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読書感想文【ダイスをころがせ!】

2005年09月03日 15時32分14秒 | 読書感想文
以前から読もうと思っていたのだが、なかなか置いてある本屋が見つからなかった

ダイスをころがせ!

ストーリー:
会社を辞め、妻子と別居中の駒井健一郎は就職活動中に、かつての同級生であり恋敵でもあった天知達彦に偶然会う。実は天知は次の衆議院選挙に地元静岡から無所属で立候補するつもりで、その秘書を駒井に頼もうと思って、偶然を装い駒井に会ったのだった。
政治の現状に憤りを感じ、新聞社を辞めて私財を投げ打ち選挙に挑戦する達彦に駒井も協力することを決め、さらにかつての同級生たちもボランティアで協力を申し出てくれる。こうして1年後の衆議院任期満了までの選挙活動がスタートした。
天知には戦時中に静岡県知事を勤めた祖父がいたのだが、業者との癒着疑惑があり知事を辞職していた。祖父が本当に汚職に手を染めたのか疑問に思っている天知は、選挙活動をする中で祖父についての情報を集めようという狙いもあった。また、当選した暁には、駒井が会社を辞める原因になり、天知も記者時代に携わった地元の不正土地取引の実態を調査しようともしていた。
これらの謎の解明が同時進行していく中、多くの妨害やアクシデントの嵐が吹き荒れ選挙戦は続くのだが…。

感想:
初心者の選挙戦を真正面から書いた作品で、選挙がいかに金がかかる仕組みになっているかがよくわかる。天知の当落が最大の興味として読者を引っ張っていくのだが、正直あの結末は、想像がついていたとはいえがっくりだった…。
また、天知の祖父の過去や不正取引の黒幕の追及、さらにかつて駒井・天知と三角関係?にあった佐貴子の謎めいた態度、スパイの存在などが同時進行で描かれ、これがミステリーとなって本書を盛り上げている。
タイトルにあるダイスとは、有権者が持つ一票のことなのだが、それ以外にも人生を双六にたとえ、34歳である自分たちが今、人生のどこに差し掛かっているのかを問い掛ける場面が頻繁に出てきている。

ちなみに選挙戦といっても、衆議院解散→告示→選挙期間(12日間)→投票日という数十日の戦いだけではなく、それより前から駅頭での演説や人を集めてのミニ演説会、ポスターやビラでの知名度アップなどを行っている。つまり天知と駒井の選挙戦のスタートは衆議院の任期満了の1年前からである(実際には途中で解散総選挙となったので9ヶ月だったが)
それにしても登場人物それぞれが、よくもまぁトラブルを起こす人たちだなぁとあきれる場面が多々あった。

読書感想文【蒼煌】

2005年09月03日 15時30分46秒 | 読書感想文
作者は黒川博行。ずっと前にカウントプランを読んだことがあるくらいで、後は全然知らなかった。この本を読もうと思ったのは美術界が舞台だったから。

蒼煌

ストーリー:
日本画家の室生晃人は日本芸術院会員の座を狙い、次期補欠選挙の裏工作に走っていた。対抗馬となるのは同じ関西の日本画家であり、画塾玄洋社の代表でもある稲山健児。
裸一貫から異常なまでの上昇志向で現在の地位まで登り詰めた室生はなんとしても選挙に勝つべく、かつて”京都画壇の代理人”の異名を持った夏栖堂の殿村を選挙参謀に迎え億単位の金を、有権者である会員にばら撒く。一方の稲山も大手デパート大和の美術部長吉永を選挙参謀に、惜しげもなく秘蔵の美術品をばら撒いていく。
それぞれの家族や、政治家、画廊、寺など様々な人々を巻き込んでいった選挙戦は室生の勝利に終わった。しかし、政治家の汚職の発覚が思わぬ波紋をよび地検の捜査の手は室生にまで回った。政治家の玉川と、そのマネーロンダリングを手がけていたアテナ画廊の社長脇本が捕まったことにより、票の取りまとめのために脇本に振り込んだ2千万が仇になったからだ・・・


感想:
ストーリーでネタばれまで書いてしまったが、まぁいいか。
事実かどうかは別として、旧態依然とした日本美術界の裏側をあますことなく描いた作品。ほとんどの画家は、はじめは描くのが好きでその道に足を踏み入れるが、結局食うためには絵が売れなくてはどうしようもなく、誰しもが賞や権力を欲しがってしまう。絵というのは一般的な評価が難しいものであるから売れるようになるのは難しいに決まっていて、だから権威付けが必要なのだが、そうすると権力の世界になってしまう。またマネーロンダリングなどの手段としても最適なため、政治家とのつながりも深く、政治画商なども登場する。
まぁそんなこんなでいろんな人々が欲まみれの世界で生きてます、というのがこの作品では描かれている。
面白かったのはデパートの美術部という存在。それから、同情人物は全部架空なのだが、それぞれの師弟関係や生い立ちなどが事細かに書かれており、それも面白かった。