
五本目 サウスダブルリーフ
海豚に別れを告げて本日のポイントに到着。アンカーリング。
ジュニアが海底の地形図を展げた。英語とたどたどしい日本語でのブリーフィング。
『京大、お前の出番だろう』 しかし通訳は私が担うことに。(実際には通訳では無いのだが)
英語の教科書が墨で塗り潰されていた時代の教師に教わった英語力では聴き取れない。
ジュニアの声は無視。海図は見慣れているので理解できている。
ところどころに書き込まれている魚も和名と英語で記憶していたのでだいたい解る。
「ココハ ガーデンイール ガ イマス。ガーデンイール シッテル?」
四人が頷いた。京大が私の方を視て『??????』
「和名はチンアナゴ。顔つきが犬の狆に似ていることが和名の由縁。
イールはウナギのことだが英名はけっこう大雑把で細長くヌメッとしたものは殆どイールで片付けられる。
まあ、ウミヘビはイールとは言わないらしいが・・・。
砂の中から身体半分を覗かせて揺れている。それが庭の草のように視えるのでガーデン」
「大きさはどれくらいですか?」
「指の太さくらいかな。それから臆病な魚だからすぐに砂の中に隠れてしまう。身体を低く保って静かにゆっくりと近づくんだよ」
当然バックロールエントリーだと思っていたらタンクをセットしたBCは後から投下するとのこと。
小型艇なのでエントリー時の反動を極力避けたいようだ。
講習?の京大が乾舷を跨いでまずエントリー。
いつもならラストエントリーとするのだが、たぶん女性達にはサポートが必要だろうと思い空身でエントリー。
機材が投げ込まれた。私は手慣れていた。素早く装着。
バディがエントリー。装着を手伝った。
直美はどうにか一人で装着。美樹は手こずっていた。サポート。
ボートに寄ってスキッパーからハウジングを受け取り潜行。
バディはほぼ問題は無いので二人の娘と京大に注意をはらう。
確かに潜行状況を視ると三人ともビギナーのそれだ。
京大はジュニアの手を煩わせている。
本日はバックアシストがいないので私が務めることにしよう。
イカリからも『あとはよろしく』と言われたことだし。
水深15m。底質は当然砂である。ジュニアの指さす方向にガーデンイールが揺れている。
海底すれすれに移動開始。隣を視るとフィンキックで砂を巻き上げている。
こういう時こそ見せ場である。水平開脚キック。振り返ると私の後方には巻き上がった砂は無い。
しかしそれに気づくギャラリーもいない。バディを突き『後ろを視ろ』と伝えたが分かったのかどうかは疑問である?。
※ 接近することが難しいので満足行く画はめったに撮れない。見出し画像は沖縄で撮影した画。参考のために掲載。
ガーデンイールの畑を通過して暫く行くと岩場に達した。やはり魚が多い方が楽しい。
起伏に富んだそこを通過。ドーム状の岩。小休止。
記念写真でも撮ってやるかと女性三人に寄れとサイン。バディは私の意をすぐに気づいた。二人を手招き。
だがこの時どうしたものか直美が突然浮上。ジュニアがすぐに後を追った。
切羽詰まった状態では無かったのでそのまま撮影。バディと美樹でまず一枚。写真の上部→が浮上した直美のフィン。
↑ 浮上した直美の写真。不名誉な記録であるから喜ばないかもしれないが今となっては懐かしい思い出だろう。
※なんとか三人揃ったのであらためて記念撮影。左から直美・美樹・バディ。
再び移動。ジュニアの移動速度は少々速すぎる。
本日のパーティは講習?一名。ビギナーレディス三名。フォト一名なのだからペースを考慮すべきなのだが・・・。
まだ分からないのだろうな体力の剰ってるジュニアには・・・。
京大はジュニアにぴったりくっついていた。
バディは海中のコンディションが良いので殆ど心配は要らない。一年の間によくここまで成長したものだ。
問題はお嬢さん方だ。興味のある対象物を視つけると周囲に気を配る余裕は無い。
『どうした?。今回のテーマのバディシステムの確立は・・・?』
バディに『先に行け』と合図。二人を促して移動。ついでに二人の残圧チェック。私より残量は多い。エアに関しては心配要らない。
・・・・・・
エキジット。京大とバディが先行して浮上。娘二人は何故かゆっくりしている。
浅瀬をずっと移動してきたので残圧停止は考えなくても良いのだが。
上が空いたので二人を促して浮上。
「スタッフ ハ チョット マッテ」とジュニア。もとより承知。艇上のバディに声を掛けハウジングを預けた。
両手が使えれば私はマーマン。美樹が梯子に手を掛けたので左のフィンを引きはがす。右はジュニアの受け持ち。
続いて直美も同様に処置。続いて私が乗船。
ジュニアが私に続いて乗船しようとしたので掌を広げて制した。
梯子を外す真似。洒落が判らない奴ではない。
・・・・・・
ファブリックスーツを脱ぎ捨てて再び海へ。尿意を無理に我慢する必要ない。
ニ三十メートル泳いで立ち泳ぎ。スキッパーも洒落っ気のある男だ。エンジンに火を入れた。
「さようならー」女性達が手を振っている。立ち泳ぎのまま私も両手を振る。
・・・・・・
私がボートに帰るのを待ってエンジン始動。ボートは再び海豚の群れの中へ。
つ づ く