ブログにコメントが寄せられたんだ。房総サイクリングへのお誘いだ。誘ってくれた方のブログを覗いてみると、年はまちまちだがみんな楽しそうな笑顔の写真が載っていたよ。
突然の誘いで実はとても迷ったんだ。日にちも迫っていたし、それになによりも、全く知らない人たちの中に爺様一人いきなり入って行くんだからね。ちょっと勇気がいる。
しかし、せっかく誘ってくれたんだよ。生まれかけようとしている、新しい出会いを、ここで自ら断ちきってしまうのは惜しい。気楽な日常にどっかり胡坐をかいてしまっていては、そこから一歩も外へ出られない。人生の広がりはそこでストップだ。だが、一歩を踏み出せば、日常にはなかった新しい何かが始まるかもしれない。いくら年をとっても生きているうちは、フカフカで気持ちのいい座布団の上に安穏と腰を落ち着けていてはだめだよ。人生はそこから先へは進まないから…何を言ってるんだか。
木更津といっても駅は広い。うまく相手の人たちと会うことができるだろうか。そのことがちょっと気になったが、思いきって出かけることにしたよ。
ランドナーを組むには、ロードバイクのように早くいかない。1時間ほど早い電車に乗ったよ。もし相手が見つからなかったら、その時は適当に一人で走りまわってこよう。そんな気持ちだった。
木更津駅に着き、早速自転車を組み始めたよ。空気がずいぶん冷たくなった。冬が近づいているんだね。
自転車を組んでいてふと眼を上げると、偶然、そこで足を止めてこちらを見る人と目があったよ。直感というんだね。おや、この人かな。と、相手もまたびっくりしたような顔をしてこちらに目を向けている。
「もしかして、みみ…」
と言ったのがこのとき初めてお会いするIWAさんだった。
「いやあ、驚きました。まさか来ていただけるとは…」
IWAさんは何度もそう言う。
IWAさんの仲間は5人。そして、このみみ爺を含め6人は間もなく出発。いつもは一人でルートを考え、道に迷ったり戻ったりだが、今日はみんなについていくだけだ。そういう意味では気楽だね。
駅を出て、のんびりとした風景の中を矢那川に沿って進み、国道16号の下をくぐり館山自動車道を過ぎると、急に住宅が切れ、森や畑が現れるようになったよ。
大きな木の根方に石仏が一体。なんとなくいい。
林道鎌倉2号線に入り、広い市営霊園の横を過ぎると、道の両側の木々がいっそう深くなった。
まもなく道は明るく広い県道に出たよ。269号だ。
道は広くなったが周囲にはほとんど何もない。畑や森が断片的に続く。
やがて、一時広くなった道もまたすぐに狭い道に変わったよ。山の中の林道のような雰囲気だが、ここはまだ県道だ。緩やかに上っている。IWAさんがずっとみみ爺に合わせてペダルをこいでくれていたよ。
大鷲新田というあたりの山中に小さな駐車場が現れた。車が何台も停まっている。店か何かあるのかと思ったよ。
と、左手の木々の中に迷彩服姿の怪しげな男たちの姿が見え隠れしている。銃を手にする者もいる。どうやらサバイバルゲームというのをやるところらしい。ちょっと不気味だ。何だか恐ろしげな空気が漂っているよ。
先に行くと道が二股に分かれていた。どちらも林道のような雰囲気の道だが、右手はさきほどからの県道269号だ。先頭のBさんの後に続いて左手の林道鎌倉4号線へと進む。
林道に入って1.2~1.3キロほど走っただろうか、それまでの林道よりさらに暗く湿って荒れた感じの脇道に入ったよ。一人で走るにはちょっとためらうような道だ。落ち葉や枯れ枝が敷き詰められている急勾配の下り坂だよ。しかも、路面はまるで鬼の洗濯板のようだ。コンクリートで舗装はされているが、表面に滑り止めのための太い溝が刻まれている。そのため振動で自転車のネジがゆるんでしまいそうだ。そのうえかなりの急勾配で、ブレーキを握る手が痛くなる。いつまで続く道なのかと、やけに長く感じられたが、あとで調べたら1キロほどの距離だったよ。
やっとのことでガタガタの暗い急坂をぬけ出て、みんなホッとひといき。思わず笑顔もこぼれる。
その先の県道92号を横切って、県道と平行に走るのどかな田圃道を進む。快晴とはいかないが天気はまあまあだ。朝は寒かったが、今は寒さを感じない。
まもなく県道に合流するが、すぐにまた県道を逸れる。
小糸川に架かる赤い欄干の橋を渡った左手に、不思議な建造物の跡があったよ。戦争の遺物かとも思ったけれど、どうやらそうではなく、建設用の砂を洗うプラントの跡だそうだ。1970年代ころまでは操業していたらしい。廃墟のにおいがして惹かれるものがある。
