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読書感想文【ワイルド・ソウル】

2005年09月05日 01時47分07秒 | 読書感想文
知らない著者の本に手をだすことは滅多にないのだが、幻冬社のハードカバーにははずれが少ないので読んでみた。分厚い割りにけっこうすぐに読み終わった。

ワイルド・ソウル

ストーリー:
1950-60年代にかけ、4万人以上の日本人がブラジルに移民として渡った。ブラジルには豊饒な大地、広大な土地、整備された環境があり、作物は熱帯の環境によって物凄いスピードで成長する。そこで働けば誰でも大金持ちになれる、と政府が宣伝したからだ。しかし、実情はまったく逆だった。アマゾンのジャングルの奥深く、文明から遠く離れた未開の地に行かされた移民たちは作物の育たない土壌に絶望し、環境どころか家すらなかった。そして疫病によって次から次へと死んでいった。日本政府は何も手を打たないどころか、本国にこの事実を隠蔽し、「アマゾン牢人」と呼ばれた彼らは歴史の中に忘れ去られて行った。
衛藤はかつて妻と実弟を連れてブラジルに渡った。そして妻も弟も病気で亡くした。絶望の淵からかろうじて立ち直った衛藤はアマゾンを離れ、都会に行き、そこで死に物狂いの生活を送る。やがて青果商として財を成した衛藤は、アマゾンでの恩人の遺児であり養子のケイ、かつて金鉱採掘仲間であり、後に偶然出会った山本
、ケイの幼馴染でコロンビアマフィアの手先として日本での麻薬ビジネスを仕切っている松尾の3人と共に、日本政府への復讐を始める。


感想:
上に書いたストーリーはほんのさわりなので、実際の面白さはこれだけじゃ全然伝わらない。この作品の主人公は、底抜けに能天気で女好きの典型的なブラジル男でありながら、なぜか肝心なところでは抜け目のないケイ。5歳でマフィアのボスに拾われてから英才教育を受け、その呪縛に苦しみつつも離れられず、計画に際してはケイの能天気さに何度も呆れさせられる松尾。ケイに目をつけられたために、人生を思いっきり変えられ、最後の最後までとんでもない目にあう元女子アナでTVディレクターの井上貴子の3人だろうか。とくにケイと貴子のやりとりが抜群に面白く、映画のワンシーンのような軽妙(実際はケイのあまりの軽さに貴子が惹かれたり怒り狂ったりする)なやりとりは最後の最後まで飽きさせない。岩窟王を彷彿とさせる復讐劇のはずが、暗くジメジメした雰囲気をまったく感じさせないのはこのおかげだ。1章の内容にあたる、衛藤のアマゾン牢人としての半生があまりに凄まじいだけに、このギャップはすごい。
作者の他の作品も読みたくなった。