今日も地球は周ってる

管理人の趣味や日々のことを徒然に。宇宙戦艦ヤマト好きーが現在進行形。時々、六神合体ゴッドマーズ。ALの右オタも兼務

「僕のいた時間」 #11 再生

2014-03-21 16:01:05 | 春馬さん

「恵へ
  私のとなりには誰がいますか?
             恵より」
「拓人へ
  今を生きていますか?
            拓人より」


このメッセージが入ったシャンパンの瓶を膝に乗せ、拓人は冷たい雨が降る街を行く宛てもなく彷徨っていた。

「死にたい訳じゃない。生きるのが怖いんだ」

死にたくない、でも、自分の意思を表示できずに生きるとはどういう意味を持つのか。
拓人は自問自答を繰り返してるうちに、自分の存在が判らなくなってしまったのだと思う。
無意識のうちに、「自分の居場所」である自宅を出てしまった。
(着替えは誰がさせたとか、瓶を持たせたのは誰なのかと言う野暮な突っ込みはこの際ナシでw)

「今」を生きる事に一生懸命だった拓人だが、「今の先にあるもの」と直面してしまい自暴自棄になってしまったのかもしれない。

雨に打たれながら、心ここに非ずの拓人が工事現場にさしかかる。
出てきたトラックを辛うじて避けたものの、電動車椅子が道端の段差に乗り上げ転倒してしまう。
車椅子から投げ出され、倒れて身動きが出来なくなる拓人。
その傍らにはメッセージの入った瓶が…。

救急車の中で拓人は保温毛布と毛布をかけられている。
冷たい雨に打たれ、低体温状態になってしまったのだろう。
そして酸素マスク。
救急隊員の呼びかけに、薄らと目を開いた拓人は
「助けて…死にたくない…」
と、呟いてまた意識が遠のいてしまった。

「澤田さん」
の声に目を開けた拓人の視界に映ったのは、主治医だった。
目を動かすと、反対側には家族と、親友の守、そしてメグ。
拓人は救急車に乗せられていたのは覚えていたが、それ以前は何をしていたのか覚えていないと言う。
主治医は
「大事には至りませんでした」
と、告げる。

家族達が帰りメグと2人になってから、拓人の食事が運ばれてきた。
茶碗一杯分の粥。
「食べられる?今は無理しなくても、後で…」
と、言うメグの言葉に拓人はしばし逡巡し…ぐぅとお腹が鳴る。
「食べる」
と言う。
メグがレンゲにすくった粥を一口で食べる拓人。


ここまでのシーンは、前話(10話)で、人工呼吸器をつけるかどうか、決断できないでいた拓人が意を決するまでを描いていると思います。
救急車の中でうわ言のように「助けて…死にたくない…」と言ったのは、拓人の本心だったのでしょう。
車椅子から転げ落ち、冷え切った身体、苦しくなる呼吸。
拓人にはそれが非常に恐ろしかったのだと思う。
救急車に乗る以前の事を覚えていないのは、どちらの覚悟も出来なかった自分はもういなくなった。
と、言う演出だと思います。

そして粥を食べるのは「生きる」と言う拓人の決意の表れだと。
自分の身体が生きたがっていると、拓人は思ったのでしょう。
あの時の拓人は、怯えも何もなく毅然とした表情をしていると思いました。


見舞にきた守と陽菜。
守は拓人が右腕をある程度自由に使える補助器具をセットしながら話す。
「こだわりのカフェを作りたいんだ。コーヒーカフェイン抜きとか、コーヒーぬるめストロー付きとか」
その言葉にハッとする拓人。
守の未来に自分の存在が関わっている。
マンションの隣の中学生のスミレもそうだった。
工学部に行って、自由に歩く為の歩行器具を作るのだと言っていた。
そこにも自分が関わっている。
拓人は、以前スミレから受けた学校の講演会の依頼を受けることに決める。


陸人はバイト先で同じ趣味の人と出会う。
嬉しさのあまり、赤飯を買ってくるが、自分の分しか買ってきていない事には気がつかない。
それでも、そんな陸人を微笑ましげに見守る拓人とメグ。
ゆっくりと、拓人も成長しているのだ。

メグはALSに必要とされる食事の栄養学を独力で学ぼうとしている。
弟は恐竜研究の為に入り直す大学の受験勉強に励む。
院長の父は、自分の病院を起点に、難病患者の診療などを地域連携で補助する試みを始めた。
守は自分の店を持つ為に勉強を始める。
陽菜のお腹には新しい命が宿る。
向井(シゲ先輩)は、子供達にサッカーを教えるようになっていた。

