厨房とレジに舞い降りた、三人の勇者
バイト君・H 〜弁当地獄からの生還
我らが厨房の勇者、バイトH君。
かつて彼は、「弁当作り」という名のラスボスに挑み、
心も体もズタボロになっていた。
朝、目覚めれば謎の体調不良。
出勤途中で倒れ、
「吐きそうで、行けません」
と、泣きながら電話をしてきた。
弁当の呪いは、もはや物理攻撃レベル。
「もうダメかもしれない」
そんな儚い表情で立ち尽くしていたH君。
しかし、現実は残酷だ。
「厨房担当から外れる?
そんな選択肢は、君にはない」
唯一与えられたのは、
ただひたすらに「慣れる」という修行。
怯えたちいかわみたいな表情で、
米を計る手も震えていた。
あまりにも痛々しい彼の姿を、ずっと見てきた。
でも、H君は諦めなかった。
1ヶ月間、心を燃やし続け——
今や、美しいお弁当を生み出す匠へと成長!
調理パンも惣菜も、完璧な仕上がり。
H君はやればできる子だった。
その弁当は、まさに成長の証。
光り輝くえび天が彼の努力を物語っている。
H君はただの弁当職人ではない。
トイレ掃除も率先してやる、心優しきヒーローでもある。
誰もが避けるそのミッションに、
彼は黙って立ち上がる。
さらに、袋詰め中もサッと手を差し伸べる。
「H君、云ってないのに手伝ってくれるの?」
天使か? 君は天使なのか?
でも、たまに不安げな表情で周囲を見渡す。
怯えたちいかわ、再び登場。
その姿が心配で、つい声をかけたくなる。
「大丈夫、H君。えび天もう襲ってこないよ」
そんなH君は3月で契約満了。
その後は、専門学校に進学する。
若さって、本当に素晴らしい。
未来がまぶしい。眼が開けられない。
でも、どんな道を進んでも、君の心の中には、きっと——
「弁当との死闘」という忘れられない経験が刻まれているはず。
H君、君は立派に成長した!
ありがとう。そして、グッドラック!
バイト君・Gのリズム人生 〜カウンターは俺のステージ〜
我らがバイト、G君。
その爽やかな笑顔と、謎のビート感。
私はずっと思っていた。
「高校生だよね?」
…違った。
バイト掛け持ちのフリーターだった。
でも、それ以上に気になるのは、彼のクセ強めな行動。
G君は、カウンターに立つと突然——
カタカタカタッ!
両人差し指をまるでドラムスティックのように振り、
カウンターを華麗に叩き始める。
ついでに、頭もリズムに合わせて小刻みにヘドバン。
その姿は、「カウンターのドラムマスター」そのもの。
「…歌うの? ついに歌うの?」
期待に胸を膨らませて見守る私。
…歌わない。
一度も歌わない。
むしろ、逆にプロ意識すら感じる。
しかし、このノリノリG君にも、「ちいかわ時代」があった。
そう、バイト初期。
レジの前で固まり、
「あ…あ……お、お釣り…お、おつりぃぃ…」
と、あの切なげな表情で怯えていたのだ。
あの頃は、リズムどころか、
心拍数すら乱れっぱなしだっただろう。
でも、人は成長するもの。
新しい仕事を教える時、私はこう思っていた。
「大事なことはメモしないと忘れるよ?」
だが、G君は——
絶対、メモを取らない。
ポケットからノートも出さない。
ペンも持たない。
ただ、「ほうほう、なるほど」というノリで聞いてるだけ。
「おいおい、大丈夫か?」
…大丈夫だった。
完全に脳内インプットしていた彼。
次回からは完璧にこなす。
君の頭の中、どういう仕組みだ?
私はメモがなければ、秒で記憶喪失。
「あれ?昨日何食べたっけ?」レベル。
でも、G君は違う。
これも、若さゆえなのか。
今やG君は、余裕のある立派なクルーさん。
レジも陳列も、なんでもこなす。
焼き芋をしこむのも忘れない。
指示なしでも、的確な判断で、
中華まんを蒸し、
コーヒーのカス箱のチェックを忘れない。
そして、余裕が生まれた結果——
「カタカタカタッ!」
再び刻まれるビート。
今や彼のリズムは、「余裕の証」なのだ。
私は思う。
「うん、楽しいって最高だよね」
G君のリズムは、今日も平和を刻んでいる
バイト君・Mの謎すぎる生態について 〜たぶん、あれは天然君〜
我らがバイト、M君
ある日。出勤時間になってもM君が現れない。
電話すると、M君はこう答えた。
「シフト表に時間が書いてなかったので、休みだと思いました」
…いやいやいや。
私もそのシフト表見たけど、
「時間が書いてない=いつも通りの時間」と解釈したぞ?
