家は役場から歩いてすぐの場所であった。
長男夫婦とその子供3人そして母親の7人で暮らしていた。むらの中では唯一の瓦葺で
門をくぐると、すぐに牛小屋があり、一つの敷地の中に二つの建物があった。
祖父はまだ独り者だったために、兄が結婚したときに、離れを新たに建ててもらった。
離れと母屋の間に低い土塀を巡らせて、母屋の中庭を通リ抜けて離れにいけるように
なっていた。
いつもなら、母屋の門をあければ、中庭では母と兄嫁が夕飯の準備をしているのだが、この日は
始祖の墓の完成式で自分以外はすべて務安に行って留守だった。
縁側に腰を下ろした秉元は兄が明日戻ったとき、水路の整備の状況を問われた時
どう答えればいいか、そればかりが気になって。雨に濡れたことなど全く
気にもならなかった。
そうして、また大きくため息をついた。
しばらくして、門の板戸をたたく音に気が付いた。
「ピョンウォン。いるか」。と幼馴染の金大完の声である。門によって、かんぬきを落とした。
「どうした」。と言うと。
「この間は運がなかったな、あす明後日、もう一度運試しにどうだ」。と言うと同時に
門をくぐって入ってきた。
「お前と会うと、うちの家族が嫌がるので、家には来ないでくれ」。
「まあ、そう言うな、俺様と会って損をした者はいない、福のある人間だと言われているのに
お前の家族だけが、俺を毛嫌いするのは。困ったものだ」。
「それより、この酒、面長様から今日いただいた。なにやら、日本から持ってきた清酒で
朝鮮では手に入らないものらしい、一緒に飲まんか」。
体も疲れ、空腹でもあったこと、酒もきらいなほうでもなかったので、
先日町の博打場に誘われ、預かった水路の改修費用を使い込んでしまったことを
つい忘れたのか、台所に行って、肴になりそうなキムチとちゃぶ台を持ってきた。
「ピョンオン。まあ一杯飲め」。と杯を差し出した。
長男夫婦とその子供3人そして母親の7人で暮らしていた。むらの中では唯一の瓦葺で
門をくぐると、すぐに牛小屋があり、一つの敷地の中に二つの建物があった。
祖父はまだ独り者だったために、兄が結婚したときに、離れを新たに建ててもらった。
離れと母屋の間に低い土塀を巡らせて、母屋の中庭を通リ抜けて離れにいけるように
なっていた。
いつもなら、母屋の門をあければ、中庭では母と兄嫁が夕飯の準備をしているのだが、この日は
始祖の墓の完成式で自分以外はすべて務安に行って留守だった。
縁側に腰を下ろした秉元は兄が明日戻ったとき、水路の整備の状況を問われた時
どう答えればいいか、そればかりが気になって。雨に濡れたことなど全く
気にもならなかった。
そうして、また大きくため息をついた。
しばらくして、門の板戸をたたく音に気が付いた。
「ピョンウォン。いるか」。と幼馴染の金大完の声である。門によって、かんぬきを落とした。
「どうした」。と言うと。
「この間は運がなかったな、あす明後日、もう一度運試しにどうだ」。と言うと同時に
門をくぐって入ってきた。
「お前と会うと、うちの家族が嫌がるので、家には来ないでくれ」。
「まあ、そう言うな、俺様と会って損をした者はいない、福のある人間だと言われているのに
お前の家族だけが、俺を毛嫌いするのは。困ったものだ」。
「それより、この酒、面長様から今日いただいた。なにやら、日本から持ってきた清酒で
朝鮮では手に入らないものらしい、一緒に飲まんか」。
体も疲れ、空腹でもあったこと、酒もきらいなほうでもなかったので、
先日町の博打場に誘われ、預かった水路の改修費用を使い込んでしまったことを
つい忘れたのか、台所に行って、肴になりそうなキムチとちゃぶ台を持ってきた。
「ピョンオン。まあ一杯飲め」。と杯を差し出した。