そこからすぐの小糸中学校のグラウンドの前の路地を入って行くよ。
県道163号(房総スカイライン)に出て1キロほど走ると、T字路で県道と房総スカイラインとは分かれる。台中という集落だ。房総スカイラインは直進。鹿野山(県道163号)は右へ行く。
ここから鹿野山の上までは、それぞれ自分のペースで上ることになったよ。早く上ったものは上で待つ。それをきいて安心。
上りは山頂近くの県道93号にぶつかるまで続くよ。距離およそ6キロ、勾配は約5パーセント。さあ、出発だ。
先を行く断腸さん、そしてIWAさん、Bさん。
通勤でも自転車を利用しているという断腸さんはとにかく早い。断腸さんというニックネームは、永井荷風の“断腸亭日乗”からのものらしい。荷風は腸に持病があったそうだが、断腸さんは元気そのものだね。もう姿が見えないよ。
神野寺の近くのうなぎ屋で早めの昼食だ。フラッシュを設定し忘れていたのでピンボケだが、みんないい表情をしているよ。断腸さんの、女性にもてそうな髭はお見事。
久しぶりにお目にかかる神々しいお姿だ。
食事のあとは目的地の神野寺へ。
境内の大銀杏だ。立派なもんだね。
大きな山門。
そして石段を上がると一段と大きな本堂の姿が現れたよ。
もみじの紅葉。
さて、神野寺をあとにして県道93号を下り、マザー牧場の手前を左へ。鹿野山林道へと向かう。
急な坂を一行はかなりのスピードで下って行く。ついていくのがやっとで、怖かったよ。
途中の通行止めの箇所も工事関係者の好意で通してもらう。去年の3月に通ったときの崩落現場もこの辺りだったろうか。どうも景色が似ているよ。
この景色にも見おぼえがあるなあ。
この辺りは野生のサルの生息地として知られる高宕山が近い。
少し上り返したところで鹿野山林道の二つ目のトンネルだ。一つめの少し長くて暗いトンネルの名称は不明だが、こちらはちゃんと“かのうさんとんねる”とある。
トンネルを抜け、なおも下りが続く。いい雰囲気の下りだね。前に走ったときとはまた何かが違う。
この四角いコンクリートのトンネルの上は国道465号が通っている。そろそろ鹿野山林道の終点は近い。
去年、みみ爺はこの先の通行止め区間を左へ上り、国道の平田トンネルを抜け、植畑を経て高宕林道へ向かったんだ。
ガードレールの外へ出て恐る恐る下をのぞくと、川の水を通す小さなトンネルが見える。
いったん国道に出るが、先頭を行くBさんは雰囲気のいい旧道を選びながら走ってくれる。
関尻という集落で国道を逸れ、県道182号、通称“もみじロード”の方へ向かう。
もみじロードでも、所々で旧道へ入って行くよ。旧道は、どことなく懐かしい生活のにおいや林道の雰囲気があっていいねえ。
段々畑があったり、きれいな志駒川の流れを眺めたり、急勾配を下ったり、変化に富んでいてとても楽しい。
ここは保田見林道への入口だね。この林道はいつか走ってみたい。
県道182号のもみじロードはここまでだ。ここからは県道34号の長狭街道を保田まで行くんだね。
一上りして横根峠を過ぎた後は、保田川に沿って気持ちのいいダウンヒルだ。
途中再び県道と並行する田舎道へ。
お尻の痛そうな断腸さん。
ニッコリ笑顔でピースする癒し系のグフさん。保田駅はもうすぐだ。お疲れさん。
林道や旧道、そして裏道など、雰囲気のいい道を案内してくれたBさん。
博学で、どんな勾配もガンガン上って行く力強い脚力の断腸さん。
いつもこちらのスピードに合わせて走り、何かと気遣ってくれたIWAさん。
つねに一番後ろを走って、遅れがちな仲間を支えていたイマさん。
まるでアニメの世界から抜け出してきたユルキャラのような、人のいいグフさん。
みんないい人たちでよかったよ。
一人で気楽に旅をするのもいいが、大勢で走るのもまた楽しいもんだね。
突然の誘いで実はとても迷ったんだ。日にちも迫っていたし、それになによりも、全く知らない人たちの中に爺様一人いきなり入って行くんだからね。ちょっと勇気がいる。
しかし、せっかく誘ってくれたんだよ。生まれかけようとしている、新しい出会いを、ここで自ら断ちきってしまうのは惜しい。気楽な日常にどっかり胡坐をかいてしまっていては、そこから一歩も外へ出られない。人生の広がりはそこでストップだ。だが、一歩を踏み出せば、日常にはなかった新しい何かが始まるかもしれない。いくら年をとっても生きているうちは、フカフカで気持ちのいい座布団の上に安穏と腰を落ち着けていてはだめだよ。人生はそこから先へは進まないから…何を言ってるんだか。
