あけましておめでとうございます。
今年もどうぞよろしく御願いします。
さて、新年最初のお題は和食と輸出の関係です。
一昨日、日本の農産物の輸出額が過去最高になったという、新年早々めでたいニュースが各社から報じられました。そうしたニュースの中には「背景に和食ブーム。(中略)世界的に日本食ブームが広がっていることなどが主な要因」と報じているものも。あれあれ?と思いませんか?
和食と日本食、結局同じなの?違うの?
知り合いなどと話をしているとどうも次のような話に落ち着く例が多いようです。「古くからの伝統的料理や和の伝統のイメージを全面に出した食品が和食じゃないの?一方で、ラーメンとかカレーとかのような、比較的新しい料理や外国由来の食品も含めると日本食と呼ぶのでは?」
うーん、確かに、ちょうど一年前の1月10日の「世界一受けたい授業」という番組では外国人1万人調査で好きな「日本食」は1位寿司、2位焼き肉、3位ラーメンという結果でしたので、マスコミが「日本食」という言葉で表現する時には、焼き肉(韓国由来。)やラーメン(中国由来。)のような食品も含むというのが、通例のようです。
するとですよ。日本の農産物の輸出が増加した原因は「和食」と「日本食」のどちらでしょうか?これって結構大きな問題ですよ。輸出する側にとってはどういうイメージで外国に売り込むかは死活問題です。戦略を間違えれば損失を被りますから。
実は、この答えを知る手がかりは、NHK首都圏NEWS WEB(1月8日)に掲載されていました。これによると、輸出を牽引しているのは「ながいも、りんご、ホタテ、サバ、米、醤油、みそ、日本酒」などだということです。ところが、私は数年前にある勉強会でJETROの専門家のお話を聴きましたが、実は上記の食材の大多数は、和食でも日本食でもない意外な理由で、人気になっているとの分析結果だったのです。
具体的にご説明しましょう。
まず「ながいも」は中国風薬膳料理の材料として引っ張りだこなんだそうです。中国文化では、ながいもは長ければ長いほど幸運を呼ぶと信じられており、日本産のながいもは中国よりも長いということで縁起物として輸出が伸びているのだそうです。全然、和食でも日本食でもないのです。
次に「りんご」ですが、中国文化圏の人々には、赤くて大きい日本産のリンゴは幸運のシンボルとしてモテモテなのだそうです。これも中国文化に根ざす話ですので、和食や日本食とは関係がありません。
「ホタテ」は高級中華料理やフランス料理として食べられており、「サバ」は現地風に味付けしたり二次加工して別の国に輸出したり・・・なので、これらも和食や日本食とは関係がありません。
また、これはJETROの方の話ではなくて、安西洋之・中林鉄太郎著「「マルちゃん」はなぜメキシコの国民食になったのか」という本(p34~41)に書いてありますが、醤油は米国やオーストラリアなどでバーベキューなどの肉料理の味付けとして多用されているということでした。貿易統計で確認しても醤油は米国、オーストラリアへの輸出が多いことから、日本食や和食の調味料としてよりも、肉の味付け用に使用される割合の方が多いと考えた方が自然です(醤油で焼いたバーベキューを日本食と強弁するならば、日本食なのでしょうが・・・多くのかたはそれで納得出来るでしょうか。)
ちなみに、上記の本によると醤油は17世紀から輸出されており、現在ではフランスなどでも和食や日本食ではなく、日常の調味料として使用されているということです。
読者の中には「フランスは寿司ブームだと日本のマスコミが報道している。それで醤油の消費が増えたんじゃないか」と思う方も居るかもしれませんね。確かに数年前まではその傾向もありましたが、2015年からフランス人の寿司離れが顕著になり、寿司店には閑古鳥が鳴いています。元来フランス人は生魚が苦手だったためです(クーリエ・ジャポン 2015年11月号p30より)。
というわけで、日本食・和食ブームのおかげで輸出が伸びたと断言できるのは米と日本酒と味噌だけです。他の食材については、中国料理やフランス料理やバーベキューなどで使用されている割合が高くて、日本食等ブームの影響は思ったより小さいと考えたほうがいいのではないでしょうか。
ちなみに、消費が伸びたとされる味噌ですが、平成27年1~11月の輸出金額は25億円です。同じく米は20億円です。清涼飲料水の182億円と比較するとあまりの差に驚きます。しかも清涼飲料水の輸出の伸びは数量でも金額でも味噌よりはるかに高いのです。主な輸出先はアラブ諸国です。数年前に聞いた話では、その甘みがアラブの消費者の好みにマッチしているとのこと。金額ベースで、清涼飲料水はホタテに次ぐ日本の輸出の看板商品なのに、なぜかこのことは報道されません。なぜでしょうね。
さて、以上より、日本の食品の輸出が伸びている主因は、日本食ブームでも、ましてや和食ブームでもないと考えられることをお話しました。しかし、日本の食材が中華料理とかフランス料理とかの材料として非常に優れているという理由で購入されている訳ですから、日本の食材が諸外国のあこがれを受けていることは事実と思います。このことは私たちに大きな勇気を与えてくれます。日本の農林畜水産業を誇りに思い、これからも世界から愛されることを願い、応援していきたいと思います。
今年もどうぞよろしく御願いします。
さて、新年最初のお題は和食と輸出の関係です。
一昨日、日本の農産物の輸出額が過去最高になったという、新年早々めでたいニュースが各社から報じられました。そうしたニュースの中には「背景に和食ブーム。(中略)世界的に日本食ブームが広がっていることなどが主な要因」と報じているものも。あれあれ?と思いませんか?
