性懲りもなく空間や時間がどうなっているかというようなポピュラー・サイエンスの本をあれこれ読んでいます。
最先端の研究で業績を上げてきた人たちが、その成果をごまかすことなく分かり易く書き著わそうとしているようですが、いつも分からないままになる部分が残ります。
数式を一切使わないのがポピュラーたる所以ですが、テーマは方程式の展開と計算によって導かれてきたものですから、大事なところで説明抜きになるのもやむを得ません。
分からないのは敵のせいでないことは100も承知ですが、もう少し何とかならないかと無い物ねだりをしています。
最近に読んだのは
「超弦理論入門」(大栗博司 ブルーバックス2013)。
今まで腑に落ちないままだったのが、ああそういうことかといろいろ納得することが有り、読んで無駄ではなかったと思っています。
面白かったことのひとつに「電磁場は金融市場に似ている」という節が有りました。
毎日のニュースに1ドルが何円、1ユーロが何円と報じられるのを見て、時に1ドルが何ユーロになるのか辻褄が合っているのだろうかと思います。
それが電磁気の原理に通じているのだ、と。
国によって通貨が異なり、金利の相場が異なり、為替相場が設けられ、お金は金利の高い国へ流れる。
そこに為替相場への介入が有ったりして円とドルのレートに急激な変動が生じたりすると、円とユーロや、ドルとユーロのレートの対応が追いつけかなかったりする、とか。
そんな時、市場を見張っているトレーダーは直ちに相場のギャップに応じてお金を回して利益を得る。
金利の高い方へお金が動くことは電子が電位の高い方へ引っ張られることに対応し、為替相場のギャップに応じて回わされるお金の動きは、電子の流れに磁場を掛けるとフレミングの左手の法則によって電子が回転することに対応する、と。
フレミングの左手の法則は高校で学んだ物理の記憶に繋がります。
何となく納得しましたが、後で読み直してみると、その3本の指が電磁場をベクトル場にしており、電子に作用する力が光子で、その位相が為替相場のギャップに対応すると言っていたのだとは直ぐには気づきませんでした。
テキストではトレーダーがお金を回して利益を得ようとするので相場の辻褄は直ちに合うようになると述べ、通貨はどんなに大きな値もとれる1次元の尺度で表現されるが、電磁気力の位相は角度を表す円形の値をとり、ゲージと呼ばれている、と説明しています。
比喩と日常的用語の合間にマクスウェルの方程式だのゲージ対称性だののコトバが散りばめられていて、やがてゲージ原理の高次元への拡張という話になるので、ついGoogleで検索したりし、更に混迷が深まったりします。
かつて理論物理学者が経済学に転じたり、量子力学の研究者が株をやるようになったりした話がありましたが、彼らはこうした数理と計算に強いからなのでしょう。
現実には為替の手数料を別にしても、円と米ドルとユーロの他にも沢山の通貨があって、誰が儲け、誰が損をするかは複雑になり、それだけでも辻褄合わせは永遠に収束しないのではないでしょうか。
損益をどの通貨の尺度で表したら良いのか分かりませんが、世界全体での損益の合計にゼロという平衡状態があるという保証もないでしょう。
金融の方が物理より遙かに難しく、世界に混乱と混迷が続く由縁だと思われます。
それはさておき、著者は地球儀のような絵を3つ描き、それぞれの上の点の間を線分で結び、3本の線がギャップのない閉じた三角形を作るように球面を回転させる運動を図解し、弱い力が電磁気力と同じ原理で統一的に理解できることを示しています。
球面の座標を決めるには緯度・経度・回転軸の3つの数字が必要なので、弱い力を伝える粒子も3種類(W+,W-,Z)あるのだ、と。
同様にして強い力を伝える粒子が8種類有り、それは8次元の座標が必要だからだ、と。
著者は、この本で経験的な3次元空間が考え方によって実は9次元だったり、10次元だったりし、その空間の中がホログラムのように空白だったりするという説を紹介し、空間は幻想なのだと主張しています。
それはそれで納得できるのですが、時間についてはまだ分からないと言っているようです。
時間も幻想だとすれば、宇宙の始まりとか終わりとかの問題は不良設定になり混乱するばかりなので言及を避けたいのかも知れません。合点がいきません。
