東長崎駅から歩いて十数分のところにあるトキワ荘の跡地に行った。
西武池袋線沿線に住んでるので、いつでも行けると思っていたが、ずっと行かないままでいた。赤塚不二夫の追悼番組の再放送を金曜深夜に見て、その週末に行ってみようと思い腰を上げた。
小学生のとき藤子不二雄の「まんが道」を読んで以来、トキワ荘には思い入れがある。手塚治虫を慕って集まってきた漫画青年たちの共同生活と仕事ぶり。「編集者」という職業を知ったのも多分この漫画だ。
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トキワ荘跡地近くの公園には、トキワ荘をかたどったモニュメントがあった。看板にトキワ荘由来の説明書きが色々と書いてある。今では立派な「文化財」なのだ。まあ、私もこうして訪れているわけだが。
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「まんが道」に出てくるラーメン屋「松葉」に入った。「ンマーイ」という漫画中のセリフでファンの間では有名なお店だ。
ラーメン一杯480円と安い。正直、記念に食べておこうというつもりで、味には期待していなかったが、かなり美味かった。
とりあえず言っておこう。ンマーイ!
トキワ荘の跡地は、「松葉」がある大通りから一本路地に入った突き当りだ。
面影は残っていないと聞いていたが、公園のモニュメントよりも小さい記念碑が、現在建っているビルの脇にあった。
どうもこの週末に除幕式が行われたばかりの記念碑らしい。訪れたあと新聞記事を読んで知った。だから赤塚不二夫の追悼番組も再放送していたのだろうか。
そのまま椎名町駅まで歩いた。駅の改札前には、手塚治虫ゆかりの地ということで原画複製などがディスプレイされていた。
やっぱり「文化財」なんだ。
その日は、小学生のとき「マンガ道」を読んで以来、思い入れがある地を訪れることができ、満足した。
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大友克洋GENGA展に行った。
秋葉原の千代田アーツ3331という、元小学校の跡地をリノベーションしたスペースで行われている展覧会。
入場は事前に日時指定のチケット購入という、多少敷居の高い展覧会ではあるが、原画の魅力を余裕を持って見ることができた。
大友克洋は、ご存知のように『AKIRA』など、超緻密な描き込みで知られる漫画家だ。
丸ペンによって紡がれる幻惑的な絵柄に、中高生のころ大いに魅了された。
『AKIRA』はもちろんだが、『ハイウェイ・スター』『気分はもう戦争』など、繁華街の裏路地にあるボロボロの古本屋で100円で買った初期作品も忘れがたい。どこか虚無的な、アンチ・クライマックスな短編漫画が、そのころの気分にはまったのかもしれない。
原画を見ての感想は、「止まっている感じがする」「音が聞こえない」ということだ。
『AKIRA』などスピード感のある作品でも、ストーリーから切り離して1ページずつ見てみると、1コマごと独立して眺めることができる。1コマごと実に「キマッテいる」のだ。
大友克洋の作風は、完璧な作画によって構築された世界像をクライマックスでスペクタクルに破壊するという傾向が多いが、そのスペクタクルシーンでも一枚絵で見てみると、驚くほど止まっているし、音がしない。
多分、ストーリーを追っていると、読者の頭でそういう音響は想像するから気にならないんだろうが、これほどまで静寂を感じるとは思わなかった。
漫画は、スピード感や音を表すとき、残像がブレているように描いたり擬音の形を強調したりする。
大友克洋は、そういう記号表現を極力使わず、絵の説得力で速さや音を読者が想像できるように描いているんだなと実感できた。
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展示の最後には、ファンによって作られた「金田バイク」がディスプレイされている。
募金を払えば試乗もできる。
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もう一つ『童夢』のクライマックスシーンに出てくる「ズン壁」。
こちらも記念撮影できる。
トキワ荘、大友克洋。自分にとっての漫画レジェンドを同じタイミングで聖地巡礼することが出来た。
また、7月まで世田谷文学館で手塚治虫の原画展が行われている。
今年は漫画詣での年だったという事にしようと思う。