木更津といっても駅は広い。うまく相手の人たちと会うことができるだろうか。そのことがちょっと気になったが、思いきって出かけることにしたよ。
ランドナーを組むには、ロードバイクのように早くいかない。1時間ほど早い電車に乗ったよ。もし相手が見つからなかったら、その時は適当に一人で走りまわってこよう。そんな気持ちだった。
木更津駅に着き、早速自転車を組み始めたよ。空気がずいぶん冷たくなった。冬が近づいているんだね。
自転車を組んでいてふと眼を上げると、偶然、そこで足を止めてこちらを見る人と目があったよ。直感というんだね。おや、この人かな。と、相手もまたびっくりしたような顔をしてこちらに目を向けている。
「もしかして、みみ…」
と言ったのがこのとき初めてお会いするIWAさんだった。
「いやあ、驚きました。まさか来ていただけるとは…」
IWAさんは何度もそう言う。
IWAさんの仲間は5人。そして、このみみ爺を含め6人は間もなく出発。いつもは一人でルートを考え、道に迷ったり戻ったりだが、今日はみんなについていくだけだ。そういう意味では気楽だね。
駅を出て、のんびりとした風景の中を矢那川に沿って進み、国道16号の下をくぐり館山自動車道を過ぎると、急に住宅が切れ、森や畑が現れるようになったよ。
大きな木の根方に石仏が一体。なんとなくいい。
林道鎌倉2号線に入り、広い市営霊園の横を過ぎると、道の両側の木々がいっそう深くなった。
まもなく道は明るく広い県道に出たよ。269号だ。
道は広くなったが周囲にはほとんど何もない。畑や森が断片的に続く。
やがて、一時広くなった道もまたすぐに狭い道に変わったよ。山の中の林道のような雰囲気だが、ここはまだ県道だ。緩やかに上っている。IWAさんがずっとみみ爺に合わせてペダルをこいでくれていたよ。
大鷲新田というあたりの山中に小さな駐車場が現れた。車が何台も停まっている。店か何かあるのかと思ったよ。
と、左手の木々の中に迷彩服姿の怪しげな男たちの姿が見え隠れしている。銃を手にする者もいる。どうやらサバイバルゲームというのをやるところらしい。ちょっと不気味だ。何だか恐ろしげな空気が漂っているよ。
先に行くと道が二股に分かれていた。どちらも林道のような雰囲気の道だが、右手はさきほどからの県道269号だ。先頭のBさんの後に続いて左手の林道鎌倉4号線へと進む。
林道に入って1.2~1.3キロほど走っただろうか、それまでの林道よりさらに暗く湿って荒れた感じの脇道に入ったよ。一人で走るにはちょっとためらうような道だ。落ち葉や枯れ枝が敷き詰められている急勾配の下り坂だよ。しかも、路面はまるで鬼の洗濯板のようだ。コンクリートで舗装はされているが、表面に滑り止めのための太い溝が刻まれている。そのため振動で自転車のネジがゆるんでしまいそうだ。そのうえかなりの急勾配で、ブレーキを握る手が痛くなる。いつまで続く道なのかと、やけに長く感じられたが、あとで調べたら1キロほどの距離だったよ。
やっとのことでガタガタの暗い急坂をぬけ出て、みんなホッとひといき。思わず笑顔もこぼれる。
その先の県道92号を横切って、県道と平行に走るのどかな田圃道を進む。快晴とはいかないが天気はまあまあだ。朝は寒かったが、今は寒さを感じない。
まもなく県道に合流するが、すぐにまた県道を逸れる。
小糸川に架かる赤い欄干の橋を渡った左手に、不思議な建造物の跡があったよ。戦争の遺物かとも思ったけれど、どうやらそうではなく、建設用の砂を洗うプラントの跡だそうだ。1970年代ころまでは操業していたらしい。廃墟のにおいがして惹かれるものがある。
そこからすぐの小糸中学校のグラウンドの前の路地を入って行くよ。
県道163号(房総スカイライン)に出て1キロほど走ると、T字路で県道と房総スカイラインとは分かれる。台中という集落だ。房総スカイラインは直進。鹿野山(県道163号)は右へ行く。
ここから鹿野山の上までは、それぞれ自分のペースで上ることになったよ。早く上ったものは上で待つ。それをきいて安心。
上りは山頂近くの県道93号にぶつかるまで続くよ。距離およそ6キロ、勾配は約5パーセント。さあ、出発だ。
先を行く断腸さん、そしてIWAさん、Bさん。
