rosemary days

アロマテラピー、ハーブを中心にフィトテラピーあれこれ。自然療法全域とフィットネスについて。

『わがままな大男』~春を連れてきた桃の花

2018-03-30 08:04:52 | 物語の中の植物と香り
オスカー ワイルドの童話の中では『幸福な王子』の次に有名なのが『わがままな大男』でしょう。小尾さんの訳では『身勝手な大男』になっています。しかし、読むといつも思うんですが、この大男はわがままなのでしょうか?「地上に富を蓄えてはいけない」という聖書の教えに基づいているのでしょうが、文明社会では少々無理があるように思われます。

大男の庭はさまざまな木々や草花が咲き乱れ、子ども達の格好の遊び場になっていました。ところが長い旅から帰って来た大男は子どもが嫌いで、塀を作って子ども達を閉め出してしまいます。すると春になっても夏になっても、大男の庭だけがいつまでも雪に覆われた冬のままでした。

ある日小鳥のさざめきと子ども達の声で大男が目覚めると、いつの間にか春が戻ってきていました。庭のあちこちで子どもが遊んでいました。一人の小さな男の子が、木に登ろうとしていましただ、小さ過ぎて登ることができません。大男がそっと抱き上げて木に登らせてあげます。その日から大男は改心して子ども達を遊ばせてあげるようになりましたが、あの小さな男の子には会えません‥‥

さて、その小さな男の子が登ろうとしたのは何の木だったのでしょうか?原文にも日本語訳にも特に書かれていなかったので、これという種ではないのだと思っていました。ところが何年か前に買った洋書にははっきりとpeach treeと書かれていました。そして昨年出版された光文社文庫にもしっかりと桃の木と書かれています。

同じ作者の同じ作品でも、出版した時の版によって内容が一部付け加えられたり削られたりするものです。まして海外の作品の場合は翻訳を挟むため版ごとのブレは尚更大きくなります。

なぜ何の木かわからないほうが世に広く出回っちゃったのかは謎ですが、何の木だかわかるほうが読んでいて臨場感が沸いて来ますね。桃の花は代表的な春の春でもありますし。



幸福な王子/柘榴の家 (古典新訳文庫)
ワイルド
光文社

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