和食と日本食、結局同じなの?違うの?
知り合いなどと話をしているとどうも次のような話に落ち着く例が多いようです。「古くからの伝統的料理や和の伝統のイメージを全面に出した食品が和食じゃないの?一方で、ラーメンとかカレーとかのような、比較的新しい料理や外国由来の食品も含めると日本食と呼ぶのでは?」
うーん、確かに、ちょうど一年前の1月10日の「世界一受けたい授業」という番組では外国人1万人調査で好きな「日本食」は1位寿司、2位焼き肉、3位ラーメンという結果でしたので、マスコミが「日本食」という言葉で表現する時には、焼き肉(韓国由来。)やラーメン(中国由来。)のような食品も含むというのが、通例のようです。
するとですよ。日本の農産物の輸出が増加した原因は「和食」と「日本食」のどちらでしょうか?これって結構大きな問題ですよ。輸出する側にとってはどういうイメージで外国に売り込むかは死活問題です。戦略を間違えれば損失を被りますから。
実は、この答えを知る手がかりは、NHK首都圏NEWS WEB(1月8日)に掲載されていました。これによると、輸出を牽引しているのは「ながいも、りんご、ホタテ、サバ、米、醤油、みそ、日本酒」などだということです。ところが、私は数年前にある勉強会でJETROの専門家のお話を聴きましたが、実は上記の食材の大多数は、和食でも日本食でもない意外な理由で、人気になっているとの分析結果だったのです。
具体的にご説明しましょう。
まず「ながいも」は中国風薬膳料理の材料として引っ張りだこなんだそうです。中国文化では、ながいもは長ければ長いほど幸運を呼ぶと信じられており、日本産のながいもは中国よりも長いということで縁起物として輸出が伸びているのだそうです。全然、和食でも日本食でもないのです。
次に「りんご」ですが、中国文化圏の人々には、赤くて大きい日本産のリンゴは幸運のシンボルとしてモテモテなのだそうです。これも中国文化に根ざす話ですので、和食や日本食とは関係がありません。
「ホタテ」は高級中華料理やフランス料理として食べられており、「サバ」は現地風に味付けしたり二次加工して別の国に輸出したり・・・なので、これらも和食や日本食とは関係がありません。
また、これはJETROの方の話ではなくて、安西洋之・中林鉄太郎著「「マルちゃん」はなぜメキシコの国民食になったのか」という本(p34~41)に書いてありますが、醤油は米国やオーストラリアなどでバーベキューなどの肉料理の味付けとして多用されているということでした。貿易統計で確認しても醤油は米国、オーストラリアへの輸出が多いことから、日本食や和食の調味料としてよりも、肉の味付け用に使用される割合の方が多いと考えた方が自然です(醤油で焼いたバーベキューを日本食と強弁するならば、日本食なのでしょうが・・・多くのかたはそれで納得出来るでしょうか。)
ちなみに、上記の本によると醤油は17世紀から輸出されており、現在ではフランスなどでも和食や日本食ではなく、日常の調味料として使用されているということです。
読者の中には「フランスは寿司ブームだと日本のマスコミが報道している。それで醤油の消費が増えたんじゃないか」と思う方も居るかもしれませんね。確かに数年前まではその傾向もありましたが、2015年からフランス人の寿司離れが顕著になり、寿司店には閑古鳥が鳴いています。元来フランス人は生魚が苦手だったためです(クーリエ・ジャポン 2015年11月号p30より)。
というわけで、日本食・和食ブームのおかげで輸出が伸びたと断言できるのは米と日本酒と味噌だけです。他の食材については、中国料理やフランス料理やバーベキューなどで使用されている割合が高くて、日本食等ブームの影響は思ったより小さいと考えたほうがいいのではないでしょうか。
ちなみに、消費が伸びたとされる味噌ですが、平成27年1~11月の輸出金額は25億円です。同じく米は20億円です。清涼飲料水の182億円と比較するとあまりの差に驚きます。しかも清涼飲料水の輸出の伸びは数量でも金額でも味噌よりはるかに高いのです。主な輸出先はアラブ諸国です。数年前に聞いた話では、その甘みがアラブの消費者の好みにマッチしているとのこと。金額ベースで、清涼飲料水はホタテに次ぐ日本の輸出の看板商品なのに、なぜかこのことは報道されません。なぜでしょうね。
さて、以上より、日本の食品の輸出が伸びている主因は、日本食ブームでも、ましてや和食ブームでもないと考えられることをお話しました。しかし、日本の食材が中華料理とかフランス料理とかの材料として非常に優れているという理由で購入されている訳ですから、日本の食材が諸外国のあこがれを受けていることは事実と思います。このことは私たちに大きな勇気を与えてくれます。日本の農林畜水産業を誇りに思い、これからも世界から愛されることを願い、応援していきたいと思います。