豚も杓子も。

私にすれば上出来じゃん!と開き直って、日々新たに生活しています。

身毒丸

2008年04月12日 | Weblog
牛の代わりに、竜也くんに引かれて「身毒丸(しんとくまる)」。
誘ったみたぽんは、「身毒丸」の作品自体に引かれて「身毒丸」。
立派だ・・・!
実のところ、カーテンコールの竜也くんのにっこり笑顔を拝見するのが主たる目的だという観劇スタイルは邪道・・・なのでしょうね。
でも、両者とも「見たい!」という思いは同じです。どの方向から照準を合わせているのかは別として。(劇場までの道すがら、みたぽんは「ちゃんとした舞台を見るのは初めてだ・・」とのたまいました。君!一緒に見たTHE CONVOYの舞台は君の中では何に分類されているのでありましょうか???)

ともかく、私の主目的の彼の終演後の素(に見える)の笑顔。まだ最後の余韻を引きずる一回目のカーテンコールでは彼の表情は固いままです。二度目もまだ崩れません。三度目辺りから少しずつ和らいでいき、本当ににっこりするのは、これで最後という時の幕に入る寸前。
その瞬間に目があったりしたら、もうだめね。
今回は、やや上手の位置だったので、その恩恵には預かれなかったのですが、彼が手を振る先にいた人は、きっとノックアウトだろうなあ・・・うらめしや、じゃなくてうらやましいなあ。

いろんな姿になる彼の姿を見続けて来たこの数年。今回は、寺山修司風味の彼を蜷川幸雄さんのパッケージングで見せて頂けました。
彼がそのオーディションで見出された「しんとくまる」。ルーツともいうべき舞台、そして役柄です。ビデオでは見ていた舞台。最後の場面の哀しい美しさはとても印象に残っています。それを、念願の劇場、埼玉の「彩の国さいたま芸術劇場」で見ることが出来たなんて、しかもみたぽんと一緒に見られたということは、とても幸せなことでした。
最初に演じた当時、彼は15歳だったはず。それから10年。復活という形でその役にまた立ち向かうことになったのですね。広島での公演のあった時には、悲しいかな、私の興味は彼にはなく、蜷川さんの舞台に関しても勝手におどろおどろしさを予想して敬遠していたのでした。なんと残念なことをしたのでしょう。私にとっては、そんな空白を挿んでの初めての生「しんとくまる」でした。
主人公「しんとく」。この役は円熟味が加わっていくという性質のものではなく、むしろ、年齢の積み重ねが邪魔になるかもしれないという難しい役柄です。彼は、少年の雰囲気を保つべく、まずは身体を絞って華奢な風情を作り出していました。果たして、いたいけな少年になりおおせるか・・。ムフムフ、見えましたぞえ~。

そう、肝心な舞台。
これは、もう、今でも独特のメロディが頭の中に蘇えり、そのまま居座るような、後を引く舞台でございました。夢で見たような妖しい風景が現れたような不思議な世界。でも、しっかり飽きさせない、さすが!蜷川さん・・隙がありません。この舞台が内包する核が、ぞわぞわ泡立つような感覚に溢れたものだとしたら、それを美しいと思える情景に加工して、娯楽として差し出してくださったと申しましょうか。舞台の内容をかなり簡単に言ってしまえば「義理の母と息子の許されざる恋」なのかな?でも、その奥に潜む「母」そのものの生臭さ、禍々しさ。そんな匂いも思い出させる舞台でもありました。

お互いの頭上に居座る母の重さ。
かなりいい年になった大きな娘二人は、終演後の恵比寿のお洒落な一角で、美しい泡の立つ生ビールを飲み、美味しいイタリアンを頂きつつ、それぞれの母に思いを馳せたのでありました。
「母」は、背負わなくても、重い!
・・・が、そんな二人もいまや立派な「母」。
気づかない???ままに、重くなっていることでしょう(比喩ね)。
枷にならないように、重石にならないようにしなくてはね。
などと、殊勝なことを思いつつ。

おっと、忘れてはいけません、白石加代子さん。
おそるべし!!なでしこ!
迫力という言葉では表しきれない、何でしょうね、あの方の佇まいの美しさ、恐ろしさ。思わず目を奪われます。みたぽんにパンフレットを買いに行かせた力は、並大抵のものではありませぬ。


時に、この舞台ではとても不思議なことにも遭遇しました。
もうお一方、一緒に観劇するはずだったお方が、急なことでやむなくご一緒することがかなわなくなり、私はチケットの嫁ぎ先をとあるサイトで探したのですが・・。
人気の公演でしたので、すぐに希望してくださる方が見つかり、当日劇場で初めてお会いしたその方はなんとも不思議なご縁の方でした。東京在住のその方が前回そこで同じ舞台を一緒にご覧になったお友達は、みたぽんと私と同じ郷里に住む方だったのです。本当に小さな町なのに・・・。びっくりです。呼んだのか、呼ばれたのか、出会うべくして出会ったのか、誰かの何かの裁量が働いてでもいるのでしょうか。ちょっとだけ、ぞわっ!