廊下のむし探検 第68弾
昨日の午前中、マンションの廊下を歩いてときに見つけた虫の続きです。
最初はこんなカゲロウです。「原色川虫図鑑成虫編」の図版を見ると、トビイロカゲロウ科のヒメトビイロカゲロウ♂のようです。図鑑によると、平地渓流や平地流に生息しています。
この写真は別の個体です。ところで、このカゲロウは大きな複眼をしています。この目立つ複眼を大複眼、横に丸く飛び出しているのが基複眼です。大複眼が大きいので、まるでコカゲロウ科のターバン眼のようです。ただ、このヒメトビイロカゲロウの大複眼はコカゲロウ科のターバン眼とは違っています。
これはヒメトビイロカゲロウの大複眼の拡大ですが、個眼は四角い形をしています。それで、この種はシカクメトビイロカゲロウ亜科に含まれています。これに対して、コカゲロウ科のターバン眼の個眼は六角形です。一方、ヒメトビイロカゲロウの基複眼は六角形の個眼をしています。この辺の違いはどうしてなのでしょうね。
これは羽アリだと思って写したのですが、触角柄節が長くないですね。違うのかな。
そしてこれはシロカネグモの仲間の幼体です。
最後はハムシの仲間だと思うのですが、図鑑をいくら探しても似た種が見つかりません。さて、何でしょう。
(追記2019/08/12:そらさんから、「タマツツハムシの仲間が近いように思いますが。」と教えていただきました。ほんとですね。なぜ、気がつかなかったのだろう。ついでだから、検索表も調べてみました。タマツツハムシの仲間はツツハムシ亜科のタマツツハムシ属 Adiscusに入っています。まずは亜科の検索です。これは「日本原色甲虫図鑑IV」に載っています。
①頭部は正常。頭頂は特に前方に突出することなく、口器は頭部の先端に位置する
②触角はその基部を前頭または頭頂によって広く隔てられる
③頭部は前胸の中に強く引き込まれ、通常複眼は前胸背板の前縁にほとんど相接し、場合によると完全に覆われる;複眼の後方は強くくびれることはなく、前胸背板の側縁は通常明瞭な縁取りを有するが、まれにこれを欠く場合もある
④前胸側板に明瞭な触角溝を欠く
⑤腹部の中間3節は中央部で強くくびれる
⑥触角は一般に長く、糸状または棍棒状。もっとも幅広い場合でも、長さは幅とほぼ等長 ツツハムシ亜科 Cryptocephalinae
こういう手順でツツハムシ亜科であることを確かめられるのですが、頭部と腹部、前胸背板側縁を写していなかったので、今回はまったく確かめられません。次回を期待することにしましょう。次は属と種の検索です。これは次の論文に載っていました。
S. Kimoto, "The Chrysomelidae of Japan and the Ryukyu Islands. III. Subfamily CRYPTOCEPHALINAE", J. Fac. Agri., Kyushu Univ. 13, 141 (1964). (ここからpdfが直接ダウンロードできます)
検索表の必要な部分だけを抜き出して翻訳すると以下のようになります。
⑦小盾板は上から見えない;複眼は細長く、凹形;体は丸みを帯びる タマツツハムシ属 Adiscus
⑧a 大きさが小さい;♂の前胸背板は赤褐色で上翅は黒。♀は前胸背板も上翅も完全に黒;長さは2.2~2.8mm タマツツハムシ lewisii
⑧b 大きさが大きい;前胸背板は♂♀ともに赤褐色で、上翅は黒;長さは4.0~5.0mm リュウキュウタマツツハムシ nigripennis
タマツツハムシ属であることを確かめる重要なポイントは⑦の小盾板が見えるか見えないかです。
上の写真を拡大してみました。だいぶ見にくいのですが、黄色の矢印のところを見ると、前胸背板後縁中央が後ろに鋭く突出して、三角形の小盾板が見えません。これでAdiscusは決まりです。後は色と大きさからタマツツハムシ♀であることが分かります。日本産は「日本列島の甲虫全種目録 (2019年)」を見ても2種だけなので、とりあえずこれでOKということになります。もっとも「台湾産ハムシ類幼虫・成虫分類図説」を見ると、台湾では13種も記録されているので、探すともう少しいるのかもしれません)