記憶のスクラップ・アンド・ビルド

当然ながら、その間にタイムラグがあり、
それを無視できなくなることこそ残念です。

悪貨は良貨を駆逐する

2013年09月21日 07時32分32秒 | Weblog
これをもじればワルイ銀行がヨイ銀行を駆逐する。あるいは既に駆逐してしまって、ヨイ銀行はあり得なくなっている。
金融不安が生じたとき、その原因を作った銀行は既に余りに大きくなっていて、潰れると大変なことになるといって税金を注ぎ込んで助けられている。
破産し裁かれるべき大手銀行のトップたちは誰も逮捕されていない。
そんな話を幾つかTVのドキュメンタリーで見ました。

アメリカでは中産階級は絶滅危惧種だと言っている人がありました。
日本でも今まで「中の中」とばかり思っていたのが、最近では躊躇うことなく「下」だなと感じている人が増えているのではないでしょうか。

最近
「資本主義崩壊の首謀者たち(広瀬隆 2009 集英社新書)」
を読みました。
題は少し変ですが、そんなことが有ったのか、と曖昧になった記憶と付き合わせ納得することが沢山ありました。
今までなら聞き流していたようなニュースも、よりホットに受け止め、関連するところを推測できるようになった気がしています。

転載してあるニューヨークタイムズの漫画は機微を突いていて面白く、写真、図表の解題とともに読みやすくしています。

ケネディ家の逸話として:
「投機屋だったケネディの父は靴磨きをしている子どもが株に手を出しているのを見て大衆の間にこれほどまでに株が拡がっているなら暴落は近いと予感し、売り逃げて莫大な資産を築いた。彼は400万ドルの資産を5年で1億8,000万ドルに増やした。」
と、紹介してありました。

この本ではケネディ大統領は主題の外ですが、破産の陰には巨富を得た人間が有り、投機で膨張した富は何処に隠れ、次に何をするか、ということが主要なテーマだと言っても良いかも知れません。

NHKのBS世界のドキュメンタリーで「オリバー・ストーンの語るもうひとつのアメリカ史」を見ましたが、膨大なデータが短時間で流れて捉え難いのでピーター・カズニックとの共著の早川書房版を借りてきて、それはそれで面白く読めたのですが、オバマ大統領の現在について、肝心なところへ及んでいないのが残念と思っていたところ、この本が欠けている部分を埋めてくれました。

スターウォーズ計画に拘ったレーガン、現代の十字軍の総帥になったつもりのブッシュ、オバマは彼らの批判者として登場したのかとぼくは誤解しました。
イラクに派兵した兵を引き揚げたとき、てっきりアフガニスタンからも引き揚げるのかと思ったのが愚かでした。無駄な犠牲は更に拡大して、オバマがどうしてと思ったものでした。

ぼくが誤解した根拠は、ネットで貧しい若者たちから沢山の小銭を集め、選挙資金と票の両方を得たという報道でした。
2008年の大統領選挙でオバマの全国資金集めの会長を務め勝利に導いたのは女性実業家ブリッツカーで、ハイアット・ホテルからカジノまでコングロマリットを経営する超リッチ・ファミリーとして有名なのだそうです。
日本では多分ほとんどニュースにならなかったが、シカゴの自動車産業やウォール街も大きな後援者だったようです。

1989年にベルリンの壁が崩壊してソ連の共産主義が崩れ去り、それから20年してアメリカの資本主義が大崩壊し始めている、というのが著者の見解。
崩壊してソ連な何になり、アメリカはどこへ行くのか、ぼくにはよく分かりません。
経済誌フォーブスを引用して2007年に世界で大富豪が最も多い都市はニューヨークではなく、原油で儲けるモスクワだという話が紹介されていました。

以下は誰でも知っていることかも知れませんが:
2007年夏頃からアメリカの住宅価格が落ち始めると、低所得者向けのサブプライム・ローンの借金経済が逆回転し始め、2008年9月15日、リーマン・ブラザーズは7000億ドルの金融派生商品の取引残高を抱えたまま負債総額6000億ドルで経営破綻。
株価が暴落し始めて株式市場から逃げ出した投機マネーは原油先物市場に流れ込み、原油価格に天井知らずの暴騰を生じ、更に溢れた資金は穀物市場に流れて穀物価格の高騰を招いたが、先物価格を釣り上げるためにマスコミも偽りの情報を流し、やがて実体が知れて穀物も原油も暴落。

先物取引や金融派生商品で価格を釣り上げる仕組みを考案した元祖として名が挙がっているのは、後に財務長官になったルービンやサマーズたち。
サマーズは経済学者サミュエルソンノの甥。史上最年少でハーバード大学教授になった。
彼らの周囲に網の目のように繋がる金融ファミリーの多数の名が挙がっているが、クリントン政権の頃からオバマ政権まで、彼らが一貫して経済と金融の中枢を支配し、グローバリズムを唱え、貧富の格差を大きくしている、と。

そして:
そのサマーズがFRB議長候補を辞退するというニュースが先日ありました。
シリア攻撃の頓挫と関係があるのかどうか分かりませんが、何かが変わろうとしているのでしょうか。

「富裕層が先に豊かになれば、やがて貧困層も底上げされる」という説は古今東西で繰り返し述べられてきました。
著者は簡単な計算と図解でその間違えを説明しており、われわれも自分で計算できそうです。
わが国でも消費税の増加と法人税の軽減をセットにする根拠として、またまたそのようなことを言っていますが、今の日本の場合にはパイ全体が増えるという前提が通用しないかも知れないと秘かに思っています。
アベノミクスが予想しない事態が起きるような気がするのですが、どうでしょうか。


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