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絵じゃないかおじさんぐるーぷ
時間も忘れ、己が人間であることも忘れて、
カブトガニになりきって、
生活していたものですから、
とんとわかりませんでした。
そんなある日のこと、陸地が見えてきました。
そこは、和歌山県の熊野浦でした。
上人は、海の生活にも求めるものは、
結局得られませんでしたので、
再び人間の姿に戻りました。
そして、
熊野の山の中を、
修業の地を求めて、歩き続けました。
そんな上人の目の前に、
滝が飛び込んできたのであります。
上人の育ったインドの地方は、
平原ばかりで、滝などはありませんでしたので、
珍しくてなりませんでした。
多くの人々が、川の中に入り、
身体を清める姿は、
小さい時から、見続けていました。
上から落ちてくる水に打たれたら、
もっと効果があがるのではないかと、
ふとお思いになりました。
それからというものは、
来る日も来る日も滝に打たれて、
一心不乱に修業されました。
それを、
イーリーは、
ぢっと見守っていたのです。
つづく