シフト管理者も呆れて、
「名前があるなら出勤でしょ? 他の人もみんな休みだと思うわけ?」と嘆く。
M君には、おそらく、悪気はない。
その前日、彼はシフト時間を確認するために来店し、
冷凍マカロンを買って帰ったのを、私は知っている。
根は真面目な子なのだ。きっと。
しかしながら、この解釈力は逆にすごい。
よくわからないことに対して、都合の良い方向に考える。
そこに悪意はない。
ただの希望的観測が生んだ、思いこみのジェットコースター。
そして、そのコースターに全力で乗りこむ。
それが、天然。
そう、たぶん、彼は天然。
たとえば、別のM君の話。
ある日、値引きシール担当として颯爽と名乗りを上げた彼は、
やる気満々でシールをペタペタ貼りはじめた。
問題は、「値引き=廃棄時間が迫っている商品」
という概念が彼の辞書にはなかったこと。
彼の中の公式はこうだ。
「値引きシールの商品名=棚に並んでる全商品」
そしてM君は、自身の法則に乗っ取り、全力でシールを乱舞させた。
結果、他のクルーさんの仕事が、増量キャンペーンモードに突入。
(お値段そのまま 盛りすぎチャレンジは、昨日からはじまっているよ!)
彼は、忙しそうなクルーさんを見て、
自ら「シール貼ります!」と志願したらしい。
だから、悪気はない。
全力で走りだし、盛大に勘違いする。
それが、天然の習性。
そんなM君も、過酷なちいかわ時代を乗り越えて生き抜いた猛者のひとり。
実際、やる気はあっても、
研修期間で消えてゆく候補者は、半分ほど。
緊張のあまり腹を下し、
壮絶な腸との死闘に敗北して去る者もいた。
慣れるまでは、緊張感を伴う職場である。
たかがコンビニ、とは侮れない。
(そういう私も、腸との戦いを経験したひとりだ)
パニックに陥ると、できるはずのことも
ますますできなくなるから、
常に優しい態度で接することを心掛けている。
だいじょーぶ。俺がついててやるからな。
そんな暖かい気持ちで。
バイト君・H 〜弁当地獄からの生還
我らが厨房の勇者、バイトH君。
かつて彼は、「弁当作り」という名のラスボスに挑み、
心も体もズタボロになっていた。
朝、目覚めれば謎の体調不良。
出勤途中で倒れ、
「吐きそうで、行けません」
と、泣きながら電話をしてきた。
弁当の呪いは、もはや物理攻撃レベル。
「もうダメかもしれない」
そんな儚い表情で立ち尽くしていたH君。
しかし、現実は残酷だ。
「厨房担当から外れる?
そんな選択肢は、君にはない」
唯一与えられたのは、
ただひたすらに「慣れる」という修行。
怯えたちいかわみたいな表情で、
米を計る手も震えていた。
あまりにも痛々しい彼の姿を、ずっと見てきた。
でも、H君は諦めなかった。
1ヶ月間、心を燃やし続け——
今や、美しいお弁当を生み出す匠へと成長!
調理パンも惣菜も、完璧な仕上がり。
H君はやればできる子だった。
その弁当は、まさに成長の証。
光り輝くえび天が彼の努力を物語っている。
H君はただの弁当職人ではない。
トイレ掃除も率先してやる、心優しきヒーローでもある。
誰もが避けるそのミッションに、
彼は黙って立ち上がる。
さらに、袋詰め中もサッと手を差し伸べる。
「H君、云ってないのに手伝ってくれるの?」
天使か? 君は天使なのか?
でも、たまに不安げな表情で周囲を見渡す。
怯えたちいかわ、再び登場。
その姿が心配で、つい声をかけたくなる。
「大丈夫、H君。えび天もう襲ってこないよ」
そんなH君は3月で契約満了。
その後は、専門学校に進学する。
若さって、本当に素晴らしい。
未来がまぶしい。眼が開けられない。
でも、どんな道を進んでも、君の心の中には、きっと——
「弁当との死闘」という忘れられない経験が刻まれているはず。
H君、君は立派に成長した!
ありがとう。そして、グッドラック!
バイト君・Gのリズム人生 〜カウンターは俺のステージ〜
我らがバイト、G君。
その爽やかな笑顔と、謎のビート感。
私はずっと思っていた。
「高校生だよね?」
…違った。
バイト掛け持ちのフリーターだった。
でも、それ以上に気になるのは、彼のクセ強めな行動。
G君は、カウンターに立つと突然——
カタカタカタッ!
