Randonneur旅日記

おじいちゃんの自転車一人旅
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みみ爺青天の霹靂                2019年6月9日 日曜日

2019-06-09 11:49:20 | 日記
 みみ爺の家の庭には25年くらい前に手作りした、ほんとに小さな小屋があるんだ。図面を引き、休みの日に少しずつ進めて、当時、完成までに半年ぐらいかかっただろうかね。



 その小屋の扉や窓がいたんできた。たびたび塗装を繰り返してきたが、やはり木製だから年月とともに傷んで来る。



 それで古くなった窓や扉を新しく作り直したんだ。





 さて、取り外した古い窓や扉を解体して片付けなければならない。窓は小さいから簡単に切り刻むことができた。大きな扉はちょっと厄介だった。あちこちのネジをはずしていく段階で、仮にちょっと立てかけた。
 その立てかけ方がまずかった。しゃがんで別のことをしていたとき、立てかけた扉が横滑りしてきて、縦かまちがみみ爺の左顔面を直撃したんだ。
 一瞬フラフラっとなった。青あざにでもなったかなと思ったが鏡を見ると、いくらか腫れて膨らんでいるだけだったよ。その後も作業を続けてその日は過ぎた。
 物を噛むときにぶつけたあたりが痛んだが、それも3日ほどで消えた。
 ところが、それからさらに3日ほどすると、今までにない頭の痛みがあることに気がついた。みみ爺は1年に1度か2度偏頭痛に襲われることがある。しかしその痛みとは違うんだ。頭を左右に振ると痛みが増す。倒れてきた扉が当たった右側だ。
 気になるので病院へ行ったんだ。そしたらそのまま入院となってしまった。急性硬膜下血腫という診断だったよ。扉が頭を直撃したのもそうだが、この診断結果と入院宣告こそまさに青天の霹靂というもんだ。血圧が一気に160くらいに跳ね上がったよ。

 病室の窓からの景色はよく晴れていて気持ちがいいくらいだった。だが、みみ爺の心は重い。



 3日目に、突然みみ爺のところへ理学療法士の若いおねえさんがやってきたんだ。
「これからリハビリをします」
「えっ?」
「先生からそういう指示が出ています」
「そうですか」
 リハビリと言ってもみみ爺にはいったい何をやるのかわからない。体のどこにも、動かないとか動かしづらいとかいったところはない。とりあえず理学療法のおねさんの後についてリハビリ室へ行った。
 リハビリ室では、たくさん置いてあるリハビリ台の上で、みみ爺とおなじような爺さんやばあさんたちが、理学療法士にリハビリの指導を受けていた。
 みみ爺が台の上に横たわると、理学療法士のおねえさんは、ストレッチポールという筒状のものを持ってきた。その上に寝かされ、おねえさんの指示で足を上げたり腕を上げたり、万歳をしたり、その腕を大きく回したりといろいろやらされたんだ。
「なんでもできますね。元気そのものですね。私より体力ありそう」
 と、おねえさんは言う。
「なにをしましょうかね」
 と、困っている。
「じゃあ、マッサージでもしてください」
 と、冗談半分にみみ爺。
「そうしましょう。どこか痛いところはありますか?肩こりとかありますか?」
 というわけで、リハビリというよりは、ほとんど気持ちのいいマッサージをしてもらうことで、その日のリハビリの時間は終わったよ。
 次の日も理学療法士のおねえさんは困りっぱなしだった。で、マッサージをしてもらったり話をしたりして時間をすごしたんだ。若い女の子の理学療法士さんのマッサージを受けたり話しをしたり、入院中一番楽しい時間だったよ。

 さいわい5日ほどの入院で血腫は小さくなり、退院することができた。退院の日、Drは、
「1ヶ月ほどしてまた血腫が大きくなることがあります。その時は手術をします」
「自転車は乗ってもいいですか?」
 と、みみ爺。
「いいですよ」
 ああよかったと思った次の瞬間、後ろにいた家内が、
「でも、山を上ったり長距離を走ったりとかなんですよ」
 Drはそれを聞くと、キッとみみ爺をにらんで、にべもなく言ったんだ。
「それはだめです」
 あとで看護師さんに尋ねると、手術というのは、
「頭に穴を開けて、血を抜くんです」
 と、恐ろしいことを言う。
 まあしばらくはおとなしくしなければならないね。人生とはまったく思いがけないことがあるもんだよ。
 さて、何をしていようかね。普段乗り回している自転車のグリスアップでもしていようか。次に出かけようと思っていたところは決まっていたのにさ。