母は眠っていた。今朝はいつもの席で朝食を摂りちょっと疲れたと言ってベッドに戻った後僕が着いた。
10分15分その寝顔を見ていたがもう立とうとした時に目を開いた。
あーあんたか
今芝居を見てた。長谷川一夫が出ててもうほんとに楽しかった嬉しかった
割子弁当も美味しかったし
ありがとな 幸せだ
息苦しさも寂しさも悪いものを全部追い出して
母は微笑んだ。
そしてありがとうと言った。
御園座で観劇している夢を見ていたのだろう
簡易保険の芝居を見れるコースにずっといたから何年も半年に一回くらいのペースで行かせてもらってた
またバスに乗ってどこかに団体旅行もしていたらしい
美味しかった、楽しかったを繰り返し、またありがとうを言う
楽しいことを経験するとこういう時にでも再経験できるのでしょう
なんか僕まで嬉しくなって目頭が熱くなった。
僕の方こそありがとうと思った。
もらったお土産がそこにあるから持ってってな。
別れる時に母は言った。
物は何にもなかったけどその気持ちこの胸にもらったよ。
あかあさん ありがとう。。