記憶のスクラップ・アンド・ビルド

当然ながら、その間にタイムラグがあり、
それを無視できなくなることこそ残念です。

面白くて為になる、そして少し怪しげな本

2010年01月23日 12時07分23秒 | Weblog
出先で時間潰しするには文庫本が好いかと、書店へ入ったら
祥伝社黄金文庫 平成21年7月刊
三石巌 「医学常識はウソだらけ:分子生物学が明かす「生命の法則」」
というのがありました。

開いてビックリ、ずいぶん歳をとった著者なので大丈夫かなと思いましたが、
拾い読みしてみると面白く、肩も凝らない感じでした。

物理の出身で、慶応などで教鞭をとり、
60歳で白内障と診断され2~3年で失明すると言われ、
医学とは違う視点から考えて自分で失明しないようにしようと考え
ビタミンCの注射をして克服したとありました。
それが契機で分子生物学を学び、分子栄養学なるものを提唱するようになったようです。

後で「あとがき」などを読んだら、ご本人は既に10年前に95歳で亡くなっていて、その頃に「改訂版」と頭に付いた同じ題名の単行本を出しており、これを半田という人の監修のもとに、加筆・訂正し、その頭書きを削って文庫本にしたとありました。

犬にドックフードがあり、猫にキャットフードがあるように、人間にはヒトフードがあって良いとかで、そういうものを売る商売もやっているようで、その辺がどうも限りなく怪しいと思わないでいられません。

ビタミンCは、ボーリンクという化学者が風邪に効くと主張してから、万病に効くという信仰まで興し、今日のサプリメント依存の起源となったとか。
加筆・訂正するなら、その辺を見直して欲しかったと思う。
それにしても、いわゆる「常識」に対する攻撃的までの筆法が面白く、それがご本人にとっても長寿の源泉だったかも知れない。

「高血圧の人は塩分の摂取を控えろ」という疫学的研究に基づいた「常識」に対する批判があり、これは大いに賛同できます。
疫学的研究で行う生化学的検査の変数間相関分析は、実際にタッチして見ると容易に分かることですが、因果関係を示すものと解釈することは出来ません。
相関が統計的に有意だという結果が出ても、それで因果関係が分かったとか、診療に使える指針が得られるとか言う事からは非常に遠いことは、誰でも知っていることで、いまさらですが。

一般に、降圧剤の効用を読んでも正常な生理機能との関係は述べてなくて、全身の細胞における生理学的機能をどの程度に損なう可能性があるかは、服用して見るまで分からないのが現実です。
副作用と書いてあるのが、実は全細胞にとって正作用だからこそ、治療のための「常識がウソだらけ」になるのでしょう。

目次には、われわれ高齢者が関心を持ちそうなテーマが満載でした。

最新の画像もっと見る