自分と関わり、色々な思いをした人達が新しい道に向かって歩き始めている。
それを知った拓人は嬉しくて、そして満たされた気持ちになったに違いない。
夜、眠っている筈の拓人の小さな声に起きたメグの見たのは…
眠りながら微笑んでいる拓人だった。

公園で拓人は一人佇んでいた。
池から飛び立つ水鳥が水を蹴る音。
芝生に咲く水仙の花。
鮮やかな黄色の菜の花に寄ってくる蜂の羽音。
咲きほころぶ梅の花の香り。
羽ばたく鳥達の鳴き声や羽音。
木々の葉ずれの音。
そして、陽射しの温もり。
身体が動かなくなっても、声が出せなくなっても、自分はこういうものに囲まれて生きて、生かされる。
そして、周囲の人達の温もりや助け、前を向いていく気持ちにも。

拓人は講演会で、自分の本心を曝け出した。
それは中学生達に聞かせると言うよりも、まるで、自分の過去を再確認するようでもあった。
少しずつ奪われる身体の自由。
失う度に増える目標。
自分は何のために生まれてきたのか。
これから自分に何が出来るのか。
そして、拓人は覚悟を決めた。
「生きる」覚悟を。
それは「僕のいた時間」の全てが、これからの自分の生きる道を支えてくれると。


人工呼吸器をつけた拓人はもう、顔の一部しか動かすことが出来なかった。
医師に紹介された機械を通し、呼吸器を装着する前に予め録音しておいた自分の声でメグと会話をする。
それは、人工呼吸器を付ける前と大して変わらない日常だった。

人工呼吸器を装着する前に新たなメッセージを入れたシャンパンボトルを埋めてから三年。
拓人とメグは、あの海岸に再度来ていた。
瓶を掘りだすメグ。
2人が書いたメッセージは…

「拓人へ
  私のとなりにいてくれてありがとう
               恵より」
「メグへ
  オレのとなりにいてくれてありがとう
               拓人より」

*******************************************************

最終回は最初っから涙腺崩壊してました。

「ほら泣け、泣けるだろww」
と言われてるような気がするぐらいに(苦笑)

細かな台詞や仕草の全てが拓人の最後の覚悟に繋がってるんですもん。
もう気が抜けないったらありゃしない。
でも、入院時に拓人がお粥を食べたシーンで
「拓人は人工呼吸器を装着するな」
と、はっきり判りました。
保さんはミキサー食を拒否し、人工呼吸器を装着しない生き方を選びました。
拓人はお粥を食べた。それは保さんと違う道を選んだ事を示していると思ったんです。
今までのストーリーの全てがこの最終回への伏線だったのだと思うと、本当にすごく緻密に練られたドラマだと再確認しました。

陸ちゃんも良いキャラに育ちましたねー(笑)
でも、人のスマホをいきなり取り上げちゃダメでしょーがww
講演会の「あと15秒」とかw
もう、本当に良いキャラだわー(笑)
でも身近にいたら蹴り入れると思うけど(苦笑)

兄弟のお父さんも、最初はすっごく冷たそうで、世間体しか考えていなかったのに、
難病患者の地域連携や補助の提案をするなど、拓人がいたからこそ本来の医師と言う目的を見いだしたのかも。

お母さんは拓人の頭や頬をワシャワシャと子供のように撫でまくって褒めてあげて。
ずっと忘れていた母親としての気持ちを素直に表してたなあって。

マモちゃんと陽菜ちゃんは「こだわり」の店を持つ為に頑張ってる。
赤ちゃんも授かるし。

シゲ先輩も、すっかり吹っ切っていて、まさか子供達のサッカーのコーチするなんて。

家具屋のバイト先輩は社員になっていて、障がい者雇用のチームリーダーしてるし。

スミレちゃんも、目標を見つけた。

一見普通に見えてたけど、それぞれ問題を色々抱えていた。
それが、拓人がALSを発症した事がきっかけで、自分達を見詰め直す事になり、ひいては将来を考える事に。
拓人のALSは話の軸として大切。
それを踏まえた上で、拓人の周囲の人達が新しく出発するきっかけとなった。

このドラマは一人のALSという難病に侵された青年を描きつつ、その周囲の人々の再生を描いた
群像劇であり
ヒューマンドラマでもある
ものだと思っています。

基本的にTVドラマって嘘丸出しの綺麗事や、過激な言動などでつまらない物ばかりでした。私にとって。
だから、ドラマはろくに見た事がありません。時代劇や大河ドラマなどを気が向くとかいつまんで見ていた程度。
そんな私が1話から最終話まで、常にリアルタイムで視聴してなお且つ録画までしたドラマ。
リアルを描いたフィクションとして、非常に素晴らしい出来栄えだったと思います。

