戦後、進駐軍が置かれた横浜には、「外人バー」が数多く存在した。
この場所で客を引く私娼は「パンパン」と呼ばれた。
24時間営業(!)の酒場「根岸屋」は、黒澤明監督の『天国と地獄』の舞台にもなり、戦後横浜を代表する盛り場だった。
そんな負の歴史を背負う街の記憶も、いつしか薄れていく。だが、強烈に横浜の戦後史を喚起する人物がこの街にはいた。
その名は通称「ハマのメリーさん」。白塗りで、白いドレスをまとい、高齢になっても街角に立ち続けた。
素姓を明かさない「メリーさん」の周りには、噂ばかりがつきまとった。
「じつはオカマだ」「豪邸に住んでいる」…。
こうして、その存在は都市伝説と化していった。
私は、中島らもが小説化した『白いメリーさん』で、この都市伝説を知った。
今、横浜では一本の映画がロングラン上映している。
『ヨコハマ・メリー』。
「メリーさん」をめぐるドキュメンタリー映画だ。
1995年、突然姿を消した「メリーさん」について、関係者のインタビューをつなぎ合わせ、彼女の“不在”の輪郭をたどっていく。
関内周辺にたたずむ「メリーさん」の写真が、所々でインサートされる。
まるで街の幽霊のように浮かび上がるその姿…。
見慣れた風景が異化され、意識しなかった“街の記憶”を刺激される。
舞踏家、カメラマン、風俗ライター、団鬼六など、濃いメンツが紡ぐ「メリーさんと私」の問わず語りのなかで、主要な役割を担うのが、シャンソン歌手・永登元次郎だ。
彼のコンサートに「メリーさん」がふらりと現れたことから二人の交流は始まった。
映画は、いつしか元次郎さんを中心に据え、展開していく。
主役“不在”のこの映画は、元次郎さんの一代記によって、その存在を二重写しにしていくことになる。
彼が歌う「マイウェイ」は、二人が歩んできた生き様を暗示するかのようだ。
「この旅路を今日まで生きてきた。いつもわたしのやり方で」…。
ラストシーンで、元次郎さんと「メリーさん」の“現在”が交錯し、“不在”をめぐるこのドキュメンタリーがとらえた都市伝説の“真実”が明かされる。
横浜の街の歴史に興味があったら、是非この映画を観てほしい。
変わり続ける街の姿を記録したという点でも貴重だ。
もう一本、劇映画を紹介しておこう。
『タイヨウのうた』。
こちらは鎌倉が舞台になっている。
XPという太陽の光に当たれない難病を抱えた少女が主人公である。
彼女は、寝静まった鎌倉駅前で弾き語りをしている。
昼間は観光客でにぎわう鎌倉の夜は、森に囲まれ闇が深い。
主人公が夜しか行動出来ないので、必然的に夜間シーンが多いのだが、鎌倉の夜を魅力的に描いている。
主人公がボーイフレンドと遠出をし、横浜西口のVIBRE前で歌うシーンは、この映画のハイライトの一つだ。
見慣れた街がスクリーンに写し出されると、不思議な気分になる。
主人公を演じるYUIが歌う「Good-bye days」は、ラジオでもよく耳にする。
私は昔、山崎まさよしの「one more time,one more chance」を聞いて、『月とキャベツ』を観に行ったけれど、この曲もそんな人を動かす歌の強さがあるんじゃないかな。
この場所で客を引く私娼は「パンパン」と呼ばれた。
24時間営業(!)の酒場「根岸屋」は、黒澤明監督の『天国と地獄』の舞台にもなり、戦後横浜を代表する盛り場だった。
そんな負の歴史を背負う街の記憶も、いつしか薄れていく。だが、強烈に横浜の戦後史を喚起する人物がこの街にはいた。
その名は通称「ハマのメリーさん」。白塗りで、白いドレスをまとい、高齢になっても街角に立ち続けた。
素姓を明かさない「メリーさん」の周りには、噂ばかりがつきまとった。
「じつはオカマだ」「豪邸に住んでいる」…。
こうして、その存在は都市伝説と化していった。
私は、中島らもが小説化した『白いメリーさん』で、この都市伝説を知った。
今、横浜では一本の映画がロングラン上映している。
『ヨコハマ・メリー』。
「メリーさん」をめぐるドキュメンタリー映画だ。
1995年、突然姿を消した「メリーさん」について、関係者のインタビューをつなぎ合わせ、彼女の“不在”の輪郭をたどっていく。
関内周辺にたたずむ「メリーさん」の写真が、所々でインサートされる。
まるで街の幽霊のように浮かび上がるその姿…。
見慣れた風景が異化され、意識しなかった“街の記憶”を刺激される。
舞踏家、カメラマン、風俗ライター、団鬼六など、濃いメンツが紡ぐ「メリーさんと私」の問わず語りのなかで、主要な役割を担うのが、シャンソン歌手・永登元次郎だ。
彼のコンサートに「メリーさん」がふらりと現れたことから二人の交流は始まった。
映画は、いつしか元次郎さんを中心に据え、展開していく。
主役“不在”のこの映画は、元次郎さんの一代記によって、その存在を二重写しにしていくことになる。
彼が歌う「マイウェイ」は、二人が歩んできた生き様を暗示するかのようだ。
「この旅路を今日まで生きてきた。いつもわたしのやり方で」…。
ラストシーンで、元次郎さんと「メリーさん」の“現在”が交錯し、“不在”をめぐるこのドキュメンタリーがとらえた都市伝説の“真実”が明かされる。
横浜の街の歴史に興味があったら、是非この映画を観てほしい。
変わり続ける街の姿を記録したという点でも貴重だ。
もう一本、劇映画を紹介しておこう。
『タイヨウのうた』。
こちらは鎌倉が舞台になっている。
XPという太陽の光に当たれない難病を抱えた少女が主人公である。
彼女は、寝静まった鎌倉駅前で弾き語りをしている。
昼間は観光客でにぎわう鎌倉の夜は、森に囲まれ闇が深い。
主人公が夜しか行動出来ないので、必然的に夜間シーンが多いのだが、鎌倉の夜を魅力的に描いている。
主人公がボーイフレンドと遠出をし、横浜西口のVIBRE前で歌うシーンは、この映画のハイライトの一つだ。
見慣れた街がスクリーンに写し出されると、不思議な気分になる。
主人公を演じるYUIが歌う「Good-bye days」は、ラジオでもよく耳にする。
私は昔、山崎まさよしの「one more time,one more chance」を聞いて、『月とキャベツ』を観に行ったけれど、この曲もそんな人を動かす歌の強さがあるんじゃないかな。