最先端の研究で業績を上げてきた人たちが、その成果をごまかすことなく分かり易く書き著わそうとしているようですが、いつも分からないままになる部分が残ります。
数式を一切使わないのがポピュラーたる所以ですが、テーマは方程式の展開と計算によって導かれてきたものですから、大事なところで説明抜きになるのもやむを得ません。
分からないのは敵のせいでないことは100も承知ですが、もう少し何とかならないかと無い物ねだりをしています。
最近に読んだのは
「超弦理論入門」(大栗博司 ブルーバックス2013)。
今まで腑に落ちないままだったのが、ああそういうことかといろいろ納得することが有り、読んで無駄ではなかったと思っています。
面白かったことのひとつに「電磁場は金融市場に似ている」という節が有りました。
毎日のニュースに1ドルが何円、1ユーロが何円と報じられるのを見て、時に1ドルが何ユーロになるのか辻褄が合っているのだろうかと思います。
それが電磁気の原理に通じているのだ、と。
国によって通貨が異なり、金利の相場が異なり、為替相場が設けられ、お金は金利の高い国へ流れる。
そこに為替相場への介入が有ったりして円とドルのレートに急激な変動が生じたりすると、円とユーロや、ドルとユーロのレートの対応が追いつけかなかったりする、とか。
そんな時、市場を見張っているトレーダーは直ちに相場のギャップに応じてお金を回して利益を得る。
金利の高い方へお金が動くことは電子が電位の高い方へ引っ張られることに対応し、為替相場のギャップに応じて回わされるお金の動きは、電子の流れに磁場を掛けるとフレミングの左手の法則によって電子が回転することに対応する、と。
フレミングの左手の法則は高校で学んだ物理の記憶に繋がります。
何となく納得しましたが、後で読み直してみると、その3本の指が電磁場をベクトル場にしており、電子に作用する力が光子で、その位相が為替相場のギャップに対応すると言っていたのだとは直ぐには気づきませんでした。
テキストではトレーダーがお金を回して利益を得ようとするので相場の辻褄は直ちに合うようになると述べ、通貨はどんなに大きな値もとれる1次元の尺度で表現されるが、電磁気力の位相は角度を表す円形の値をとり、ゲージと呼ばれている、と説明しています。
比喩と日常的用語の合間にマクスウェルの方程式だのゲージ対称性だののコトバが散りばめられていて、やがてゲージ原理の高次元への拡張という話になるので、ついGoogleで検索したりし、更に混迷が深まったりします。
かつて理論物理学者が経済学に転じたり、量子力学の研究者が株をやるようになったりした話がありましたが、彼らはこうした数理と計算に強いからなのでしょう。
現実には為替の手数料を別にしても、円と米ドルとユーロの他にも沢山の通貨があって、誰が儲け、誰が損をするかは複雑になり、それだけでも辻褄合わせは永遠に収束しないのではないでしょうか。
損益をどの通貨の尺度で表したら良いのか分かりませんが、世界全体での損益の合計にゼロという平衡状態があるという保証もないでしょう。
金融の方が物理より遙かに難しく、世界に混乱と混迷が続く由縁だと思われます。
それはさておき、著者は地球儀のような絵を3つ描き、それぞれの上の点の間を線分で結び、3本の線がギャップのない閉じた三角形を作るように球面を回転させる運動を図解し、弱い力が電磁気力と同じ原理で統一的に理解できることを示しています。
球面の座標を決めるには緯度・経度・回転軸の3つの数字が必要なので、弱い力を伝える粒子も3種類(W+,W-,Z)あるのだ、と。
同様にして強い力を伝える粒子が8種類有り、それは8次元の座標が必要だからだ、と。
著者は、この本で経験的な3次元空間が考え方によって実は9次元だったり、10次元だったりし、その空間の中がホログラムのように空白だったりするという説を紹介し、空間は幻想なのだと主張しています。
それはそれで納得できるのですが、時間についてはまだ分からないと言っているようです。
時間も幻想だとすれば、宇宙の始まりとか終わりとかの問題は不良設定になり混乱するばかりなので言及を避けたいのかも知れません。合点がいきません。