
二十四日
朝食を済ませた。NHKの連続TV小説(ひらり)を視ながら準備を始めた。
器材は昨日のままメッシュバッグの中にあった。
水着に着替えるだけだから私はいたって簡単。数分で終了。
九時数分前。バッグを廊下に出して隣の部屋をノックした。
「四品川!。またスリッパで出かける心算か?」
九時十五分。車が来た。・・・港へ到着。見覚えのあるダイビングボート。
S氏が女の子を四人乗せてやって来た。
・・・・・・欠航。・・・・・・!?
定期船で慶良間へ行くと言う提案もあったがこの海象では妹達が持たないだろう。
「ビーチエントリーでかまいませんよ」と告げた。
※海象(カイショウ)海で発生する自然現象の総称。気象と異なり海流・波・潮汐なども含む。
海象(セイウチ・カイゾウ) 鰭脚目セイウチ科の哺乳類
海馬とも書くがタツノオトシゴとか複数の意味があるので控えた方が宜しいかと。
・・・・・・・・
大渡海岸。十ヵ月前、海洋実習を行った懐かしい海岸だ。
早速セッティング。ウェットスーツに着替えた。吹く風が冷たい。
四人の女の子の内二人は講習。昨年の四月をあらためて思いだした。
インストラクターKOが二人を連れて早々とエントリー。
我々のガイドは前回も、お世話になったKAZU。眉が濃くて琉球人特有の顔つきをしている。
「ぽーさん。スノーケルは?」
「忘れました」バッグに詰め忘れたようだ。
「これを使ってください」自分のマスクからそれを取り外そうとした。
「大丈夫ですよ」
「いえ、使ってください」
重い器材を担いで移動を始めた。
私はいつでも最後尾に付くことにしている。
四品川のタンクがずれていた。おニューのBCだったからベルトがよく締まっていなかったのだ。
手伝って再装着。
足場の悪い岩場を延々と歩かされた。
潜行。水が濁っていた。本日は期待できない。
KAZUが手招きをした。ピラミッド状の螺旋。
イバラカンザシ(英名:クリスマスツリーワーム) だ。
雑誌ではおなじみだったが実物を眼にするのは初めてだった。
鮮やかな黄、そして青。何ゆえにか個体により極端に色が異なる。
生物学的な知識をひけらかせて貰えるならばイバラカンザシとは環形動物。
釣り餌に使うゴカイの仲間である。本体は岩や珊瑚を穿った石灰質の管の中にある。
一対の原色のクリスマスツリーは鰓冠と言い、呼吸と採餌を担っている。
ニコノスを構えた。
しかし、私のニコノスはマクロ仕様ではない。
僅か2cm程度の小動物にはあまりにも無力だ。結果は期待できないが撮影。
※写真は後日撮影したものです。
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やはり冬だった。水中ではさほど感じなかったが風にあたると急激に体温が奪われて行く。
急いでウェットスーツを脱ぎ捨てて着替えた。
ヨット用のオイルスキンを羽織った。どうにか寒さをしのげそうだ。
妹達も厚手のウィンドコートを羽織っている。
だが二人の女の子は初心者故にか、それとも沖縄故にか甘く見て用意を怠ったのだろう。
寒さに震えていた。
昼食。やはりお決まりの弁当。早々に胃の中に収めた。
後はただただ休息である。
・・・・・・
二本目は昨年海洋実習を行ったポイントである。
直径約20m、水深8mのホールになっている。
潜行。透明度は全く期待できない。
しかし、魚影は豊富だ。セグロチョウチョウウオが早速に顔を出した。
ニコノスを構えてゆっくりと後を追う。岩陰に逃げ込まれた。
KAZUがホールの端に向かう。全員が後を追う。
岩の裂け目。人一人がやっとくぐれる程の大きさだ。ここを抜けようと云うのか。
KAZUが先行。妹グループがそれに続く。女の子二人、そして私。
しんがりはK田(普段はサービスで事務。間もなく三十路)だ 。
女の子二人はやはり初心者だ。頭上を全く気にしていない。
・・・・やはりぶつけた。
穴の中央まで来た。異常に濁っている。
後で聞いた話によると妹得意の水中嘔吐が原因であった。魚が集まっていた。
再びホールへ。行方不明になる恐れはない。
フリー潜行。
私は一人離れて魚を追う。
ミノカサゴ(英名はライオンフィッシュ)だ。
この貴婦人(雌雄は判別できないが)は少々小さい。幼魚か?。だが優雅さは一人前だ。
ミノカサゴの撮影を続けていたら足を掴まれた。
振りかえった。K田だった。
残圧100でエキジット。
振り返ったら妹が吐いていた。『またか』
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連日のトランプ大会。今宵もYKはご機嫌斜めである。
ペナルティがだいぶ貯まったのでアルコールの買出し。
呑兵衛の四品川が妹と一緒に勇んで出かけて行った。
つ づ く
※掲載順位がランダムなのでダイビング記事の目次を作りました。
年代順となってます。
ダイビング編目次