフランスでは、原発は最優先ではなく出力抑制の対象になっており、日本でも原発を抑えた場合にどれだけ再生エネを受け入れられるかという試算はするべきだ」と指摘する。
太陽光発電所を設置・運営する東京都内の事業者は「国が原発や再生エネを増やしたいのか減らしたいのか分からず、身動きをとりづらい」と不信感を漏らしている。
◆見直し案のポイント
一、電力会社が発電事業者に発電量の抑制を要請できる上限を年三十日から拡大
一、発電量抑制の要請単位を一日から一時間に細分化
一、発電量の抑制対象を五百キロワット未満の設備にも拡大。一般住宅の設備には配慮
一、来年四月以降、電力会社の買い取り価格決定を「接続申込時」から「接続契約時」に変更
一、電力会社は、予定通りに発電を始めない悪質な業者との契約解除が可能