通勤でも自転車を利用しているという断腸さんはとにかく早い。断腸さんというニックネームは、永井荷風の“断腸亭日乗”からのものらしい。荷風は腸に持病があったそうだが、断腸さんは元気そのものだね。もう姿が見えないよ。
神野寺の近くのうなぎ屋で早めの昼食だ。フラッシュを設定し忘れていたのでピンボケだが、みんないい表情をしているよ。断腸さんの、女性にもてそうな髭はお見事。
久しぶりにお目にかかる神々しいお姿だ。
食事のあとは目的地の神野寺へ。
境内の大銀杏だ。立派なもんだね。
大きな山門。
そして石段を上がると一段と大きな本堂の姿が現れたよ。
もみじの紅葉。
さて、神野寺をあとにして県道93号を下り、マザー牧場の手前を左へ。鹿野山林道へと向かう。
急な坂を一行はかなりのスピードで下って行く。ついていくのがやっとで、怖かったよ。
途中の通行止めの箇所も工事関係者の好意で通してもらう。去年の3月に通ったときの崩落現場もこの辺りだったろうか。どうも景色が似ているよ。
この景色にも見おぼえがあるなあ。
この辺りは野生のサルの生息地として知られる高宕山が近い。
少し上り返したところで鹿野山林道の二つ目のトンネルだ。一つめの少し長くて暗いトンネルの名称は不明だが、こちらはちゃんと“かのうさんとんねる”とある。
トンネルを抜け、なおも下りが続く。いい雰囲気の下りだね。前に走ったときとはまた何かが違う。
この四角いコンクリートのトンネルの上は国道465号が通っている。そろそろ鹿野山林道の終点は近い。
去年、みみ爺はこの先の通行止め区間を左へ上り、国道の平田トンネルを抜け、植畑を経て高宕林道へ向かったんだ。
ガードレールの外へ出て恐る恐る下をのぞくと、川の水を通す小さなトンネルが見える。
いったん国道に出るが、先頭を行くBさんは雰囲気のいい旧道を選びながら走ってくれる。
関尻という集落で国道を逸れ、県道182号、通称“もみじロード”の方へ向かう。
もみじロードでも、所々で旧道へ入って行くよ。旧道は、どことなく懐かしい生活のにおいや林道の雰囲気があっていいねえ。
段々畑があったり、きれいな志駒川の流れを眺めたり、急勾配を下ったり、変化に富んでいてとても楽しい。
ここは保田見林道への入口だね。この林道はいつか走ってみたい。
県道182号のもみじロードはここまでだ。ここからは県道34号の長狭街道を保田まで行くんだね。
一上りして横根峠を過ぎた後は、保田川に沿って気持ちのいいダウンヒルだ。
途中再び県道と並行する田舎道へ。
お尻の痛そうな断腸さん。
ニッコリ笑顔でピースする癒し系のグフさん。保田駅はもうすぐだ。お疲れさん。
林道や旧道、そして裏道など、雰囲気のいい道を案内してくれたBさん。
博学で、どんな勾配もガンガン上って行く力強い脚力の断腸さん。
いつもこちらのスピードに合わせて走り、何かと気遣ってくれたIWAさん。
つねに一番後ろを走って、遅れがちな仲間を支えていたイマさん。
まるでアニメの世界から抜け出してきたユルキャラのような、人のいいグフさん。
みんないい人たちでよかったよ。
一人で気楽に旅をするのもいいが、大勢で走るのもまた楽しいもんだね。
サイクリングは楽しかったですね。みみ爺さんに参加して頂いて一層楽しくなりました。本当にありがとうございました。16年もののランドナーを大切にピカピカにみがかれているのにただただ感動しました。さらに分解、組み立てにおいて丁寧に大切に、慈しむように扱われているのにも驚きました。反省しました。
また、よろしければ同行して頂けるとありがたいです。また、みみ爺さんの企画に参加させて頂けるとうれしいです。よろしくお願いします。
■IWAではなくてスリムで眼鏡をかけていたのは「イワ」さんではなくて「イマ」さんです。私の滑舌が悪くて申し訳ありませんでした。
最初の、妙な塚の上の石仏と、あの巨木、圧倒されます。
『へー、こんなすごい老木だったか』と今更ながら驚きます。
詳細に書かれていますので、過日のサイクリングを再度味わい直す気すら致します。
自分的には、志駒川を縫うように在った古い道が良かったなぁと思います。
また、木更津から君津平野までの間の陰鬱で急峻な坂道もスリル満点で、全身マッサージで中々面白うございました。
どうぞ、また、ご一緒いたしましょう。
お互い様で、そうそう長くもないと思いますのでせいぜい楽しい思いをたらふくに。
ありがとうございました。