DEEP SEAα

ココロの軌跡

Beautiful Colors

10円の重さ

2006-10-17 | 遠い日の海(過去エントリー)
郊外へ車を走らせると,小さな無人販売所がよくあって,高原野菜などが一袋100円とかで売っている。

安く買えるのは有り難いけど,大根が5本200円とかだと少人数の家庭では消費しきれないのが難点。


先日,1本30円で大根を売ってる所を見つけ,早速今日行ってみた。

驚いた事に今日は特売日で更に安い20円

買おうとしていたら奥からおじさんが出てきて,1本おまけにあげるよと言う。
そう。1本10円ということ。


そこの地域は,昔から飢饉が起きた不毛の土地。
酪農は盛んだが,米はあまり採れない。
大根や大豆ぐらいしか育たない,過疎の進む町。

丹精込めて育てた作物でも,規格に合わなければ売り物にはならない。

そんな外かれた野菜が今日の大根。

譲ってくださったおじさんは,腐らせて捨てるよりは誰かに食べてもらいたい。
そう考えているのでしょう。


燃料費が上がり,医療費も上がり,自給自足に近い暮らしをしてる人たちでさえ,決して生活は楽ではないんです。
10円,20円だって惜しいのが本音の筈。

でも,昔から言います。
持ってる人ほど締まり屋,無い人ほど施すと…。


冬支度が始まっている山の麓で育てた大根。

腰を曲げ,冷たい水で泥を洗い流す手間をかけ,たった10円で売る。

官僚と呼ばれる人種には,絶対にわからないであろう,現実。
下座に生きる貧しき者達の心根。


その根底にある尊い思いは,正に仏心だと私は思います。


どうか良いことがありますようにと,おじさんの背中に心の中でソッと手を合わせました
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十五夜

2006-10-06 | 遠い日の海(過去エントリー)
生憎の雨降り。

『中秋の名月』 は望めそうにありません。

皆さんの辺りでは如何でしょうか?



十五夜には沢山のお供え物をし,名月を眺めながらご馳走を頂くのが,とても楽しみな子供時代でした。


今でも月見台こそ設えないものの,簡単なお月見はしています。



数年前の丁度今頃,正確には十六夜(いざよい)の月の夜,釣りをしに海に行っていて,高台に登り月を眺めた事がありました。


ゴォーっと音でもしそうに水平線から昇ってくる月は,物凄い迫力で私を圧倒しました。


海面に真っ直ぐに伸びた月明かりは,海を渡り月まで歩いて行けそうな気にさせるほど,力強い光でした。


私の頭の中では,ベートーベンの『月光』がリフレインで流れて……。

それまでの『月光』のイメージは,石の回廊に差し込む冷たい月明かりであったのに,海に光が差し込むその光景があまりにもベストマッチして,私のハートを鷲掴みにしたのでした


月に逢えない今夜だけど,久々に聴いていてみることにしましょうか。

『月光』を。。。。



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ルーツの海

2006-10-05 | 遠い日の海(過去エントリー)
真夏でも僅かな日数しか海水浴が出来ない程,冷たくて乱暴な海岸。

そして限りなく瑠璃色に近い水の色。


私のルーツの海・・。


私がこの世では会えなかった曾祖父が,まだ幼かった私の母をここに良く連れてきたらしい。

若かった祖父や祖母も,この潮風に吹かれ波の音を聴いたのだろうか。

それは遠いけれど近い,過去の記憶。

身体の細胞に染み込んだ命の繋がり。

想像の中の残像に私が居なくても,私の身体を形作る細胞は,この海から受けた恵みで満たされている。

五感を超えた本能が,懐かしさよりも切ない,愛しいざわめきを呼び起こす。



私はここにいます・・。

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