宇宙を解き明かす9つの数(アントニオ・パディーヤ/早川書房)
年初に当たり、少し重めの一冊を。
物理学の中に現れる特徴的な数について解説しつつ、相対性理論、量子力学、宇宙論の現在地を独自の視点で語る一冊。
取り上げられる数字と話題は次のとおり。
1 ウサイン・ボルトと相対性理論
2 グーゴルとエントロピー
3 グーゴルコンプレックスとインフレーション多宇宙
4 グラハム数と加速度的に膨張する宇宙
5 TREE(3)とホログラフィック原理
6 0と対称性
7 ヒッグス粒子の予想外の軽さと大統一理論
8 宇宙定数の理論値と観測値の途方もない乖離と人間原理
9 無限と繰り込みと超弦理論
上記のまとめは私の独断で、正しく内容を反映している自信はない。多彩な知識に独特の例えも交えて、数学と物理学のさまざまなトピックにふれながら、軽やかにステップを踏んでいく。
感想を少し。
大きな数としての「グーゴル」は聞いたことがあったが、それ以上の数については初見だった。「ポアンカレの回帰定理」という言葉も初めて聞いた。また、ホログラフィック原理については類書でも見かけたが、この本が一番詳しかった。
宇宙論、量子力学で焦点となっている問題を取り上げ、著名な物理学者に関して個人的なエピソードを紹介するなど、物理学の解説書としては面白すぎる内容になっている。
なお、著者は明確に超弦理論の側に立っており、ループ量子重力理論に対しては否定的な意見を持っているようだ。