汐が砂粒を洗って行くように
時という恩寵が哀しみを少しずつ
剥がすというのだろうか
それでもこの先
どんなジブンになったとしても
節目節目に掌を合わせる日々は
生涯 変わらない
いつでも 傍に ……
『 潮の匂いは。』
石巻西高等学校 文芸部 片平 侑佳(平成25年卒業)
潮の匂いは世界の終わりを連れてきた。
僕の故郷はあの日波にさらわれて、今はもうかつての面影をなくしてしまった。
引き波とともに僕の中の思い出も、沖のはるか彼方まで持っていかれてしまったようで、もう朧気にすら故郷の様相を思い出すことはできない。
潮の匂いは友の死を連れてきた。
冬の海に身を削がれながら、君は最後に何を思ったのだろう。
笑顔の遺影の口元からのぞく八重歯に、夏の日の青い空の下でくだらない話をして笑いあったことを思い出して、どうしようもなく泣きたくなる。
もう一度だけ、君に会いたい。
くだらない話をして、もう一度だけ笑いあって、サヨナラを、言いたい。
潮の匂いは少し大人の僕を連れてきた。
諦めること、我慢すること、全部まとめて飲み込んで、笑う。
ひきつった笑顔と、疲れて丸まった背中。諦めた。我慢した。
“頑張れ”に応えようとして、丸まった背中にそんな気力がないことに気付く。
どうしたらいいのかが、わからなかった。
潮の匂いは一人の世界を連れてきた。
無責任な言葉、見えない恐怖。
否定される僕たちの世界、生きることを否定されているのと、同じかもしれない。
誰も助けてはくれないんだと思った。
自分のことしか見えない誰かは響きだけあたたかい言葉で僕たちの心を深く抉る。
“絆”と言いながら、見えない恐怖を僕たちだけで処理するように、遠まわしに言う。
“未来”は僕たちには程遠く、“頑張れ”は何よりも重い。
お前は誰とも繋がってなどいない、一人で勝手に生きろと、何処かの誰かが遠まわしに言っている。
一人で生きる世界は、あの日の海よりもきっと、ずっと冷たい。
潮の匂いは始まりだった。
潮の匂いは終わりになった。
潮の匂いは生だった。
潮の匂いは死になった。
潮の匂いは幼いあの日だった。
潮の匂いは少し大人の今になった。
潮の匂いは優しい世界だった。
潮の匂いは孤独な世界になった。
潮の匂いは ___________ 。
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この度の大雨の被害に遭われた方々に
心よりお見舞い申し上げます。
被害がこれ以上拡大しないようお祈りしています。
そして
あの時の教訓が少しでも多く活かされますように ...。 合掌
あの日から4年。今日で五回忌を迎えました。
哀しみは癒えるコトなく
ますます浸潤していくようにも感じながら過ごしています。
年月を重ねるという事は問題も多様化してくること。
想いを言葉にすることが
年々 難しいように想えてもきています。
震災で亡くなった方 1万5891人
行方不明の方 2584人
その後の体調悪化や自殺などによる関連死 3194人
その現実を決して忘れる事なく
私たち遺された者達は前へ進むしかないのです。
心を寄せてくださった方々に
この場で感謝を伝えたいと想います。
風化が進む中 復興への道のりは
まだまだ遥か遠いものです。
どうぞこれからも
応援よろしくお願い致します。
合掌