三浦春馬さんは、去年のラスシン辺りで何故か突然ハマってファンになってしまったのです(苦笑)
ハマった理由はここではちょっと書きかねますけど(苦笑)←ヲタ過ぎて書けないww
ラスシンでも「芝居が上手いなあ」と思っていましたけど、「僕いた」では彼の役者根性をガッツリ見させて貰いました。
10話から最終話でその辺りが本当によく判ります。
例えば、声。
10話の前半はまだ普通に話しているのですが、それが次第に力無い声になっていき、やがて抑揚もなくなります。
講演会の頃には声のトーンも落ちています。
再び瓶を埋めに行く頃には抑揚も無くなって、もう呼吸筋も声帯を動かす筋力さえも落ちていることが判ります。

撮影はバラバラなのに、計算して演技しているのだから凄い。
前後の繋がりを細かくチェックして、きちんと合わせているんですよね。
舞台のように一気に数時間で演じるのならば、気持ちのテンションや力の入れ具合抜き具合も調節しやすいですが、
ドラマのように、放映順でなくバラバラに撮影していく中でそのテンションや演技の調節をつじつまが合うようにしている。
プロだから当たり前とは言え、最近はプロの俳優と呼べる若手が少なくなってきているので、尚更、彼のプロ根性がハッキリと見て取れます。
(ジャニがドラマに出てても、彼らの事は私は俳優と看做してないですから。岡田准一氏を除いて)

マモちゃんの風間さんはジャニーズでありながら、俳優一本でやってきている稀有な人。
17歳の時には「遊☆戯☆王」で武藤遊戯を演じていました。
私は彼の事を新人の声優だと、つい先日まで疑っていませんでしたw
と、いうかマモちゃんの中の人が遊戯の中の人だと知ったのがつい先日だったと言うww

陸ちゃんの野村くん。陸人を演じた事できっと彼の存在感は、俳優界の中で増したと思います。
視聴者が「本当に嫌な奴」と言うぐらい、嫌な陸人を演じてましたもの。
私も最初の頃の陸人は本当に嫌いでしたw

斎藤工さんは、実写版ヤマトに出演してらしたので名前は知っていました。
「あ、山本の人だ!」てのがキャストを見て最初に思った事w
あの時は芝居らしい芝居もあまり無くて、敬礼して散っていきました…
惜しい。
しかしまあ、この方もいい役者になってらして♪
嫌味な感じも、最終話の爽やかさもピッタリハマる。自分を出さないと仰ってるだけに、上手いです。

多部ちゃんは、もう言わずもがな(笑)
CMでも一緒だし、この2人がいるのはごく自然な雰囲気。
見ていて違和感が全くないカップルでしたね♪

主治医の先生は、今の大河で天皇をやってらしたと言うww
そのギャップに大爆笑。
飄々としていても、常に冷静な医師を何とも上手く演じていらっしゃった。
「はい」の一言。足をポンと叩く仕草一つ。
どれを取っても無駄が無く、効果的。

小市さん。実は私とあまり年齢が変わらないそうでビックリしました(苦笑)
良い感じで老け役をやられましたねえ。
講演会で一筋涙を流した演技が印象に残りました。

原田美枝子さんと浅田美代子さんは言うに及ばず。
同年代のお二人が本当に対照的な、でも、それぞれらしい母親を演じていらっしゃいました。

陽菜ちゃんは、モデルさんなんだそうですね。
でもサラリとした自然な演技には無理感がなくて好感が持てました。
これから頑張ってくれるかな?
エドが好きというのはご本人の趣味だとか(笑)


脚本の橋部敦子さん。
実は同い年だと判りました(苦笑)
だから、台詞や色々な点で何もかもがストンと腑に落ちるわけだ。と。
同じ時代に育ち、同じような音楽を聴き、番組を見てきたから判る、同世代の見えない繋がり。
そんなものを感じました。
橋部さんの脚本は無駄が無く、台詞の一つ一つが思わぬ伏線だったりするのが、
私達世代が子供の頃に良く観たドラマやアニメの脚本を手掛けた藤川桂介氏に似ていると感じました。
藤川脚本、好き世代なんです、私。

そして制作スタッフの皆様、
日本ALS協会の皆様、
素晴らしい作品をありがとうございました。

TV嫌いだった私をここまで夢中にさせた初めてのドラマです。

本当にありがとうございました。