両人差し指をまるでドラムスティックのように振り、
カウンターを華麗に叩き始める。
ついでに、頭もリズムに合わせて小刻みにヘドバン。
その姿は、「カウンターのドラムマスター」そのもの。
「…歌うの? ついに歌うの?」
期待に胸を膨らませて見守る私。
…歌わない。
一度も歌わない。
むしろ、逆にプロ意識すら感じる。
しかし、このノリノリG君にも、「ちいかわ時代」があった。
そう、バイト初期。
レジの前で固まり、
「あ…あ……お、お釣り…お、おつりぃぃ…」
と、あの切なげな表情で怯えていたのだ。
あの頃は、リズムどころか、
心拍数すら乱れっぱなしだっただろう。
でも、人は成長するもの。
新しい仕事を教える時、私はこう思っていた。
「大事なことはメモしないと忘れるよ?」
だが、G君は——
絶対、メモを取らない。
ポケットからノートも出さない。
ペンも持たない。
ただ、「ほうほう、なるほど」というノリで聞いてるだけ。
「おいおい、大丈夫か?」
…大丈夫だった。
完全に脳内インプットしていた彼。
次回からは完璧にこなす。
君の頭の中、どういう仕組みだ?
私はメモがなければ、秒で記憶喪失。
「あれ?昨日何食べたっけ?」レベル。
でも、G君は違う。
これも、若さゆえなのか。
今やG君は、余裕のある立派なクルーさん。
レジも陳列も、なんでもこなす。
焼き芋をしこむのも忘れない。
指示なしでも、的確な判断で、
中華まんを蒸し、
コーヒーのカス箱のチェックを忘れない。
そして、余裕が生まれた結果——
「カタカタカタッ!」
再び刻まれるビート。
今や彼のリズムは、「余裕の証」なのだ。
私は思う。
「うん、楽しいって最高だよね」
G君のリズムは、今日も平和を刻んでいる
バイト君・Mの謎すぎる生態について 〜たぶん、あれは天然君〜
我らがバイト、M君
ある日。出勤時間になってもM君が現れない。
電話すると、M君はこう答えた。
「シフト表に時間が書いてなかったので、休みだと思いました」
…いやいやいや。
私もそのシフト表見たけど、
「時間が書いてない=いつも通りの時間」と解釈したぞ?
シフト管理者も呆れて、
「名前があるなら出勤でしょ? 他の人もみんな休みだと思うわけ?」と嘆く。
M君には、おそらく、悪気はない。
その前日、彼はシフト時間を確認するために来店し、
冷凍マカロンを買って帰ったのを、私は知っている。
根は真面目な子なのだ。きっと。
しかしながら、この解釈力は逆にすごい。
よくわからないことに対して、都合の良い方向に考える。
そこに悪意はない。
ただの希望的観測が生んだ、思いこみのジェットコースター。
そして、そのコースターに全力で乗りこむ。
それが、天然。
そう、たぶん、彼は天然。
たとえば、別のM君の話。
ある日、値引きシール担当として颯爽と名乗りを上げた彼は、
やる気満々でシールをペタペタ貼りはじめた。
問題は、「値引き=廃棄時間が迫っている商品」
という概念が彼の辞書にはなかったこと。
彼の中の公式はこうだ。
「値引きシールの商品名=棚に並んでる全商品」
そしてM君は、自身の法則に乗っ取り、全力でシールを乱舞させた。
結果、他のクルーさんの仕事が、増量キャンペーンモードに突入。
(お値段そのまま 盛りすぎチャレンジは、昨日からはじまっているよ!)
彼は、忙しそうなクルーさんを見て、
自ら「シール貼ります!」と志願したらしい。
だから、悪気はない。
全力で走りだし、盛大に勘違いする。
それが、天然の習性。
そんなM君も、過酷なちいかわ時代を乗り越えて生き抜いた猛者のひとり。
実際、やる気はあっても、
研修期間で消えてゆく候補者は、半分ほど。
緊張のあまり腹を下し、
壮絶な腸との死闘に敗北して去る者もいた。
慣れるまでは、緊張感を伴う職場である。
たかがコンビニ、とは侮れない。
(そういう私も、腸との戦いを経験したひとりだ)
パニックに陥ると、できるはずのことも
ますますできなくなるから、
常に優しい態度で接することを心掛けている。
だいじょーぶ。俺がついててやるからな。
そんな暖かい気持ちで。